
少し暗くなってきた頃、マリオさんと思い込んでいたアドリアーノさんが迎えに来てくれました。
月明かりの田舎道を走ってグイドのホテル、ベッキオアジーロの前を通り過ぎ無人踏切を渡り、エルザ川の欄干も何も無い橋を渡り、丘を登ったところにビーコフルボ町があります。町というより集落と言った方が正しいと思います。そこにも中央広場があって車が結構止めてありお目当てのビーコ デルザ(ビーコ ディ エルザ)
はあります。先ほど渡ったエルザ川からとったものだとアドリアーノさんが教えてくれました。
車を止めているとサンドロとコンスタンツァさんもやってきました。

そう遅くならないでグイドもやってきました。グイドは店の中で一番綺麗なおねえさんに入念にハグをしてテーブルに着きました。店は休日前なので子供や近所の人たちで大変混んでいました。
珍しくサンドロが酔っ払い故郷のフィレンツェなまりを丸出しにして話しはじめました。たとえばコカコーラはホハホーラといいます。初対面のコスタンツァさんはトルコに旅行に行ってきたからと
お土産のお財布を私達にくれました。
2年間アメリカに行っていた彼女は上の娘とアメリカ弁ではなしていました。
デザートにとった甘い酒をつけて食べるクッキーを私に薦めてくれましたがもう食べられないので遠慮しておきました。その後はかみさんとだけ話していました。
帰り際に握手をしましたところ働いている手だったんですもっと親しくしてもらえばよかったと思いました。
頃合の時間なので会計をしてくるように下の娘に言うと「トイレに行くふりをしてこっそり払ってくるよ」とかみさんと2人で結構遠い所にあるレジに行きました。その様子をすばやく察知したグイド、アドリアーノ、とサンドロが間髪をいれず立ち上がり3人でかみさんと娘をブロックしてコンスタンツァさんが支払ってしまいました。下の娘は小さいので遠慮なく持ち上げられて圏外に押し出されてしまいました。
帰りはまたアドリアーノさんにサンジミニャーノまで送ってもらいました。道々車の中で伺った話ですが彼はサンジミニャーノでバールを持っていたことがあるそうです。ところがあの辺は大家さんの他に営業権をもっている人が別にいるそうでその人は貴族階級なんだそうです。なんだかショバ代とどこが違うんだろうと思いました。その貴族階級と気が合わなかったアドリアーノさんは今農家をやっているそうです。
それと彼の声がとても良いのできっと素人ではないと思い、聞いて見ましたらディスクジョッキーもやっているそうです。
とてもいい人ですっかり気に入ってしまいました。高校のとき読んで心に残っているヘミングウエイの/日は又昇る/の1シーンで主人公がスペインで釣りに行って会った気のいい男と別れるとき「僕はこういう別れがいちばんつらい」、と告げた場面を思い出していました。
今読んだらきっと違ってるのかもしれません。
明日はローマに移動します。




