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「いわゆる南京大虐殺・栗原利一証言を追う」のコメント欄が、すさまじい容量になっている。
これは、先に続いていた核心氏とのマルチポスト批判&見解論争が一段落した後に訪問された、6/24に初めてこちらにコメントを書き込んで下さった「owain」氏とのやりとりによるものである。先方が55、こちらが26、合わせて81コメントにも及んでいる。(当該コメント総数139の過半数をもオーバー)
実際問題として、コメントごとに多岐に渡る話題や質問が投げ掛けられ、それに対する返答にはさらに別の概念を提示……という流れもあり、また直近では話題が完全に2題に分裂(最初の話題について凍結?)されているため、混交して極めて読みづらい状態になっている。
というより、私自身も論点を追い切れていない。あれで問題なく質問を重ねることのできるowain氏には(その内容や意義はともかくとして)敬意を表するものであるが、ともあれきちんと話題を再確認すべきであると感じた次第。
なお、タイトルにあるようにowain氏の問題提起及び質問事項は大きく2つに分けられる。
・いわゆる「南京大虐殺」に関する問題
・「栗原利一証言」に関する問題
こちらのエントリーでは、前者に限定して取り上げる。
そもそもは、私が当該記事で記述した「諸外国も国民党も(南京での)数万人規模の虐殺など報じていない」という部分につき、owain氏から「アジア歴史資料センターの資料」を複数提示いただき、「当時報道はあった」という反証をいただいたものである。(6/24、22時)
これについては私も当該資料を確認し、1つは「宣教師からの伝聞記事」であること、1つは「満鉄社員・小川愛次郎(来歴不明、当時南京には居らず)から外務大臣・宇垣一成宛ての書簡」であると判ったため、それに基づく返答をした。(6/25、16時)
すると翌日に(6/26、2時)、以下のような返信が為された。
・(資料の「報道記事」が宣教師からの伝聞情報な点について)
「で、だから??」
・(数万人規模の虐殺など報じていない、等と)大きく出たのが、もろにはずれだったんで、今度は、ちょっとは慎重になったんですね
・一介の満鉄社員が出す訳がないから、小川愛次郎が満鉄調査部所属だ、というのは、常人には中々理解しがたい論理展開ですねぇ
・「諸外国も国民党も数万人規模の虐殺など報じていない」なんて、無茶な事を言う前に、もうちょっと基本的な事は勉強しましょうね
意図としては、普通に読めば「当時報道はあった」という反証に他ならない。部分部分の煽り表現はさておくとして。
小川書簡については意味不明な返答であったが(こちらが「満鉄調査部員が宇垣大臣宛の文書を作ったと予想」したのに対して「満鉄調査部員が宇垣大臣宛の文書を作ったら、何か都合の悪い事(矛盾とか)が起きるんですか?」との返答。私の予想にとっては「満鉄調査部員なら矛盾がない」からこそそう申し上げたのだが…)
さて、これを受けて私は「当時報道は皆無」という見解を訂正し、謝罪した。同時に、「なぜそれら報道はぱたっと止まり、戦後まで国際的に話題にならなかったと考えるか?」「伝聞記事に対する信憑性についてどう思うか?」という質問を提示した。(6/26、12時)
それへの返信が以下。(6/27、2時)
・論点が変わったのですね。了解。
論点はまったく変わっていない(虐殺情報の信憑性という点において)のだが、owain氏にはそうでなかったらしい。正直、予想外の反応であった。
・中国も、(例えば)何回も国際連盟で非難するよりは、新しい問題があれば、そっちを非難するのが当り前でしょう。それで?
・(伝聞である事には)『なんとも思いません』。ご自身が指摘されたように、この記事の元ネタ候補の合理的推定は容易ですから、その元ネタを検討すれば済む話です。
この返答にはなかなか困らされた。私の価値観で言えば「重大事は風化させまい、とするのが普通の感覚では?」「伝聞記事の元ネタに信憑性がなくとも「何とも思わない」のはあまりに無防備では?」となる。(後者は確かに元ネタ(宣教師証言)が有名なので、そちらを当たればいいのは確かだが)
そのため、前者の確認の意味で質問「では当時、後に戦争犯罪として立件され得る程の案件(つまり「南京虐殺」のこと)よりも重要視されたとするその「新しい問題」は、例えば何であったか?」を返した。(6/27、12時)
同時に、27日2時のowain氏の返信では小川書簡に関する見解も述べられていた。
・外務省石射東亜局長を、石射君と呼べるような立場(註釈略)の小川が、石射のツテを使って、その文書を宇垣外務大臣に読ませようとした、というのが、最も常識的な理解でしょう。
私と具体例こそ違うものの、「ただの満鉄社員ではあり得ない」という見解は一致していた。
私としては「東亜局長に外相への極秘文書を送らせる」ことが可能な程の「立場」という部分で、当時権限を増し続けていた「満鉄調査部」を自然に連想したわけであるが、むろん両者ともに「証拠」のある予想ではない。「小川という人間が一介の企業社員ではあり得ない」という部分において一致した、というに留まる(はず)。
さて、「新しい問題」に関するowain氏の返信は以下である。(6/28、1時)
・げぇっ〜、「戦争犯罪として立件され得る程の案件」かぁ・・・。自分で何を書いたのか、見直す事をお奨めする。書き間違いとしても、元の姿が想像できん
「南京虐殺」=「戦争犯罪として立件され得る程の案件」という見解に「げぇっ〜」という反応。正直戸惑うしかない。
さらには、一般論としてか以下のように述べられている。
・例えば「伝聞に基づく資料」は、伝聞だから価値が無いんじゃなくて、信用できない伝聞に基づいている、あるいは伝聞を歪めて伝えている場合には価値が無い
まさに私の「宣教師証言に対する認識」等と同様である。
にも関わらず、owain氏は私と正反対(伝聞記事の伝聞性そのものには興味無し)の姿勢を保つという。ここあたりから、私のowain氏に対する認識が「何このダブスタ」という感じに変化しつつあった。
・まぁ、とりあえず「重慶爆撃」(南京陥落以降の)を調べてみれば?
・例えば、パレスチナ国家承認前の国連で、アラブ諸国がイスラエルに対して、毎度同じ事件を抗議し続けたかを考えてみれば
そして、「新しい問題」とは例えば後期の重慶爆撃であるという。
普通に考えて「占領後の虐殺」とされる案件と「侵攻中の無差別爆撃」とされる案件で、前者を忘れ去ってまで後者をアピールするというのは考え難い。両方アピールすれば済むのだから。しかしowain氏には「これが自然」であるようだ。
また、唐突にアラブ諸国云々を提示してきた。これについては私が反例を挙げ(6/28、16時)、以後それに対する直接の反証は無かった。(そもそも「事実関係が明確」な中東関連の虐殺と、「事実関係にも説の争いがある」南京問題を同列に置く姿勢が凄いのだが)
(ここでowain氏は更に「ところで」と前置きし、栗原証言に関する話題にも入っているのだがここでは略。別記事に譲る)
さて、これら疑問を質問として返した(6/28、16時)ところ、返信は以下となった。(6/29、22時)
・むぅぅう…、まいった!話が通じてませんね。
勝手に参られても、困るのではあるが。
・「私は、第二次大戦絡みで、戦争犯罪として立件された事件の数を知らない。がしかし、さぞかし多い事だろう・・・」(戦犯=戦争犯罪人=戦争犯罪を犯したとして訴えられた人)
これでわかりますか? 立件された戦争犯罪は山ほどあるのだから
↑の文章は、未だに読解できずにいる。
どなたか、話の流れに適切な訳語をいただきたいくらいである。
「占領後の虐殺」とされる案件と「侵攻中の無差別爆撃」とされる案件の比較、という問題において(しかも言い出したのはowain氏)上記の意味不明の文面に何の意味があるのか、さっぱりである。
もしかして、owain氏は南京虐殺が戦争犯罪として立件されたのを知らないのか?とも考えたが、それはさすがにあり得ないだろう。他に戦争犯罪の立件が「山ほど」あるにせよ、話題にしているのは「南京」と「重慶」なのだ。
・和文タイプの部分の前を見て行けば「外務省石射東亜局長のツテを頼った」とかが判る。
こちらは小川書簡に関する返信。
私などは、「ただの社員がツテだけで極秘文書書かせたりしたら局長の守秘義務ヤバいだろ」と思ったりするので(いくら当時でもそれくらいは……)、やはり「外務省そのものに関連のある部署の人間」だと考える。単なる外務OB等であれば、どこかに名前が出るはずだからである。
ともあれ、調査部云々以外の点では認識が一致(小川愛次郎は相当のコネクションを持っていた)しているにも関わらず、調査部云々がよほど気に入らないのか、
・読もうとしたけど、字がわかんなかったのか、あるいは全部読まなかったか、ですね。
・憶測する前に、資料をちゃんと読む事に注意した方が、不要な推測・憶測の作業に突入するリスクも減るので、きちんと資料を見る習慣をつけた方が、貴方自身の為にもよいかと…。
このような表現のオンパレードである。
このあたりから、私も皮肉めいた表現を随所に返すようになっている。売り言葉に〜とはいえ、後から見ると赤面ものではある。反省。
・「70年近くたつ南京での出来事が、今でもこんなに本が出て話題になっているのは、ベイルートの虐殺よりも、ず〜〜っと、すごい大事件だった」って事でいいの?プロパガンダのせいじゃなくて?
これに至っては、もはや何をかいわんや。
後に私からも反証しているが(7/2、16時)、中東での虐殺その他が報道や出版物など出されているのと「南京問題」のそれは質が異なる。前述したように、「詳細が事実と明らかである出来事に対する批判や言論行動」と、「事実関係の真偽すら争われている出来事に対する批判や言論活動」であるわけで、それを混同して得意げに「こういうのを「自家撞着」って言うのじゃないですか?」とは何ともはや、である。
owain氏も述べている通り、南京問題は「プロパガンダゆえにその事実の争いが現在にまで至っている」のである。中東の虐殺事件等で、「それはプロパガンダだ、事実でない」として争っているケースがいくつあるというのか。
・重慶爆撃は、ジェノサイドとは、まぁいわないだろうね。
・例えば、東京裁判で「無差別爆撃」として、連合軍側が重慶爆撃を犯罪として訴追したら、具合悪いでしょ?
・(重慶爆撃は)貴方が言うように重慶は首都だったから、外国人記者もいて、各国で大きく報道されたし
・規模は重慶爆撃よりも大きい東京大空襲は国際的に激しく非難された?米軍に非難を浴びせるべき国が日本しかないのに?
上はすべて6/29時点でのowain氏の見解である。
私からの回答(7/2、16時)をまとめると、以下の通り。
>それでも「重慶」は「南京」より優先しうる「新しい問題」か?
>事実として明らかな事例は、連合国側=不問、日本=訴追、というケースがある
(後に「戦争犯罪としての認定」という差違があると気付いたので、この反論は取り下げ。まあ連合国がダブスタだったのは言うまでもないので)
>南京も当時首都で、外国人記者もいて、各国で大きく?報道されて……おや?
>自分で「戦勝国はダブスタだった」と言っているのにそれはないだろう
(戦後、東京大空襲の詳細が明らかになってからは「あれは戦争犯罪に値した」という見解が国際的多数である)
これを受けてのowain氏の返信。(7/3、2時)
・こっちは、貴方が「自分で、突拍子の無い判断基準を持ち出して、他人にその部分を指摘されても、自分で気付く能力が無い」という事を自覚してくれれば、もうこの話はいいですよ。
>
「自分で、突拍子の無い判断基準を持ち出して、他人にその部分を指摘されても、自分で気付く能力が無い」
まさに「新しい問題」の一連の話題におけるowain氏の態様を過不足無く言い表している。
彼は結局どうしたかったのだろう、と途方に暮れた瞬間である。
・しかし、自分で「国民党すら数万人規模の虐殺など報じていない」なんて書いちゃったんだから、今更「小川愛次郎は満鉄調査部かも知れない。マルクス主義者かも知れない」なんて、一生懸命とりつくろうのは、カッコ悪いよ。
6/26の段階ですでに撤回・謝罪したものを再度あげつらう。
読者の皆様にあっては、「人の書き込み読んでないのはそっちだろ」という感想に至った私の不徳を許していただければ幸いである。
(文字数制限により、後日に続く)

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