安倍内閣が発足して日本の舵取りを始めてから、およそ7ヶ月。
約半年強を経過して、その基本方針が見えてきた反面……気になる「期待とのずれ」もいくらか見えるようになってきている。
むろん、すべてにおいて期待通り100点満点を望むわけにはいかない。
ただ、最近の安倍首相の言動にはある「懸念」がどうにも見られてならない。その懸念が杞憂であることを願うとともに、もしそれが事実を表しているとしたら早急に改めてもらいたい……そのような批判と期待の双方を込めて、以下「政治評価第2段」をお送りしたい。
もともと安倍首相は、これまで日本がなあなあで済ませてきた外交課題……ことに特定アジアとの歴史問題において極めて断固とした主張を続けてきた。
それが端緒に出たのが拉致問題への取り組みであり、また「いわゆる」従軍慰安婦、南京大虐殺、朝鮮植民地化、等の案件についても客観的証拠に基づく毅然たる対応と決意を貫いていたはずである。
ところが、アメリカ下院での「従軍慰安婦非難決議に先んじてのあいまい謝罪」やら、中国による「日本海ガス田の抜け駆けガス盗難放置」やら、同じく中国への「ODAに代わる化学兵器処理費用ぼったくり」やら、今までに比較して説明こそ増やしてはいるものの、原則を引っ込めた弱腰が目立つ格好となってしまっている。
むろん、これを安倍首相の変節と短絡的に見るのは適当ではない。外交パートナーとして高い利用価値を備えていたアメリカが次期大統領選を控えて弱体化し、結果として日本への強硬姿勢への防波堤が削減されて多方面作戦を避ける戦術へとシフトせざるを得なかったという事情はある。
ただ……そうであるとしても、拉致問題以外についての日和見ぶりはいささか目に余るようにもなっている。国内の政治課題(財政、景気、政治不信等)についても、原則論を提示するのをやめて(遠慮して?)逐次の小分けで目先をごまかすようなやり方が目立ち、拉致問題等への取り組みで地道に培ってきた安倍氏の「国民の痛みを理解できる政治家」という評価が世論的に薄れている感は否めない。
私はその要因として、安倍首相の「憲法改正への道筋を整えること」に対するこだわりと焦りがあるのではないかと睨んでいる。
「憲法改正のためにはある程度の回り道もやむなし」
そう考えて、他の分野でのバランス取りを図っているのではあるまいか、と。
…だが、これがもしも事実に合致するのならば、致命的な失策である。
もちろん首相として強硬な姿勢一辺倒ではよろしくない、という判断や周囲の助言があるのは想像に難くないし間違ってはいない。が、かといって安倍氏自身の生命線でもある「政治家としての原点、支持されてきたこだわり」を妥協により押し込めることが長期的によい結果を生むとはまったく思えない。
むしろ短期的に何らかの衝突回避ができたとて、環境が整ったときには安倍氏のみならずその主張・信条も……すなわち憲法改正に向けての世論や拉致問題の解決・歴史問題の解決へのエネルギーなどもすっかり冷え込んで元の木阿弥、という危険性さえありはすまいか?
ただでさえ安倍首相は(その他圧倒的多数の政治家同様)景気・財政面ではこれといった強い政策を持たない。郵政民営化に(間違った面は散見されども)己の政治生命すべてを賭け、最後まで「就任以来のこだわりを貫く」イメージを固守した小泉前首相との微妙な、しかし圧倒的な違いがそこにはある。
若さ、国民を守る意志、言うべき事は言う姿勢。
それらこそが、安倍氏支持における国民の最大の目安である。ぶっちゃけ「老獪な立ち回り」や「玉虫色の絶妙裁定」なぞを期待して安倍氏を支持している国民などほとんど居るまい。
外に向けては「言うべき事は言ってくれ」、内に向けては「やるべき事はやってくれ」、そういった「あいまいさの無さ」こそが、首相に就任する以前の安倍カラーであったはずだ。
「政治的にあいまいな安倍氏」など、「抵抗勢力と戦わない小泉前総理」「マスコミに迎合する麻生外相」のようなものだ。誰も期待などしてくれはしない。
皇室典範改訂が話題となった時の「有識者会議」のせいですっかりイメージが凋落してしまったが、例えばあのようなブレーン組織による諸課題への対策をオープンな議論によって実行し、「国民の納得する客観的結論を出した上で」ならばいかなる強行姿勢、極端な政治的処方箋であれ支持されるのである。そこが安倍首相とその周辺には理解できていない(もしくは誤解している)。
安倍首相よ。
竹島を見捨てるな。旧日本軍では組織的拉致など無かった事を明確にせよ。併合朝鮮がいかに栄え、貧困から文明化へ移行したのか世界へ知らしめよ。
東シナ海の資源を盗人に献上するな。右から左で反日工作に使われる対中国ODAを再検討せよ。虐殺プロパガンダの虚構を政府として改めて暴露せよ。
アメリカの変節を恐れるな。むしろ日本がアメリカを牽引する気持ちで国際社会に語りかけよ。国際犯罪国家・北朝鮮の核武装を許すなかれ。
公明党の見せ掛けの福祉・人道政策に惑わされるな。公明党は日本国民の支持を期待していない。期待しているのは中・韓を含めた「創価学会の組織力」による国家実権掌握だけである。参院選後に一刻も早く違憲政党とは連立を解消せよ。
税制会議や財界の金持ちどもの、まず増税ありき・企業利益ありきの愚論は粉砕せよ。消費税増を低所得者への還元でカバー? 先にとっとと恒久減税を廃止しておいて今さら納得されると思うなかれ。賃金も勤労意欲も下げに下げている主原因どもに企業利益を語らせておくな。
批判ばかりになってしまったが、たまにはいいだろう。
「是々非々」とはいえ、これほど「非」が目立てば言わずにはおれない。
まあ、それでも相変わらず「他は非どころか論外」なのは変わらないため、安倍−麻生ラインの一層の強化を支持する現状に変わりは無いのだが……
保守にして国益の代弁者、となるとこうも選択肢の枯渇する政治風景はいい加減にどうにかしてもらいたいものである。
今や日本くらいだろう、「国益を侵害する」ことを目的に政治活動する者たちが与野党の多くを占めている国などというのは。

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