小泉首相の任期中に行なわれる最後の通常国会も、そろそろ終盤を迎えている。賛否両論が渦巻き、国民に様々な判断や思考を迫る数年間であったが……それまでの政治不信・無関心化に比較すれば、それなりの「国民の意識改革」には繋がったのかもしれない。
今後、また小泉以前のような「談合と癒着による密室政治」や、ようやくその被害が明かされ始めてきた「国益より政治勢力の利害を優先した灰色政策決定」が復活するのは、今の国民の政治への関心が維持されるならば容易ではないことだろう。それ自体は喜ばしいものである。
世論的には、次期首相の候補は1位・安倍氏、2位・福田氏という感じで定まりつつあるようである。
しかし、互いに同じ森派所属であることから、確実に他の候補も立候補者に名を連ねた活発な総裁選になることだろう。これも、昔のような密室指名とは無縁になったという意味で望ましいことではある。
しっかり政策を戦わせ合い、国民がより妥当な判断を下せる材料を揃える義務が政治家にはある。立候補者方にあっては、義務をしっかり果たして頂きたい。
さて、そんな「最後の総括」を控えた小泉体制である。
当然にその「過程と結果」には賛否両論あり、それは私とて例外ではない。
しかし、なぜか「反小泉」を前面に押し出す勢力は、小泉体制の全否定に留まることなく、ここを先途と「ポスト小泉」に対してまでも「小泉路線に近いか否か」という視点だけでものを見、評価を決定せんとする風潮にあるらしい。
政策の「是々非々」などお構いなし、いささか嘆かわしいところではある。
1.財政・経済課題
総裁候補どころか与野党ひっくるめてさえ、「現在より国民負担を減らす」政策を掲げている勢力は存在しない。経済の動きへの対応についても、特に大差のあるところはない。
財源を明示せずに福祉増加などを掲げているところはあるが、財源を考慮すれば結局は同じである(そういう所は支出削減をろくに議論していないからなおタチが悪い)。
国民にとっては誰を、あるいは政権選択として与野党いずれを選択しても意味が無く残念なところであるが、せめて「妥当な負担と将来の改善ヴィジョン」が明確なものを選択すべきであろう。
2.拉致問題
横田さん等とブッシュ・アメリカ大統領の面会等が実現してすら、政策議論の俎上にすら上がらないこの不思議。
この点については、安倍氏が一歩どころかダントツリードであるのは疑いないところであろう。
とにかく、マスメディアの大半はまだまだ宛てにならぬため、一政治家としてこの問題に真摯に傾注してくださっている安倍氏、そしてそれに近しいスタンスの候補のみが頼りになろう。
野党? 言うまでもない。
3.外交・歴史問題
安倍・麻生両候補を除いた勢力は、躍起になって「小泉以前の土下座外交」への復帰を画策している。
その理由付けとして「過度のアメリカ追従」やら「アジア軽視」やらを挙げてはいるが、何のことはない、前者は国防上の必要性と日本の独立性との天秤(すなわち安保体制を超えた日本の国防体制の構築)をサボってきたツケであり、後者は特定アジア3国だけを「アジア」とか「国際社会」とか誤誘導したミスリーディングであり(他の大多数のアジア諸国と日本とは関係極めて良好)、両者とも評価にさえ値しない。
だいたい、特定アジアに掛けている国費がアメリカに向けている国費と大差ないという事実から目を背けている時点で何をか況や、である。特定アジアが日本の国土を少しでも守ってくれている、とでも言うのだろうか?
とりあえず、領土侵略・他国への破壊工作を現在進行形で確実に行なっている国に対して「全面的に言い分を受け入れて土下座しろ」という連中は早々に退場いただきたい。
あと、靖国参拝の是非は「他の国が〜と言ってるから」などという理由で、憲法違反を侵してまで取り沙汰する問題であろうはずもない。
そんなに元戦犯を廃祀したければ、憲法を改正して「政治は宗教に自由に介入できる」としてからやればいい。その上でなら勝手にしろ、という事である。
4.皇室問題(男系維持or断絶に関して)
根本的に国民的議論がまだまだ欠けている問題であるが、ここ数年の動きとして(小泉体制の余波も少々あるが)特定アジア関連を中心とした「過去の戦争の歴史的再評価」がなされつつある中で、皇室の変遷とその価値への再注目も少しずつ行なわれている。
これまた安倍・麻生両氏は、ことこの問題については小泉首相より進んだ深い認識を持っているため、大いに期待したい。
他は見識面から、または官僚とズブズブだったり(皇室破壊の尖兵は戦後官僚にあることが少しずつ明かされ始めている)で到底役に立たぬ。論外。
5.郵政民営化
これは現時点では特段論点に上がってはいないが、小泉体制の最大の焦点でもあるため取り上げた。
まず、財務省(旧大蔵省)の過剰なバラマキ体質の温床でもあった財投債が再来年までにはその残高の全てを償却する。ようやく郵政資産の活用権限が政府の手に渡り、国民のお金を正しく使うための財政改革のスタートが切れるわけである。
これとリンクして、民営化法により段階的に進む様々な民営化についても、リバランスが行なわれていくだろう。その過程で新たな問題は当然に出るはずであり、検討期間が有効活用されるはずである。また、されなければ小泉改革の(うち、国民にメリットを与える部分の)実効性は消え失せる。
また、基本的に赤字である郵便事業については、より安価に効率的なユニバーサルサービスを提供する体勢が民間で整う頃には、こちらもシェイプアップした体勢に変わっていくことだろう。
少なくとも、政治家の集票組織としての機能は遠からずばっさり切り落とされてコスト削減が進行するものであろうし、そうならなければ困るところでもある。
……とりあえず、簡単に触れてみた。
他にも喫緊の課題はいくつもあるが、目に付く範囲ではこれらの課題に対してしっかりとした方向性を議論してほしい。
その政策が「小泉時代と近い、遠い」などというのは二の次・三の次であるべきである。現状に対して「是か非か」、国益にかなうか否かが大事なのだ。
特に安倍氏に対しては、官房長官としての職責を全うしての発言を「小泉マンセー化」などと曲解してのこき下ろしが酷く、それだけでも「反小泉」勢力の持つ「反対のための反対」的スタンスが透けて見えて嫌になる。
国益にかない、人の道に恥じぬ方向性であるなら、嫌いな人間の発言であろうと評価するのが「是々非々」である。まずは何より、己にそう心したい。
個人的には、とにかく「国益を侵害する候補」「国民生活を分析できない候補」には用は無い。それだけで候補がたった2名に絞られてしまうのは何と言うべきか……
とにかく、麻生・安倍両氏、どちらかの首相就任を期待しつつ、今回はここまでとする。

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