ほとんど政治右翼サイトの様相を呈している当ブログだが、私・タマネギ愛国者はもともと「現状への疑問」みたいなものをきっかけにこの手の論に触れるようになった。
「虚構・南京大虐殺」「捏造・朝鮮人強制連行」あたりがまず端緒ではあったが、そのうち「不況の原因は何なのか?」と考えて不良債権問題について調べたり(なかなか複雑だ)、「郵政民営化は日本をどう変えるのか?」疑問に思って(知らないから批判も賛同もできない)いろいろ経済や財政の知識を集めてみたり……そのような、私自身の「識る」活動の延長線上にこのブログもある。
結果として私が右寄りの論を持つに至っているのは、それだけ日本社会の「現実」という中心線が「左に傾いている」事への反動であろうか。(苦笑)
余分な前置きはさておき、今回は「経済政策と構造改革の関係」から見る「景気回復の策」を、私なりの見方で語ってみようと思う。
まず、世に誤解されているものとしては大きく2つあろうと思う。私もそう信じていたのだからきっとそうであろう。
・構造改革は無駄を無くし、景気を良くする
・デフレが解消されれば景気が上向く
この2つは間違いである。
「え?違うの?」という声が聞こえて来る前提でさらに話を進めるが(笑)、この2つは単純化された経済議論においてよく持ち出されるため、聞いたことのある人もいるだろう。
まず、1番目について。
「構造改革なくして景気回復なし」とは小泉フレーズのひとつだが、上でいきなり「間違いである」と否定した。それは何故か。
「そうか、構造改革路線は間違っていると認めるのか」と言われそうだが、さにあらず。これは実は、「構造改革単体は景気の上下に影響しない」だけの事である。
影響しないのになぜそんな事をするのか? これはかなり面倒な話だが、端折って言えば「景気が回復した後にその分のプラスを無駄に食われないための準備」とでも言うべきだろうか。つまり、構造改革とか利権の排除とかは「景気が回復した後、それを効率的に享受するための措置」なのである。
言うなれば小泉フレーズの「構造改革なくして景気回復なし」とは、「オレの構造改革が一段落するまで景気対策は脇に置くぞ」宣言という見方をするのが正確かもしれない。もちろんはっきりとそうは言わない所がなかなか狡猾だが、少なくとも小泉政治はそういう方針で一貫している。(だから一時的に国債発行額が増えていたりする。構造改革にコストをつぎ込んでいるがゆえである)
その方針が国民の望み、現実の景気への処遇としてベターでないのはまあ確かにそうだろう。倒産や失業もなかなか減らないし、景気のいい話もそうは聞かなくなって久しい。
しかし、それだけ「過去の日本が積み重ねた構造的腐敗」は多重化し、取り除くのにそれだけの時間を要したとも言える。何よりも「構造的腐敗」を支える「利権を当然と考え受け入れる風潮」が根強くあった事が大きい。
これを排するために、いわゆる「抵抗勢力との闘い」が繰り広げられたと言えるだろう。今では国民感情的に「利権=絶対悪」という印象が根付いた。まさに小泉流、ワンフレーズ政治の本領である。
さて、2番目。
一般的に、バブル経済はインフレであり、その崩壊後の現在に至るまではデフレと認識されている。実際、資産価値は暴落し(特に土地)、今に至るまでそのダメージを色濃く残している(不良債権問題)。
ようやく銀行などがこれらをあらかた整理し、この冬に入って貸し出し・融資の規模を増やし始めているというニュースも流れてきている。株価も15,000円の水準に回復し、物価も下げ止まり状態で安定している。輸出も好調で、企業収益も伸びているらしい。
では、そろそろ日本は不況から抜け出すのか?
否。
現状は、「デフレから脱却した」事を意味していない。
一般にデフレとは「物価が下がる状態」と言われる。
では、物価が1%上昇するのはデフレではなくインフレである……それがそもそもの間違いである。
物価+1%上昇は、デフレである。
何故かと言うと、(先程の構造改革の話ともリンクするのだが)物価上昇が発生しても「それを上回る価値がその物価に込められて」いれば、それは物価が上がった分を打ち消すからである。
ここは難しいので、例を挙げよう。
・10人の生産ラインで200円のサンドイッチを生産している
・利益率が下がってきたので、ラインの仕組みを効率化
・ライン人数を8人に減らし、同じサンドイッチを210円に値上げ
これが「価格上昇を伴うデフレ」である。
(1人あたり1コ20円の利益だったものが、26円余りに増加している。しかしもちろん給料が1.3倍になったりはしない)
この場合、利益率の上昇(1.3倍)と見た目の物価上昇(1.05倍)があるが、大体の場合には労働者給与のベアアップは後者に合わせられる。
その差分、25%程度のギャップこそが真の「庶民の不景気感」を生む要因なのである。
では、どうすればよいのか?
「企業努力をしないよう求める」? いやいや、それでは本末転倒だ。利益率を追求するのは企業の義務のひとつでもある。要は「利益が正確に労働の対価として反映されない=見た目と実質の物価上昇に差がある」のがまずいのだ。
「利益率の分だけ企業が労働者給与を上げる」? 妥当ではあるが、ただでさえ「経営がぎりぎりだからコスト削減している」企業にそれは酷でもあろう。結局はリストラや更なる経費切り詰めが避けられなくなる。
どうしても民間レベルでは限度がある。国の政策として、どうにかする必要があるのはもはや明らかではある。
私は、常々(主に
チャンネル桜掲示板で)「一時的な財源を確保して、とにかく減税や低所得者の課税控除を大規模に行うべきだ」と提案している。
ただ、単なる所得税や消費税の引き下げでは、現状厳しい環境にある「中流家庭」よりも「累進課税で多く納税、絶対消費量の多さにより多く納税」している高額所得者を優遇する政策になってしまう。課税最低限の引き下げ、累進が少ない低所得側によりお得感のある減税、独身の個人より大家族や子だくさん一家ほどメリットのある各種控除等……を充実させるのが望ましい。
「同じ国民へのバラマキなら公共事業でいいではないか」、という論もある。が、私はこの説には反対する。
なぜなら、上で述べたように「企業は生産性の向上(コストカット、リストラ)による利益率上昇を労働対価に即座に還元はしてくれない」からである。現状が不況である以上、仕方ない事ではあるが。
よって、公共事業で潤うのは一部企業(しかも労働者に満遍なくとはいかない)に留まり、その効果が景気の改善に寄与するには相当な時間がかかる。また、業種を広げてのべつまく無しに公共事業をするのではそれこそバラマキと大差なく、しかも前述の「労働対価への反映のタイムラグ」により国民が即座に利益を享受するのに時間がかかってしまう。しかも国家政策と企業の恩恵分割という2段階を踏むため、即効性という点でバラマキにすら劣る。
あとは財源の問題であるが、これは何とか日銀の協力を得るくらいしか無いだろう。短期でも長期でも、通常の国債を日銀に引受てもらい当面の財源とする。その分の利払い分はどうせ日銀=国庫に返ってくるので、借金の利息が際限なく膨らむ事にはならない。
また、これは将来「景気が回復し切った後で増税・控除削減」等により返してもらうお金である。生活が楽になった後なら、増税しても「仕方ないなぁ、痛てて」程度で済む。現状の財務省のように不況の真っ最中で同じ事をすれば、「痛い」程度では済まない。大事である。
(つまり、私は現時点の増税や控除廃止には絶対反対である)
あとは、とにかくインフレを必要以上に警戒しないことであろう。上で述べたように、物価上昇は生産性の向上と相殺されるので(潜在的には+2.5%程度までは実質デフレ:クルーグマン理論による)、それを上回るインフレ(2.5%を超える物価上昇)でなければデフレ脱却とは言えないのである。最低でも2.5%、それまでのデフレのダメージを払拭するには3%程度は見てもよいと言えるだろう。
日銀は1〜2%の物価上昇が見られるからこれ以上はもういい、と主張しているが、これはすなわち「デフレを堅持する、国民の生活は苦しいままに置いておく」宣言でもある。政府方針は基本的に「いや、もっとデフレ解消に動け」というものであるため、「小泉政治の方針(デフレ脱出)に日銀が抵抗している」という見方もできるだろう。
まあ、このあたりになると「日銀の独立性への侵害」とかいろいろ別の問題も出てくるが……そもそも現在の不況が「極めて危険な異常状態」なのだから、対策もある程度異常な手段に拠るしかないのはやむを得ない所である。
まとめると、こんな感じになるだろうか。
・構造改革は「景気回復後」のための準備
・物価は上がっていても、現在は「実質デフレ」継続中
・企業努力は「企業が倒産しない」役に立つが国民生活には悪影響。公共事業で仕事が増えてもそれは同じ
・不況を脱するには国民が使えるお金を増やすしかない
→すなわち減税策をとるべし
・財源は短期的に国債でまかなう。将来増税も明言しておく
(ただし増税の時期は5年とか10年単位での話になる。もともと現在の不況が10年ものだから、元に戻すだけで同じ程度かかる可能性は十分にある)
もちろん、これは私の現時点での認識に基づく主張に過ぎない。今後新たな価値観や画期的経済手法が見つかれば、そちらになびく事も十分にあるだろう。
とりあえず、私の考える所はこんな感じである。
参考URL:「
小泉の波立ち」
・「
景気回復策(前)」
・「
景気回復策(後)」
※クルーグマン理論として最近広まってきた「インフレ誘導理論」についてわかりやすく解説しており、私の持論である「物価が上がっていてもデフレの傾向は日本経済に濃く残留している」説を完全に補完してくれる論であったため参考にさせていただきました。感謝。

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