「天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語」
中村弦
第二十回日本ファンタジーノベル大賞作品の文庫化です。
建築家・笠井泉二は、一風変わった建物をつくりだす。それは、足を踏み入れた者が、異様な空気に酔いしれる…。老子爵夫人には、亡き夫と永遠に過ごせる部屋を、偏屈な探偵作家には、異次元に通じる家を。そして嫉妬に狂う男には、怒りを静める別荘を。その悪魔的とも言える天才の産物が、不思議世界へと誘う6話。
大正から昭和の激動の時代を舞台にした、ある建築家の作品とそれにまつわる人々の物語を連作短編で描き出す一冊です。依頼者の深奥に迫る建築物を設計する異才の建築家と言う一風変わった人物を中心にした物語は、その周囲の人々からの視点によって描き出される建築家に対する羨望や嫉妬、尊敬や畏敬などの様々な感情を紡ぎながら、建築家の実像をうかがわせていく正に異色ファンタジー。神の啓示を受けたかのような建築家−天才に影響されていく人々の姿は、凡夫である身の上に重ねあわされていき、その断絶によって真の才能を持つ人間の孤独が引き出されていきます。
精細な描写と調査に導かれる幻想小説と呼ばれるのにふさわしい、歴史と情感が交差する、あらすじで異次元ホラーを想像した心が洗われる一冊でした。最近は黒い本を読みすぎてるからな…,、'` (;´Д`) ,、'`つーか、ホラー者だったら異次元で家だったら一つしか思いつかない。

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