旧パラを検証する186
第十五号 5
詰上がりイの字 曲詰入選発表 三月号募集
三月号誌上で募集した曲詰は六月号で発表予定の処、その検討審査が意外に厄介の為遂に遅延して申し訳なかった。漸く本号に於て「詰上がりイの字」を発表し、次号で盤面イの字を発表する。
盤面イの字に比して詰上がりイの字は作図が困難の為、応募数は二十六局、十九作家に過ぎなかった。審査の結果次の通り入選及選外佳作を決定した。
〇第一位 札幌市 山田修司氏作

作 意
63金、同玉、62桂成、同玉、61桂成、同玉、53桂、同香、52銀、62玉、54桂、同香、63銀成、同玉、54銀、64玉、65歩、55玉、56香迄19手

☆評 小駒作品である。盤面中央に於ての小駒図式は決して容易なものではないが、左側二枚桂の成捨による右側二枚桂の打捨という手段で、作者は見事なイの字の詰上りを示した。実力発揮の好作。
△賞 西尾正山作将棋駒 一組
〇第二位 東京都 門脇芳雄氏作

作 意
22歩成、同玉、31龍、同玉、42歩成、同玉、43金、31玉、41角成、同玉、51桂成、同玉、62飛成、同玉、53金、同玉、43金、64玉、65銀、55玉、56香迄21手

☆評 新人の努力を買う。手順は平凡で順次駒を捌いて玉を中央に導くだけであるが、よく味うと、初盤の一手一手の変化に作品の苦心がよく現れている。詰上りも又美しい。選外となった山田君の図などは勿論これより上位にあるが、新人の努力を認め二位に推した。
△賞 将棋駒 一組
〇第三位 東京都 辰村純治氏作

作 意
66龍、同玉、67馬、55玉、54金、同玉、53桂成、同歩、65銀、同飛、63銀生、同飛、76馬、65歩、同馬、同飛、55歩、同飛、64角成迄19手

☆評 最初の二三手は平凡だ。然し続く銀捨によって玉方の飛車を上下にホンロウしてイの字に迄追詰める面白さは巧みである。ただ変化が同手数となるのが一寸気になるが、之亦新進作家奨励の意味もあり第三位に推した。
△賞 将棋駒 一組
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選外佳作
〇札幌市 山田修司氏作
〇東京都 堤 浩二氏作
〇埼玉県 落合健次氏作
〇福岡県 奥薗幸雄氏作
〇千葉市 加藤玄夫氏作
〇弘前市 岩谷良雄氏作
〇岸和田 川崎 弘氏作
▲以上 入賞カード二枚宛
〇大阪市 井戸蛙声氏作
〇群馬県 野口益雄氏作
▲以上入賞カード 一枚宛
◎商品は何れも本誌発行日後二十日以内に発送いたします。
選外佳作は何れも曲詰集発行の際掲載の予定であります。
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山田作は小駒図式で感じの良い作品。
門脇作は後の作品とは違い、流動的な作品で、後の作品集「曲詰百歌仙」で「イ」の字はこの作品は選ばれませんでした。
辰村作は飛車を翻弄しながら、76銀を消去して76馬として合駒を稼いで詰めるのは面白いと思います。この3作品の中ではこの作品が私的には一番好みです。

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