旧パラを検証する165
第十三号 14
今回も大学の作品の紹介をします。
大学 担当 土屋 健

正 解
88金、79玉、78金、69玉、68金、59玉、58金、49玉、48金引、39玉、19龍、29角、49金、同玉、29龍、39金、59金、同玉、39龍、49金、69金、同玉、49龍、59金、79金、同玉、59龍、69金、89金、同玉、69龍、79金、88金、同銀成、同飛、同玉、77銀、同玉、79龍、86玉、95角、同玉、75龍、85銀上、86金、94玉、85金、同銀、96香、同銀、95銀、83玉、84銀、82玉、73龍、81玉、91香成、同玉、93香、81玉、92香成、同玉、83銀成、91玉、
82龍迄65手詰
須釜喜一郎氏 95角がポイント玉の往ったり来たりは面白い趣向
北原義治氏 変化は大して無いが金寄りや金合に細かい味があり趣向的好局。
堤 浩二氏 長篇ものにはそれ自体に備る可き特質がある筈ですが、本題にはそれが見られない。それは伏線とも云う可きものです。
解 説
山田君一流の趣向的作品、或は横の九筋に初り、縦の九筋に終る金寄り金合と横の方は芸が細かく且つそれが主眼故九五角只の一発の縦が見劣りするのも仕方なし。
頭デッカチ尻ツボミ、竜頭蛇尾の奇形児だが、作者の狙いは面白い例により公式的妙手は九五角が唯一無二、と考えるのは少々古いと云っては叱られるだろうか。玉の送り迎えを夫々一個の妙手と私は見る。此処で妙手論の講義をするつもりはないが、毎回大学生として亦教授として述べてあるので金と暇のある方は本誌のバックナンバーを見て頂きたい。堤氏の御言葉の如く、長編作としての特質が見られない、とは一般論としてよく理解出来る。本題を詰上げた時一寸物足らぬと感じられた方があった事と思う。それは往時の趣向作或はオーソドックスは作品の理念によるからで、或は大多数の方々がそうであるかも知れぬ。だが私はこう考える。本題にはオペラの前奏曲は無いかも知れぬ、亦フィナーレを飾るオーケストラのダイナミックな爆発は無いかも知れぬ、然し小きざみな金と玉との、互にもつれ合いからみ合い歌う初夏の風物詩はリズミカルで気持ちよい。行きつ戻りつ誠に楽しげではあるまいか。この作品を愉快に詰上げるのが近代詰将棋の理念であると思う。私も本題を決して傑作とは云わぬ。詰将棋を楽しむと云う点よりして課題に選定した次第である。(観念的な説明をしたが理解願い度い)
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例の金打金合を繰り返すパターンですが、これが元祖であるのなら画期的作品だったと云えるでしょう。趣向後が少し長めですが、95角の好手を絡めて上手く纏まっていると思います。
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19龍、18桂成、同龍、17桂成、同龍、16飛、同龍、15角、同龍、14角成、57角、(イ)46香、同角、35香、同角、24香、25桂、23玉、13飛、(ロ)34玉、33飛成、45玉、44龍、56玉、46龍、67玉、57龍、78玉、68龍、87玉、88香、同金、79桂、86玉、88龍、87香、78桂、75玉、67桂、74玉、66桂、同金、75香、63玉、53金、72玉、62金迄47手詰
変化(イ)
24香、25桂、23玉、13飛、32玉、33桂成、21玉、11飛成、同玉、14龍、12歩、23桂、同歩、22角、21玉、13桂、同歩、11角成、同玉、13龍、21玉、22龍迄
(イ)
24成桂、25桂、12玉、14龍、同成桂、13飛、同成桂、同角成、21玉、33桂打、32玉、21角迄
(ロ)
同馬、同龍、34玉、33龍、45玉、44龍、(甲)36玉、54角、45飛、同龍、25玉、26飛、14玉、15香、23玉、24飛、33玉、34龍迄
(甲)
56玉なら46龍以下作意手順と同様の詰みとなる。(原書には左記のようにあるが、56玉なら46龍、67玉、57龍、78玉、69角、88玉、68龍迄33手で詰む)
小林淳之助氏 僕もかなりの図を見てきましたが、斯くの如き奇警な原図に接した事はありません。うつかりすると一九龍の一手詰なんて云う人があるかも知れません。詰上り左翼の金銀郡が固着した儘であるのが気になりますが。
内山精一氏 本図を見て反射的に想起したのは宗看図式九十六番であつたがやつて見るとやつぱりそうだ。模倣作(でなければ尚良いが)とは云え、二回に亘って宗看の趣向を取り入れたのは旨い。収束が如何にも物足りないが、別に攻駒一個の趣向を生かしている以上已むを得ないものと思う。
解 説
本題の趣向は類の少いもので、珍重す可き作品である。詰将棋の妙手と称するものは普通攻方の捨駒であるのだが、この場合は逆である。殆ど絶対手に終始して居るのに意外に誤解者の多かったのは、見なれぬ作品故反って潜在意識が邪魔になったのかも知れぬ。左翼の駒の配置はつらい処だが不巳不得。但し四一とは頂けない。自陣内の成駒は其駒自体の働きに意味を持たせるなら別に気にはならぬが、単に早詰を防止する為に置いたのなら努力により他の駒に代える事が出来るだろう。尤も十九手目一三飛の処三三桂成以下詰がある様に見えるが、四一との為どうしても詰まぬ。かつての素人名人の作だけあり誠に力作で珍しい手筋を駆使し、今年度の問題作の一つであるのは間違いない。手順はもとより攻方一枚駒の趣向の作を創ろうとも謂う処に作者の遊びがあり近代感覚がある。その点私は本題を高く買う。参考の為に鬼宗看の第九十六番の図を掲げたが、内山氏の云われる模倣作とは思えない。これが模倣なら大矢数の如く馬の鋸引きは後代幾つ出来ても意味が無いと云わねばならぬ。いずれにせよ内山氏の慧眼には敬意を表するに吝かではないのだが。(無双96番の紹介等以下省略)
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詰将棋史に残る傑作です。合駒を順に見て行くと、@桂の移動中合(18桂成)A桂の移動中合(17桂)B飛の移動中合(16飛)C角の移動(15角)D角の移動合(14角成)E香の移動中合(46香)F香の移動中合(35香)G香の移動合(24香)H香の合(87香)という4種9合ですが、総て飛び駒の合駒で移動中合が入るのか記録作としても意味がありそうです。移動中合で稼いだ駒を8筋で上手く消費するのは見事です。駒はあまり捌けないですが、収束は捨駒を織り込んでいて素晴らしいと思います。何より、こういうフェアリーっぽい作品が無かった時代にこの作品を発表した坪井氏の力量は凄いと思います。坪井氏は数は少ないけど、傑作を残されました。もっと作品がみたかった作者の一人です。
今回の大学は解答者総数35名全題正解者8名で、北原義治氏も名を連ねています。全題正解者ではありませんが、解答者として、奥薗幸雄・渡部正裕両氏が出ていました。

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