私が来条克由氏を初めて知ったのは、将棋ジャーナルの三宅正蔵氏の名講座「必至ゼミナール」であった。当時の私は詰パラの会員ではあったが、詰将棋の才能が無いのが判った為、指将棋を頑張り始めた頃であった。したがってパラは買ってはいたが、中身は全く読んでいなかった。実際は「必至ゼミナール」以前にパラで来条氏の必至を連載していたのだが、全然知らなかったのである。
戻って、「必至ゼミナール」には下図が載っていた。本当に凄いと思った。それまでの必至が実戦の延長上にある、初代大橋宗桂だとしたら、来条氏の作品は一挙に三代宗看まで進歩させてしまったといった印象だった。次の号からも来条氏の作品紹介はしばらく続き、「来条克由必至名作集」を購入し、すっかりファンになった。
では、来条氏の代表作とも言える下図を解説してみたいと思う。(変化等はパラ解説時のものも参照した)
(1図)
初手から13桂、同歩、12歩は順当だと思う。ここで、33馬は11金、同馬、同歩成、同玉、33角以下詰むので22馬の妙手は出て来ると思う。以下も11金、同馬、同歩成、同玉で次図となる。
(2図)

まず、普通に22角と打ってみると、21玉、A13角成、52飛、32歩成、同飛で逃れる。そこで、少し捻ってAで32歩成を利かせてみる。以下同歩、13角成、11金、12歩で受けが無いかと思いきや、22銀の強防がある。以下11歩成、31玉、43金、13銀、12桂成、42銀、52金、33歩、13成桂、32玉、44銀、31金で次図。
(紛れ図)

以下、〇12とは21歩、〇22歩成は同金、B12と、同金、同成桂、23玉、Bで42金、同玉、22成桂としても43金でいずれも逃れることになる。
2図に戻ってとりあえず、44角と打ってみる。開き王手を避けるには22に何かを埋めるしかないが、32歩成〜22歩成で詰む。44角、22X、32歩成、これで必至か?いや32歩成の瞬間44の角を抜く22角の受けがある。これは取るしか無く44角、22角、同歩成同玉と進む。以下は32歩成、23玉の時14玉から抜けるのを防ぐ好手14角、両王手を避ける21玉、41角成までの十五手必至?
22角と受ける局面で考えてみると、歩を成る開き王手を防ぐには、その瞬間44角を取り返せる角の受けが必要となる。でも22角は同歩成で以下必至。ではどうするか、要するに玉方の角を取られた時点で必至が続かなくなる受けが必要で、それが62角の絶妙の受けである。これは取るしか無いのだが、同角成の瞬間が詰めよでは無いので、必至がかからないのだ!
同じように55角には73角、66角には84角、77角には95角で何と逃れである。
では、88角は?88角も79角や97角で続かない、では正解は?正解は角を合わされない99角だったのだ!!
(3図)

この角に対する受けも難しい、先ず先の角中合いを発生させる為に、中合いをすることが考えられる。
仮に77歩の中合だと以下同角、95角、の時12歩、21玉、32歩成で詰むので、桂中合いが正しいことになる。桂の中合いの場合66〜44の場合は同角で角を合わせた後、32歩成、66〜44角、22歩成、同角の時に23桂で詰んでしまう。従って、77桂と中合してみる。99角、77桂なら、以下32歩成、77角成、22歩成の時同馬と取れるので23桂を同馬と取ることが出来る。そこで一工夫が必要である。要するに角を77で取らせて馬にさせなければ、23桂で詰むのであるから、99角、77桂、同角、95角、44角とすれば、以下62角とされても今度は32歩成りで詰むので、必至となる。これが十三手必至。従って、最初の紛れに戻り、22角と受けるのが正解の十五手必至となる。
1図正解手順:13桂、同歩、12歩、22馬、11金、同馬、同歩成、同玉、99角、22角、同歩成、同玉、14角、21玉、41角成迄十五手必至
(必至図)
1図は将棋をやっている限り忘れることは無いと思う。本当に月並みだが、惜しい人を亡くしたと思う。
合掌

12