イタリアの宴
2010年5月29日(土)無事終了
青葉台ハーモニーホール
フラウト・トラヴェルソ・案内人:
長島有紀
テノール:中村貴志
ヴァージナル:加藤由梨
E.d.カプア わが太陽〜オ・ソレ・ミオ(中村貴志編曲)
G.カッチーニ 愛の神よ、何を待っているのですか?
G.カッチーニ アマリッリ
G.カリッシミ 勝利だ、わが心よ
F.ドゥランテ 愛に満ちた処女よ
A.スカルラッティ 陽はすでにガンジス川から
G.F.ヘンデル 調子の良い鍛冶屋
J.S.バッハ プレリュード)
R.L.ボッケリーニ メヌエット
G.P.テレマン 教会ソロ・カンタータ「私はキリストの死でもって洗礼を受ける」
G.F.ヘンデル 私を泣かせて下さい
G.F.ヘンデル 木陰で〜オンブラ・マイ・フ
アンコール
T.ジョルダーニ わが愛しの人よ
2008年11月30日に横浜で古楽のコンサートに出演させて頂きましたが、その際に知り合ったフルート・トラヴェルソ奏者、
長島有紀さんが企画されている古楽レクチャーコンサートに出演させて頂きました。フルート・トラヴェルソは昔のフルートで、その魅力を広めよう、その時代の音楽を楽しんで頂こうというのがこのレクチャーコンサートの狙いです。今回のテーマはイタリア。イタリアはバロックの発祥の国ですから、古楽奏者にとっては真っ向勝負です。しかし、カンツォーネの代表作『わが太陽〜オ・ソレ・ミオ』でコンサートを開幕したのは長島さんらしい発想。しかも、僕は客席の後方から歌いながら登場するという演出。おそらくほとんどの方が耳にされたことのある曲であり、この演出から、コンサートの最初でお客様の気を引くことができたのではないでしょうか。僕はフラウト・トラヴェルソとヴァージナルの伴奏で『わが太陽』を歌うなんて夢にも思いませんでした(笑)。でも、面白かったですし、楽に歌えました。
テーマがイタリアということで、テレマン以外は声楽家が初歩の段階で必ず学ぶ「イタリア古典歌曲」から選曲しました。「イタリア古典歌曲」とは、19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて活躍したイタリア人の作曲家で古典研究家のA.パリゾッティが、埋もれてしまった16世紀から18世紀までのイタリアの小唄やアリアをピアノ伴奏に編曲したもの。埋もれた歌を掘り起こし、広めた功績は大変大きい。しかし、今回はロマン派様式に編曲されたパリゾッティ版ではなく、原典の楽譜あるいはそれに近いもので演奏しました。いわゆる「イタリア古典歌曲」の原点に帰ったのです。今回のこの経験は僕にとって大きなものでした。声楽家としての原点を再認識することができましたし、ピリオド楽器で演奏したことにより、自分の声の方向性を再認識することができました。それに、久しぶりに「イタリア古典歌曲」を歌うことができて、楽しかった。ただ、アマリッリだけ不満足な出来。この曲は難しい。よく初歩の段階で歌わせるな。
テレマンはドイツ人作曲家で、今回取り上げた教会ソロ・カンタータはドイツ語の作品です。なぜこの曲を取り上げたかと言いますと、形式がイタリア・オペラのそれと全く同じであるから。イタリア音楽がどれだけヨーロッパ中に知れ渡っていたか、どれだけ他国の音楽に影響を与えたかを如実に表しています。テレマンでは長島さんがオブリガートで加わりました。テレマンを演奏するのは難しい。しかし、良い演奏だったと自負しています。本当に楽しかったですし、長島さんと一緒に演奏できてうれしかった!
終演後はお客様とともに宴(パーティー)。そのために長島さんはたくさんのお菓子を作られました。すごい労力に脱帽。終演後に美味しいお菓子を頂きながら、お客様とお話しできたのは良かったな。関西で2度『第九』をご一緒したことのある方が、僕が出演するということでこのコンサートを宣伝して下さり、そのご友人が7人もお越し下さいました。うれしい限りです! 素晴らしい友情です。ありがとうございました!
今回の立役者はなんと言っても長島さんです。企画・主催され、マネージメントを自らやり、勉強やあらゆる準備をし、当日は進行と演奏をする。これは並大抵の能力、エネルギーではできません。本当に素晴らしい頑張りでした。また、ご家族のサポートも大きな力になっています。素晴らしい家族愛です。それが報われて、本当に楽しいコンサートになったと思います。僕はそんなコンサートに出演できて幸せです。長島さんと共演できて良かった。長島さん、ありがとう!
フラウト・トラヴェルソ。訳すと、横笛。バロック時代のフルートです。現在のものとは違って、木製で、キーは1つしかありません。現在のフルートほどの音量はありませんが、優雅で暖かな音色です。
ヴァージナル。小型のチェンバロと言っていいでしょう。音色はひとつしかなく、音域も狭いが、音量は大きい。僕はもっと繊細な音色かと思っていたら、結構力強くて、ビックリした。
演奏中のワンショット。
終演後にトリオで。右から長島さん、加藤さん、僕。実は、衣装はイタリアの国旗の色を意識している(僕はポケットチーフの緑。緑のスーツを着る勇気はなかった(笑))。