5月最後の週末は、東海道の宿場町、関宿のあることで有名な、三重県の
亀山市へ行ってきました。観光ではなく、本番まで1ヶ月を切った6月28日(日)の
「"meets" and Vox MEA ジョイントコンサート」に備えた合宿に参加したのでした。
合宿場は
関ロッジという国民宿舎。入口にブルートレインの車両が置いてありました。なんとこれに宿泊できるとか。
関ロッジの裏手には観音山公園があり、森が広がっていて、自然豊か。好きだなぁ、こういうの。
僕が合宿に呼ばれたということは合同ステージの作品を練習するから。合同ステージのメイン作品『今日からはじまる』を作曲した渡邉なつ実さんは岐阜県の郡上八幡出身で、
結婚されてからは地元で暮らしています。郡上八幡も自然豊かな所。その共通点のある場所で練習できるというのは良いことだと感じました。
31日(土)
ギターマンドリン合奏団"meets"と
"混声合唱団Vox MEA"は僕よりもいち早くやって来ていて、それぞれ練習していました。
そして、16時から18時まで第3ステージ「世界の民謡」の合同練習。いよいよ僕の出番です。このステージの編曲を担当して下さったのは酒井国作さん。実はこのステージで演奏する5曲中、完成していたのは3曲。残り2曲は合宿までに完成するのか(いや、本番までに間に合うのか)と皆やきもきしていましたが、間に合いました(笑)。酒井さん、お察し致します。酒井さんから編曲のアイデアは伺っておりましたので、頭の中には音楽が出来上がっていたことと思います。しかし、そこから先を先延ばししてしまうんですよね。僕と同じの匂いを感じます(笑)。
まずは出来立てホヤホヤの『オ・ソレ・ミオ』(イタリア、E.d.カプア)と『草競馬』(アメリカ、S.C.フォスター)を練習。"Vox MEA"が合宿所に来てからこの2曲の音取りと言葉付けをしてくれたお陰で、合同練習ではスムーズに進みました。『世界の民謡』だから気軽かと思われますが、なんのなんの。5曲並ぶと、結構ヴォリュームがあります。『オ・ソレ・ミオ』と日本古謡の『さくらさくら』は正攻法的な編曲ですが、アイルランド民謡の『ロンドンデリーの歌』、『草競馬』、ロシア民謡の『トロイカ』は趣向が凝らしてあります。それぞれの持つ味をしっかり出したい。
夕食後、19時から21時までは渡邉なつ実さんが今回のジョイントコンサートのために作曲してくれた『今日からはじまる』を練習。
3月8日の初練習以来、練習を重ねてきました。その度に音楽が深まっていきましたが、この練習でかなり細かい所まで作り上げることができたと実感しました。また、この曲集の6曲のうち、2曲が無伴奏合唱曲で1曲がマンドリンオーケストラ曲ですが、初めてお互いの単独演奏曲を聴きました。お互いに「難しそう…」と言っていましたが、難しいです。単独演奏曲は要練習。明日午前中の単独ステージの練習時間にそれぞれの単独演奏曲の練習を組み込んでもらいました。また、僕がまだ音楽をつかみ切れていない曲もあります。中村も要勉強。それでも、大きな充実感を持って、初日の練習は終了。
練習後は入浴して、ゆっくり休息……なんてことはありません。特に僕がいる時は(笑)。反省会と称した飲み会開始! 最初は"Vox MEA"の重鎮氏と僕のふたりだけでしたが、だんだん人数が増え、最後は両団体入り乱れて、何人になったかわからないほど大人数になりました。酒を酌み交わしながら、大いに語り合いました。両団体とも、そして僕も互いに深い親睦を図れました。合宿で一番大事なのは練習でなく、親睦を図ることだと僕は思っています。同じ場所に滞在し、一定期間行動をともにする。いわゆる「同じ釜の飯を食う」ことによって、互いの存在をより近くにすることが大事。この夜盃を交わしたことが今後の音楽に必ず生きてきます。
そうそう、もうひとつうれしいことがありました。それはわれわれが宿泊している関ロッジのビールの自販機に「キリン・ザ・ゴールド」があったこと。このビールは麦と水だけで作った正統なビール。最初このビールを飲んだ時、ビールの本番ドイツのビールだと思わせるほど美味しく、日本でもこういうビールが造られるようになったかといたく感激しました。しかし、しばらくすると、「キリン・ザ・ゴールド」が軒並み酒コーナーから消えていきました。売れ行きが芳しくないとか。ほとほと日本の酒(ビール)飲みに失望し、憤慨しました(大げさな)。しかししかし、まさかこんな所(失礼!)で再会できるとは! 生き別れの親と再会した気分です(親とは生き別れたことはありませんが(笑))。一気にこの関ロッジを気に入りました!(笑)。
そんなことも手伝って、宴は大盛り上がり。日付が変わってしばらくした頃にようやく散会。眠りにつくのでした。
31日(日)
7時起床。7時30分から朝食。皆、昨夜の宴の悪影響はなく、元気そうで何より(笑)。もちろん僕も悪影響なし!
皆は9時から練習ですが、僕は10時からの参加なので、朝食後、観音山公園を散策。遊歩道がありますが、山道といった感じで意外と本格的な山登りのよう。この観音山には33体もの観音石仏が安置されているとのこと。おそらくいちばん高い所にある石仏に参拝。
ここからの眺めは絶景。鈴鹿山脈と亀山の町、そして伊勢湾まで展望できました。逆光で携帯電話のカメラではきれいに撮影できなかったのが残念。
山を下りて、関ロッジの裏手にある池へ。昨日、そこに吊橋がかかっているのが見えて、気になっていました。観音山公園は保全林になっています。公園というよりは森。僕は山や森が大好きで、歩いていて気持ち良い。鳥のさえずりが心地良く僕の耳に届きます。吊橋に行く途中、かわいい赤い花が咲く木を発見。
吊橋に到着。名前は聖橋。吊橋といえども両端は地面に固定されているか、埋め込まれているものですが、地面とは接触しているものの、固定されておらず、文字通りの吊橋。
観音山公園の森に十分癒されて、関ロッジに戻りました。
10時から僕の2日目の練習開始。まずは"meets"と渡邉なつ実さんの『今日からはじまる』のマンドリンオーケストラ曲『間奏曲』を練習。拍子が幾度も変わり、変拍子もあり、強烈な民族音楽的な曲調もあれば、どっしりとした荘重な音楽もあり、悠々としたメロディーもあれば、しっとりとした美しいメロディーもある。万華鏡のように様々に変化していくのがこの曲の特徴といえるでしょう。しかし、とてつもなく難しい。技術的にも難しいし、音楽的にも難しい。音楽の流れに身を委ねて、それに乗ってできるという作品はありません。常に緊張を強いられます。それでいて、渡邉さん特有の悠々とした美しさがある。渡邉さん、よくもまぁ、こんな曲を書いてくれたものです(笑)。この曲の良さを引き出すために、細かく区切って練習。奏者もやっと慣れてきて、細かい所まで気が回るようになってきて、この曲のニュアンスが出てきました。これが発揮されれば、かなり面白い演奏になるでしょう。
10時30分からは"Vox MEA"と渡邉さんの『今日からはじまる』の無伴奏合唱曲『きこえてくる』を練習。実はこの曲、僕が音楽をつかみきれない曲のひとつ。表面的にはまどみちおさんの詩に無機質な音楽を付けたように思われますが、その裏には感情の大きなエモーションが存在しているように感じるのです。相反するこの2つの要素をどう出していくか、悩んでいます。また、この曲には作曲面においてまだ足りないものも感じています。40分間の短い練習でしたが、ひとつの方向性を見出せました。この段階では作品も演奏も未完成ですが、かなり大きな意味を持つ練習でした。1ヶ月弱の時間しかありませんが、突き進みます。
11時20分から12時までは合同で前日に初めて練習した酒井国作さん編曲の『オ・ソレ・ミオ』と『草競馬』を中心に練習。前日よりも細かい所まで練習できました。『オ・ソレ・ミオ』は、燦々と降り注ぐ太陽の光の下、女を口説き落とすイタリアの伊達男とそれを受けて立つイタリア美女という感じでいきたいなぁ。『草競馬』は言葉だな。『ロンドンデリーの歌』もそうですが、英語の発音をしっかりしなければ。
昼食後、13時から渡邉さんの『今日からはじまる』を通して演奏してみました。まだまだキズはあるものの、最後の曲が終わるという頃になると、涙が出てきそうになりました。若手作曲家、渡邉さんの力作がここまでの音になったという感慨。そして、この曲集の終曲『今日からはじまる』の高丸もと子さんの
「あなたに会えてよかった 空が青く 大きいことも あなたがいて気づいた (中略) みんなに会えてよかった すてきなものが そばにあること みんながいて気づいた いまもどこかで命が生まれる (中略) わたしに会えてよかった (中略) 今日からはじまる 何かいいこと」詩が僕の心にビンビン響いたこと。まさにこの詩は今回のジョイントコンサートのテーマであるし、人間の生きるということの根源です。みんなに会えてよかった! みんなと音楽できてよかった!
でも、本番までは1ヶ月弱の練習があります。さらなる感動を求めて、まだまだだった部分を確認しながら練習。6月21日と6月27日の合同練習、ゲネプロを通して素晴らしい音楽、素晴らしい演奏になっていくと確信しました。
時間が余ったので、「世界の民謡」ステージで今日練習していない曲を練習。その後はお互いの単独ステージの演奏を聴き合いました。ジョイントコンサートなのですが、単独ステージは別々に練習しているので、お互いの演奏を聴くという機会はありません。ともにコンサートを構成するわけですから、お互いの演奏する作品、演奏を知っておくことはプラスになります。フムフム、こういう曲を演奏するんですね。合唱界に足を突っ込んでいるので、"Vox MEA"の演奏する曲は大体知っていましたが、ギターマンドリンの作品は初めて聴きました。"meets"が演奏するU.ボッタッキアーリ作曲『交響的前奏曲』と藤掛廣幸作曲『グランド・シャコンヌ』はマンドリンオーケストラにとって定番中の定番曲とのこと。むちゃくちゃカッコイイ! 初めてマンドリンオーケストラを聴く方でも楽しめますよ。お互い刺激を受けたんじゃないかな。
こうして、合宿は終了しました。
色々な面で大変充実した合宿となりました。皆の表情も非常に爽快な感じがします。これから本番に向けて最後の追い込み。この2日間はそのための有意義な時間でした。本番まであと1ヶ月弱。素晴らしいジョイントコンサートにするために邁進します! ご期待下さい!
合宿の最後を締めくくる1枚。この面々が6月28日(日)に感動をお届けします!