第50回記念定期演奏会
〜つどい、うたう〜
2017年1月22日(日) 無事終了
日本特殊陶業市民会館フォレストホール
主催・お問い合わせ
名古屋大学グリーンハーモニー nugreen.concert@gmail.com
後援
愛知県合唱連盟
朝日新聞社
名古屋市
愛知県教育委員会
名古屋市教育委員会
名古屋大学グリーンハーモニー団歌
F.メンデルスゾーン 森にわかるる歌
副指揮者ステージ
寺山修司の詩による6つのうた『思い出すために』
作詩:
寺山修司
作曲:信長貴富
指揮:遠藤彗
客演ピアノ:杉野加奈
正指揮者ステージ
混声合唱アルバム『風にのれ、僕らよ』
作詩:みなづきみのり
作曲:
相澤直人
指揮:大崎南帆
アラカルトステージ〜あの頃に思いを馳せて〜
1.ドレミのうた(女声合唱)
作詞:オスカー・ハマースタイン2世
作曲:リチャード・ロジャース
編曲:北野実
ピアノ:早川洋平
2.乾杯(男声合唱)
作詞・作曲:長渕剛
編曲:源田俊一郎
客演ピアノ:杉野加奈
3.銀河鉄道999(混声)
作詞:山川啓介
作曲:タケカワユキヒデ
編曲:早川洋平
指揮:大崎南帆
OV合同ステージ
混声合唱とオーケストラのためのカンタータ『水脈速み』
作詩:山崎佳代子
作曲:
松下耕
客演指揮:
中村貴志
客演演奏:
愛知室内オーケストラ
アンコール1(OV合同)
そのひとがうたうとき(管弦楽版)
作詩:谷川俊太郎
作曲:
松下耕
客演指揮:
中村貴志
客演演奏:
愛知室内オーケストラ
アンコール2(現役生)
青い鳥
作詞:安岡優
作曲:北山陽一
編曲:横山潤子
指揮:大崎南帆
客演ピアノ:杉野加奈
22日(日)に名古屋大学グリーンハーモニーの第50回の記念となる定期演奏会が日本特殊陶業市民会館フォレストホールで開催され、半世紀に渡る活動の集大成を無事に飾ることができました。歴史的な瞬間にお立ち会い下さったお客様に心から御礼申し上げます。
この演奏会に対して僕には強い思い入れがありました。それゆえ長文になりますが、振り返りたいと思います。
代々歌い継がれてきた名大グリーンハーモニーの団歌で清々しく開演を告げた後、まずは副指揮者のステージ。信長貴富さん作曲の『思い出すために』は僕でも指揮をするのに躊躇する作品で、指揮を始めて1年足らずの者には非常に難しい。副指揮者とは事ある毎にどう指揮したらいいのか、曲をどう掘り下げたらいいのかを話し合いました。毎回成長を見せ、本番では副指揮者も合唱もベスト・パフォーマンスでした。
正指揮者が指揮した相澤直人さん作曲の『風にのれ、僕らよ』も難曲。本番では上手くいかなかった所もあったでしょうが、熱い思いが込められた演奏で、彼ら彼女らの気持ちが伝わってきました。
正指揮者の彼女を2年間見てきましたが、指揮者としても人間としても成長が著しく、晴れの舞台で颯爽と指揮する姿を見られたことがうれしかった。彼女がこの団で指揮者を務めたことは非常に大きな経験で、今後の人生に役立つはず。
アトラクション・ステージの後は僕が指揮をさせて頂いたOV(卒団生)合同ステージでした。出演者は現役生約50名、OV約60名、オーケストラ51名、総勢160名を越え、第50回記念定期演奏会の最後を飾るのにふさわしいものでした。
取り上げたのは僕が最も指揮したいと願っていた山崎佳代子さん作詩・松下耕さん作曲の混声合唱とオーケストラのための『水脈速み』。作詩者は40年近くかつてのユーゴスラビアの首都、現在はセルビア共和国の首都ベオグラードにお住まいで、ユーゴスラビアの解体を目の当たりにし、それに伴う壮絶な民族紛争の中を生き、西側の経済制裁、NATO軍の空爆を実際に経験されました。この作品はそんな経験が色濃く反映された内容で、争いの悲惨さ、無益さ、虚しさと、決して甘い言葉ではない切なる平和への願いが綴られています。僕の大好きな作曲家である松下耕さんは山崎さんのテキストを音楽に昇華させ、素晴らしい合唱曲に仕上げられました。取り上げられる機会も作品の数も少ない日本人作曲家の管弦楽伴奏による合唱曲を指揮できるという大きな喜びと、今こそ取り上げなければならない作品だという強い使命感をもって、僕は今回取り組みました。
本番は素晴らしいという一言では言い表せないほど良い演奏でした。しかし、僕は今回の演奏が悪いものになる気がしませんでした。
思い返せば、
昨年11月末の1回目の練習で翌日本番にかけてもいいほどの高い水準の合唱ができ上がっていました。そこからさらに音楽を深められたのです。毎回の練習が本当に充実していて、合唱する喜びを大いに感じられました。
そうして迎えた
1月21日のオーケストラとの合同練習。愛知室内オーケストラとは度々ご一緒していますが、練習から本番まで常に真摯に音楽と向かい合い、一音一音丁寧に演奏される姿を拝見して心打たれます。今回も合唱団と僕の思いに寄り添って、一緒に音楽作りをして下さいました。
Photos by 愛知室内オーケストラ
本番では全ての出演者の思いが一点に集まり、緊張感が終始途切れることはありませんでした。演奏は真に迫り、僕の心身は常に熱いもので満たされました。ソリストたちも緊張をはねのけ、重要な独唱を立派に務めました。指揮者としてこれほどの幸せはありません。
アンコールで歌われた『そのひとがうたうとき』も松下さんの作曲。谷川俊太郎さんの詩をテキストとしていますが、まさにわれらが歌う理由が綴られています。『水脈速み』とは違った魅力があり、演奏する者も聴く者も高揚させるこの曲の構成もあって、感動が押し寄せてきました。
なんと『水脈速み』と『そのひとがうたうとき』を作曲された松下耕さんが本番に立ち会って下さいました。終演後にはステージにお上がり頂き、僕とのトークという形で貴重なお話を伺うことができました。お帰りの際には自身のツイッターで今回の演奏を以下のように評して下さいました。「名古屋大学グリーンハーモニーと愛知室内オーケストラによる『水脈速み』圧巻の演奏。アンコール『そのひとがうたうとき』管弦楽版とともに、卓抜した表現力で至福の時間を作り上げてくださった。感謝」。演奏者としてこれ以上のうれしいお言葉はありません。お忙しい中ご来場下さり、また素晴らしい作品を生み出して下さり、心から感謝申し上げます。
20世紀の終わりから21世紀の始まりにかけてはユーゴスラビアの解体とそれに伴う悲惨な民族紛争だけでなく、東欧の民主化と社会主義陣営の崩壊、湾岸戦争、アメリカ同時多発テロなど、歴史を大きく動かした出来事が続きました。僕はそれらをテレビを通して目の当たりにしました。もちろん当事者が受けられた苦しみは測り知れませんが、僕自身の人生観、音楽家としてのあり方に大きな影響を与えました。今の自分を投影できる作品と出会えたこと、実際にそれを指揮する機会を得、素晴らしい合唱とオーケストラとともに演奏し、音楽を通して今の思いを訴えることができたのは本当に幸せ。
また、名古屋大学グリーンハーモニーにとっても大きな節目でしたが、僕にとっても大学を卒業してからちょうど20年という節目。そのような時にこんなに素晴らしい演奏会を持てたことは大きな喜びであり、今後の音楽人生の大きな財産となりました。
名古屋大学グリーンハーモニーを創立された先輩方、その思いを脈々と受け継がれた代々の先輩方、その思いをしっかりと受け止め、第50回記念定期演奏会という大事業を成し遂げ、その思いを次へと伝えようとしている現役生たち、今回ご参加頂いて現役生たちを暖かく見守られたOVの方々、広がりある見事なサウンドで記念のステージを飾って下さった愛知室内オーケストラ、この演奏会を裏から支えて下さった関係者の方々に心からの感謝を申し上げます。
来年度もトレーナーとして、客演指揮者として名古屋大学グリーンハーモニーに関わらせて頂きます。次へ向けて新たな歴史を築きます。ご期待下さい!