「5/R Hall & Gallery 音楽ホール開館5周年記念プレミアムシリーズPart.5」
演奏会終了分
いのちのうた
〜アリとキリギリスの物語〜
2016年3月27日(日) 無事終了
5/R Hall & Gallery 音楽ホール
主催
5/R Hall & Gallery 音楽ホール
マネジメント ミュージック・ステーション
企画
Dream Music Factory
午前の部
オペレッタ『いのちのうた〜アリとキリギリスの物語〜』(世界初演)
午後の部
豊田かおり&橋本慧デュオ・コンサート
「嘉月の空にアイヲウタウ」
S.ドナウディ 陽は昇る!君は何をしているの? [豊田]
R.アーン クロリスに [豊田]
F.P.トスティ かわいい口元 [橋本]
E.d.クルティス わすれな草 [橋本]
S.カルディッロ カタリ・カタリ(つれない心) [橋本]
V.モンティ チャルダッシュ [ヴァイオリン独奏]
F.ショパン ポロネーズ第6番変イ長調 作品53 [ピアノ独奏]
F.ショパン 練習曲 作品10第3番(歌付き) [豊田]
村松崇継 いのちの歌 [豊田]
オペレッタ『いのちのうた〜アリとキリギリスの物語〜』(世界初演)
原案 二子渉
台本 守屋文香
作曲 なかむらたかし
ソプラノ:豊田かおり
テノール:橋本慧
ピアノ:松田祐輔
ヴァイオリン:波馬朝加
スタッフ
衣装協力:加藤愛
大道具協力:SAW.S 佐脇真治
小道具:Dream Music Factory
振付:山下彩華
音響・照明:淺野愛
僕が監修を務めている
CoCoRoniココロニのメンバーでもあるソプラノ歌手の豊田かおりさんとテノール歌手の橋本慧さんの二人から、子供向けの1幕もののオペレッタの作曲の依頼を頂いたのは昨年の2月だったと記憶しています。二人は
昨年1月に初演されたミュージカル『櫻堂ものがたり』を観劇して、僕に作曲を依頼することを決めたと言っていました。その後、
5/R Hall & Gallery 音楽ホールのゼネラル・マネージャーの伊藤直樹氏にこの話をしたところ、その開館5周年記念のプレミアムシリーズのトリで初演されることが決まったのがちょうど1年前。原案のプロットが上がって、台本の第2稿が出来上がるまでは割合すんなりと進みました。
が、しかし、僕の切羽詰まったスケジュールでこのオペレッタの制作が押せ押せになってしまい、僕自身がこの台本としっかり向かい合ったのは正月休みが明けてから、作曲を開始したのは1月の半ばからでした。それも、台本や歌詞に注文を出して何度も書き直してもらったので、全曲が出来上がったのは初演の10日前。豊田さんも橋本さんもヤキモキしたことでしょう。しかし、こういったやり取りは良い作品を作る上で非常に大事。比べるのはおこがましいですが、西洋音楽史に輝かしい功績を残した作曲家たちもオペラを作る際、台本作者と激しいやり取りをして、名作と言われる作品をこの世に残したのです。出来上がりはギリギリになってしまいましたが、遠慮せず、妥協せずに突き詰めていったからこそ、上演時間45分の1幕でありながら、非常に濃密なオペレッタ『いのちのうた〜アリとキリギリスの物語〜』が出来上がりました。
限られた時間でしたが、初演を成功させるためにそれぞれのスタッフがそれぞれの能力を発揮し、素晴らしい舞台を作り上げてくれました。これも豊田かおりさんと橋本慧さんの燃えたぎる情熱があったからこそ。僕だけでなく、全員がそれを感じたからこそ、なんとかして良い舞台を作ろうと熱くなれたと思います。この初演の成功は連日連夜準備に明け暮れ、それでも溌剌とパフォーマンスを繰り広げた二人の思いと努力の結晶です。
Photo by 5/R Hall & Gallery 音楽ホール
お陰様で午前・午後と合わせて180名ものお客様にご来場頂きました。このオペレッタは子供向けに制作されたので、午前の部は曲目をオペレッタのみにして0歳児から入場可にしました。およそ半数が小学生以下でしたが、すごく静かにしてくれました。僕はこれまでにいくつかの0歳児から入場可のコンサートに関わったり、聴いたりしていますが、これほど静かだったのは初めて。作品が良かったのかな(笑)。
一方で、たくさんの大人の方々から「良かった」「感動した」というお言葉を頂きました。この作品は有名なイソップ寓話『アリとキリギリス』が元になっています。夏に一所懸命働いて食べ物を蓄えて冬に備えたアリ。一方でキリギリスは働きもせず、バイオリンを弾いたり歌ったりして、冬に備えることなく過ごしました。そうして迎えた冬。キリギリスは食べ物を探しますが見つからず、アリに食べ物を分けてくれるよう頼みますが、アリはそれを拒否し、キリギリスは死んでしまうという物語。あるいは、アリはそんなキリギリスにも食べ物を分け与えて、心優しさを強調した物語に変えられたのもあります。今回はそれに一石を投じ、「本当にキリギリスのような生き方は悪いのか?」、「一所懸命働く意義とは?」という観点からこのオペレッタの物語は作られました。アリにはアリの、キリギリスにはキリギリスの生き方があり、それに誇りを持ち、信念を持って自分の人生を全うすることが大切。その中で家族の有難さ、命が受け継がれていくことが歌われます。僕は作曲しながら、閉塞感のある現代社会において先頭に立って生きている大人たちにも響くものがあると思っていました。こういったお言葉は本当にうれしかったです。
この初演はオペレッタ『いのちのうた〜アリとキリギリスの物語〜』のスタートです。上演を繰り返す度にパフォーマンスが洗練され、豊田さんと橋本さんのパフォーマーとしての成長とともに作品も成長していきます。是非とも歌い継いで、多くの人々に感動を与えてほしいと願います。
私事ですが、中村家は一家揃って午前の部を鑑賞しました。次女は生後5週目にしてコンサート・デビュー。しかも、お父さんの作品! 感慨深かった! 最後まですやすや寝ていてくれました(笑)。
あと1ヶ月で2歳になる長女は客席でコンサートを鑑賞するのはこれで4回目。集中してノリノリで観入ってくれました! 最初の10分間だけ(笑)。それからはモソモソと動き出して、床に寝転がったり…。しかし、これまでは寝ちゃったり、走り回ったりしていましたから、今回座席付近にいられたのは成長した証かな。