河内長野市教育委員会支援事業
2016年3月6日(日) 無事終了
ラブリーホール・大ホール
主催
公益財団法人 河内長野市文化振興財団
お問い合わせ
ラブリーホール0721−56−6100
指揮:寺岡清高
管弦楽:
大阪交響楽団
合唱:河内長野ラブリーホール合唱団
児童合唱:
清教学園中・高等学校合唱部、堺市少年少女合唱団・堺リーブズハーモニー
合唱指揮:
小玉晃、
中村貴志
テノール:
松原友(福音史家)
バリトン:
小玉晃(イエス)
ソプラノ:
古瀬まきを
アルト:福原寿美枝
バス:油井宏隆
J.S.バッハ マタイ受難曲 BWV244(原語上演・字幕付)
J.S.バッハの作品、その中でも特に『マタイ受難曲』一筋縄ではいかない。ソルフェージュの難しさ、声楽的な難しさ、ドイツ語の多さ。一般的なアマチュア合唱団がこの大曲を歌うには多くの困難がつきまといます。
河内長野ラブリーホール合唱団の本番までの約11ヶ月間の練習も困難の連続でした。発声、音程、リズム、発音、曲への理解の全てができてパフォーマンスが成り立ちますが、それらが全て揃ってできることはなかなかありませんでしたね(笑)。
しかし、それでもめげずに団員の皆さんは曲と向かい合い、これまで以上に努力されました。われわれ指導陣も諦めずに根気強く指導にあたりました。本番では、所々キズはあったものの、良い所が多く、団員皆さんのご努力が実を結んだ熱演になったと思っています。終曲が終わって、お客様から暖かく盛大な拍手が沸き起こって、心から安心しました。河内長野ラブリーホール合唱団の皆さん、本当によくやりました!
『マタイ受難曲』では声楽のソリストも比重が大きい。その中で最も重要なのはイエスの最期を随所で物語っていくエヴァンゲリスト(福音史家)。この曲の主役と言ってもいいかもしれません。今回は僕が大きな信頼を置いている歌手の一人、松原友さんはエヴァンゲリストを含め、テノール・ソロの全てを歌いました。発音はもちろん、声のコントロールが素晴らしく、気聴く者をイエスの最期の物語に引き込みました。いつか彼の歌うエヴァンゲリストを聴きたいと思っていましたが、こうやって共演することができて、本当にうれしかった。
今回の合唱指揮者のお一人であり、イエスを歌われた小玉晃さんも本当に素晴らしかった。卓越した発声技術と発音、音楽性。僕がこの合唱指揮を引き受けたのは河内長野ラブリーホール合唱団で指揮が敬愛する寺岡清高さんだからだけでなく、小玉さんが指導し、イエスを歌うというのも大きな要因です。今回久しぶりにご一緒して、大きな刺激を受けました。
今や関西を代表するメッゾ・ソプラノ歌手となった福原寿美枝さん。彼女の声は豊かでありながら、包み込むような優しさがあります。そして、何よりも見事なコントロールによって自らの歌声を歌唱芸術に昇華しているのがすごいこと。要所で歌われるアルトのアリアで聴く者を『マタイ受難曲』の世界に引き込みました。
ソプラノ・ソロの古瀬まきをさんとは実はちょうど10年前にご一緒しています。もちろん当時から積極的で努力家でしたが、近年はメキメキと実力をつけ、活躍の場を広げています。彼女の歌声を聴くのは10年目に共演して以来。素晴らしいソプラノに成長しましたね。非常にうれしく思います。
シンフォニー・オーケストラにとって演奏頻度の高いヘンデルの『メサイア』以外のバロック音楽はレパートリーではありません。また、バッハの音楽は全てが精密に設計され、演奏するにあたっては最も神経を使う作曲家といってもいい。限られた練習時間できめ細やかなパフォーマンスにまで仕上げ、3時間にも渡る長時間、歌い手たちを支え、イエスの最期の物語に彩りを添えた大阪交響楽団に大きな拍手を送ります。特にそれぞれの独奏が卓越した技術を発揮していました。
河内長野ラブリーホール合唱団では2009年の『第九』、2011年の『メサイア』、2014年のシューベルト『ミサ曲第6番』とブルックナー『テ・デウム』、同年の『第九』、2015年の「オペラ夢舞台」で合唱指揮をさせて頂きました。どれも僕の思い出に残る本番。そして、この演奏会でバッハの『マタイ受難曲』に初めて取り組ませて頂きました。
僕にとってこの曲は『第九』と並んで最も大切なもの。だからこそ思い入れが強いですし、今回の合唱指揮をお引き受けするには相当な覚悟がいりました。初めてこの大曲中の大曲に取り組んでみて、思うことはたくさんあります。それは一言で表すことはできません。残りの(音楽家としての)人生で明確化していければと思っています。
とにもかくにも、貴重な機会を与えて下さった河内長野ラブリーホール合唱団に心から御礼申し上げます。今回も忘れえぬ本番となりました。
また皆さんとご一緒できることを楽しみにしています!
Photo by 大阪交響楽団