今日は久しぶりに神戸へ。11月28日に本番を迎える『魔笛』(W.A.モーツァルト作曲)の稽古に初めて参加しました。中村はワクワクしています。ドイツ語の歌劇を指揮するのは今回が初めて。得意な言語の作品に接するのが自分の能力をいちばん発揮できます。
この公演はキャスティングが興味深い。男声陣はバリバリ活躍されている歌手で固め、女声陣は新進歌手が中心。プロデュースはいつもお世話になっている伊藤正さん(パパゲーノで出演されます)ですので大丈夫でしょうが、今日は未知数な女声陣だけで稽古をさせて頂きました。
残念ながら、ダーメ(侍女)TとUがお休み。ということでダーメはなし。しかし、これがかえって良かった。夜の女王、パミーナ、クナーベ(童子)、パパゲーナの稽古で時間いっぱい使いました(僕は3時間15分休憩なし)。
皆、予想以上にドイツ語の発音が良かったです(笑)。それでも、細かく要求しました。僕のドイツ語の指導を受けられた方はおわかりかと思いますが、本当に細かいです(笑)。子音の入れ方、立て方、収め方、長母音、短母音、フレーズの歌い方などなど。
そこから表現するということに踏み込みました。自分はこの劇においてどんな役柄で、どんな役割を与えられたのか。どんな状況で、どんな心理で歌っているのか。まずはそれぞれが自分の中に確固たるキャラクターを作ることですね。そして、そのキャラクターがどんな声で、どんな音楽を奏でるのかを探る。
女声陣は未熟だけど、未知数。この『魔笛』の公演でどのような変化を遂げるか楽しみです。僕も未熟で未知数ですがね(笑)。
『魔笛』はモーツァルトの最晩年の作品であり、モーツァルトの最後の劇音楽です。9月11日に指揮した『レクイエム』と同時期の作品(正確に言うと、『魔笛』のために『レクイエム』の作曲を中断したのでした)。しかし、その作風も作品の世界観もまったく違います。間を置かずにこうやって、モーツァルトの最晩年の代表作にして彼の名曲を指揮できるのは非常にうれしいことです。
この1年でみてみますと、昨年11月には『コジ・ファン・トゥッテ』指揮し、『ドン・ジョヴァンニ』の合唱指揮を担当し、今年の5月に『ディヴェルティメント』と『交響曲第33番』を指揮しました。古典派音楽だけを専門にやっている音楽家でない者が1年にこれだけモーツァルトをできるのは稀ではないでしょうか。僕のようなフリーの音楽家の仕事は図ることができないので、ありがたい限りです。
モーツァルトの作品は音楽家の成長の度合いを知るのに最も適しています。11月28日の『魔笛』で僕のこの1年の成長をみせることができたらと思います。