しんみりした話はキャラに合わないからあんまりしたくないんだけど、
この事は忘れちゃいけないって思うから書いときます。
興味がない人は読み飛ばすのだ。長いし。コロコロ流れが変わるし。
なお今回は「ワタシ」じゃなく「オレ」でいかせてもらいます。
時々ゲーセンでクイズゲームで遊んでる。
インターネットを利用して全国のプレイヤーと対戦できる、通称「QMA」ってゲーム。
16人でスタートし、徐々に人数を減らして優勝者を決定するシステム。
優勝したり良い成績を残せば経験値が上がり、階級がアップする。
勝っても海外旅行や賞金100万円みたいな賞品はない。
「あんた強いね」その名誉だけ。だから気楽に楽しめる。
でもこの間の優勝は、その名誉以上のものを手に入れた気がする。
今はパズル一筋の人間だが、中学生の頃はパズルよりクイズの方に燃えていた。
クイズ王決定戦の番組がブームとなったあの時代だ。
オレは仲間4・5人でよくクイズ大会をして遊んでいた。
全員が20問程度の問題を持ち寄り、早押しクイズで競う。
みんなフツーの中学生。自作の問題なんて低レベルなものばっかりだ。
でもそれで十分だった。面白かった。
クイズ仲間にFという奴がいた。Fの作る問題はとにかく良かった。
あらゆるジャンルで、易しいものから難しいものまでバランス良く出題した。
問題文も完璧だった。わかりやすく、すんなり耳に入る綺麗な問題文だ。
クイズの作成能力はオレよりもずっと上だったと思う。
時は過ぎ、大学3年の成人式の時だったと思う。
久々に会った別な友人から、Fが数年前に亡くなったことを聞かされた。
運転中の心臓発作が原因らしい。
Fとは中学の時は同じクラスにならなかったので、クイズ大会以外で
遊んだことはあまり無かった。高校も違う所に行った。
だから中学卒業以来、連絡はまったく取っていなかった。
だからなのか、Fの死を聞いた時、オレは「はあ、そうか...」としか思わなかった。
この間だ。例のクイズゲームをしていて、決勝戦まで残った。
実力伯仲、まさに接戦だった。誰が優勝してもおかしくない状況での最終問題。
正確な問題文は忘れたが、こんな問題だった。
「眼鏡のレンズの度の強さを表す単位は?」
最初に見たときは「こんなのわかんねーよ」と思ったが、
次の瞬間、中学生の時の記憶が走馬灯のように蘇った。
これは、Fがクイズ大会で出題した問題だ。
これほどのクオリティーの問題、あのメンバーで作れたのはFしかいない。
その問題を読み上げた当時のFの姿が記憶の奥底から脳裏にはっきり映った。
間違いない。あの問題だ。
シンプルな問題文。知ってそうで知らない事。
答えを聞いて「これは覚えておくとカッコイイな」と思わせられる。
当時は誰も答えられなかったが、それでも「この問題は凄い!」と
心の底から思い、Fの才能に衝撃を受けた問題だ。
もちろん、答えは、覚えている。
丁寧に解答を入力。最終問題はオレだけ正解し、優勝を果たした。
たかがクイズゲームだが、あの日の優勝は一味違う勝利だった。
ゲームの後、成人式の日のオレを思い出した。
「Fは死んだ、はあ、そうか...」それしか思わなかったのかよ!
改めて大事な友を亡くしたことに気付かされた。
今はパズル一本で食っている。
それは自分にセンスがあったから食えてるのだが、それだけじゃない。
色んな人の影響を受けた。その人たちがセンスを引き出してくれたからだ。
パズル誌「パズラー」を紹介してくれた小学校の先生、
その「パズラー」で活躍していたパズル作家の方々、他にもまだいる。
その人たちからの影響はちゃんと実感していたが、
Fの影響は今まで考えたことがなかった。
パズルとクイズ、ジャンルは違えどFの影響は大きい。
気が付いた。「天才クイズ作家・F」あっての「パズル作家・今井洋輔」だ。
今はもう、直接に感謝を伝えられないのが悔やまれる。
生きてたらたぶん、こっ恥ずかしくて面と向かっては言えないんだろうけど
ありがとう。