もはや前世紀の遺物であるようなおっさんが、状況に対してものを言うような役割はもう回ってこないのだろうと思っていたのだが、ちょびっとコメントした方がいいような気がしたのである。
昨今の日本共産党に関してである。
私自身、日本共産党がらみでは、いくら思い出しても不愉快な記憶しか出てこないし、けっこうな目にもあわされている。
「自分もえらい目にあわされた」というような話は、まあなにぶん、数十年分の歴史のある話なので、汲めども尽きぬというか、まあそんな感じだろう。
だがしかし、この数か月で見られた日本共産党の大きな方針転換(おそらく内部的には10年ほどの期間がかけられて準備されたものだのだろうと思うが)は、マジメに受け取る必要のあるものなのではないかと思うのだ。
主要打撃方針から人民戦線方針への転換というのは、「ファシズム期にはこうするしかない」というのは昔からの教科書通りではあるが、組織の在り方を根底から変えるものである。日本共産党を「昔から知っている」人は、あの組織にとってそれがどれだけ大きな事かがわかるはずだ。内部の事情は全く見えないが、大きな権力構造の転換があったと考えるべきであろう。
「過去をなかった事にするのか」とか「それなら○○の団体についても受け入れるのか」とか、そういう反論があるだろう。
しかし、新左翼の業界的には、昔にメチャクチャ対立していたところが同席していたり、話してみたらめっちゃイイ奴やったりとかをずっと経験してきているではないか。
受け入れられへんところは、現役で受け入れられへんから受け入れへん、のである。
日本共産党の側に注文をつけると(ここでこうやって注文つけてどうなるという話ではあるが。誰か共産党の人に伝言しといて下さい。)、外から見て、共産党が大きな変化を遂げたのは明らかだが、なにがどう変わったのか、どのような路線転換をしたのかという事を大衆的に、納得できる形で、説明すべきだろう。
「共産党にえらい目にあわされた」という人は、おそらく共産党の人が考えるよりも世の中にはずっと多い。長年、共産党以外の左翼の運動は、共産党を追い出された人が人材供給してきたという事実を思い出すべきだろう。
私の世代では、「共産党となにか一緒にやるときは、いつ、どのような形で裏切られるのか、利用されるのかという事を、前提として考えておかなければならない」というのを教訓として持っている。これは「共産党アレルギー」とかそんな話ではないだろう。日本共産党が運動として生産してきた事である。
そしてこれは、一部マイナー極左に限るような話でもない。
でね。
二十歳そこそこの諸君が活躍して、我々がやってきた事を軽々と乗り越えていっているような状況で、「40年前にこんな事件がありまして」みたいな話から始まる対立構造を継続しようという方が無茶なのではないかと思うのだ。
そしてまた、「現在も続いている問題」がこの流れに押し流されて消滅してしまうのを防ぐ、あるいは過去と同じ否定的な事柄が生じるのを防ぐのは、「過去を歴史にしていく」という過程を経るしかないのではないかと思うのだ。

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