桃園ラブの夢はダンサー
蒼乃美希の夢はモデル
山吹祈里の夢は獣医
・・・イースの夢は人々に笑顔を与えること
夢原のぞみの夢は教師
夏木りんの夢はアクセサリーデザイナー
春日野うららの夢は女優
秋元こまちの夢は小説家
水無月かれんの夢は女医
・・・ダークドリームは?
鏡の国
椅子に腰掛けるダークドリームとイース
すっかりリラックスモードだ
大仰な荷物を見つけながら、イースは呟く
「で、あなたの夢は見つかったのね。」
「うん!・・・でもどうしてわかったの?」
ダークドリームは狐につままれたような顔だ
「だって・・・『これ』みれば分かるでしょうに」
イースは半ば呆れ顔で苦笑い
「そうか!てへへ!」
ダークドリームは舌を出して照れ笑い
さらに
ガタンと勢い良く立ち上がり、胸に手を沿え、演劇口調で語り始めた
「私の夢は、武器職人になる事!この世界から悲しみを無くす武器を作る事!
そして!親友イース!!」
ビシッと腕を伸ばし、指を差す
「あなたに!『スターライトフルーレ』を超える究極の武器を作ってあげる事よっ!」
『ばばーん』という効果音が背後から出てきそうな決め台詞
だが、イースは苦笑いを浮かべるだけ
なぜならば、この口上は毎回手紙に書いてあるからだ
「神器『スターライトフルーレ』を超える武器・・・か」
「そうだよ!あれを超える武器を作らなきゃ!」
ーーーーーーーーー神器『スターライトフルーレ』
真のプリキュアのみが持つことを許された究極の専用武器
武器職人の業界では『スターライトフルーレを超えろ!』が合言葉になっている
彼女も例外ではなかった
「あなた・・・本当にいいの?」
イースが尋ねる
「何が?」
「だって、武器職人の夢って・・・私のあれが発端でしょ?」
「うん」
「それで・・・いいのかなって・・・」
「いいんだよ!」
話は3週間前
イースとダークドリームはカロン鉱山で顔を合わせていた
イースは闇の力の解放
ダークドリームは鏡の原材料の発掘
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!!
イースの体から解き放たれる闇の闘気
それが、カロン鉱山を揺らし、鉱物を砕く
落ちた鉱物を手馴れた手つきでひょいひょいっと籠に入れていくダークドリーム
「・・・ふう。」
闘気の開放を終え、ため息をつくイース
一時の安堵だ
「お疲れ様っ!」
ダークドリームが安心しきったイースに対し、缶ジュースを投げる
「ありがとう」
その弾道を見ること無く、イースは左手でジュースをキャッチした
「ひゅううう」
見事なキャッチに思わずダークドリームは口笛を吹いた
「なに?」
プシュッ
スポーツドリンクの缶を開けながらイースがこちらを向いて尋ねた
「戦士として全く衰えてなさそうでね」
「まあね・・・衰える暇なんて無いわ・・・
まだまだラビリンスは復興に時間がかかるし、メビウスが支配していた他の世界では混乱も残っている・・・
この間行った砂漠の国もそう・・・」
彼女は今でも一人戦い続けている
「イース・・・」
「けど、後悔とかそういうのは無いわ!世界中の人たちに笑顔をもたらすのが・・・私の夢だから!」
そう言うと、イースは優しく微笑んだ
「イース!」
胸が熱くなった
自分と同じ位の年齢と体で、彼女は戦い続けているのだ
それが自分の夢なのだともはっきりと言ってのけた
ダークドリームは思った
イースの力になってあげたい・・・
私に彼女の夢の手助けが出来れば・・・
ゴクゴクゴクゴク・・・
「ふう・・・ごちそうさま」
一気に飲み干したイースは空き缶をダークドリームに差し出した
「はっ・・・ええ・・・」
考え事をしていたダークドリームは我に返った
差し出された右手
ほんのわずかだが、闇の黒いオーラが燻っている
先ほど開放したばかりなのに・・・
それと同時に缶を持つ手を見て、ダークドリームはある事に気付いた
「ねえ、イース?」
「なに?」
「あなたって、自分専用の武器ってあるの?」
「私専用の武器?」
イースの頭の中に真っ先に浮かんだのは無論『パッションハープ』である
だが、あれはあくまでも『キュアパッション』専用武器であり、『イース』専用ではない
ぐっと言葉を飲み込んでから、質問にこう答えた
「・・・いいえ。ないわ。いつも素手よ」
その答えを聞いて、ダークドリームの表情が一気に華やいだ
右手の缶を奪い、籠にシュートし手を握ってきた
そして
「分かった!私が作るよ!イース専用の武器を!!」
「わ・・・私専用の武器を・・・あなたが!?」
「うん!」
「いや・・・だって・・・あなた武器職人じゃないでしょ?」
「今からなる!」
「今からって・・・!?」
「そうだよ!決まったよ、私の夢!」
「夢って・・・あなたねえ・・・武器職人というのがどれ程大変なのか知っているの?」
明らかに先を見据えていないダークドリームの夢に対し、イースは懐疑的だ
「知らないよ!けど決めたの!」
「だから、現実を見なさいって!」
「大丈夫だよ!なんとかなるなるー!」
「・・・・・・」
イースは言葉を失った
どこまでいってもポジティブなダークドリームに
そういえば・・・自分も『全ての世界に笑顔を与えたい』って夢を語ったらウエスターとサウラーに止められたっけ
『出来ない事を言うんじゃない!』と
そんな失礼なふたりに言い返してやった
『出来ないかどうかはやってから判断するわ!』と
なあんだ・・・この子も自分と同じなのかと
「なんとかなるなるー・・・か。」
イースはそう呟くとクスリと笑った
「友達が・・・ドリームが教えてくれたんだよ!」
「夢を追いかける事の大切さは、私も大切な友達から教えてもらったわ」
「ふたりで夢を追いかけようね」
「精一杯・・・ね!」
その日からダークドリームは一人山小屋を立て、そこで刀鍛冶をするようになった
有事の際には、守護者として鏡の国を護るようにだけ命令され、一冊の本を餞別として貰った
『星皇ノ書〜魔剣ノ極意』
本の名前である
夕焼け小焼けで小屋の外
「・・・・あいつら、俺の事、完全に忘れてるロプ。」

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