「フレッシュプリキュア 第44話 ウエスター最後の挑戦(前編)その3 女王ヒルダ」
フレッシュプリキュアSS ラブの大冒険
ウエスターとキュアパッションは目の前の扉を開いた
それは、巨大な空洞の部屋だった
「ここは…」
何もない部屋に拍子抜けしたパッション
「今更、罠があるような場所など選ばん…ここは戦艦の動力室、魔鉱炉
おまえ達の破邪攻撃でその力は失われたがな」
ウエスターは部屋の中心で構える
「動力室のここなら…俺達が全力で戦っても、影響はない」
「全力……ウエスター、あなたパワーが押さえられていることはないか?」
「…フッ、破邪攻撃の事か…確かに少々の影響を感じるが…俺ほどの戦闘者になれば…」
そう言うとウエスターは、全身から凄まじいばかりの闘気を放った
…空気が震える
どうなら何の影響も無いようだ
「良かった…」
「!?」
「グランドクローバーアポカリプスのせいで、あなたが全力を出せなかったら…なんだか悪いから…」
「…泣かせる事を言う。裏切り者のくせに…」
その時、ふたりは微笑んでいた
その表情が、次の瞬間変わった
「いくぞっ!」
「ええ!」
向かい合うふたりが静かに闘気を高める
ウエスターの黒い闘気
キュアパッションの赤い闘気が、がらんどうの部屋を充満していく
「「うおおおっ!!」」
ふたりは同時に飛び出した
ドオオン!
ファーストコンタクトは、拳と拳の激突!!
デウスエクスマキーネ後方左翼
キュアパインは戸惑っていた
「パッションとウエスターの気配が消えた…!?」
「…はじまりましたね。ウエスター様と、イースの一騎打ちが…」
ヒルダは努めて冷静に呟く
「一騎打ち!?」
ヒルダは言う
もう、ウエスター様のお体はいかなる回復も受け付けない…朽ちていくだけの魔獣の体
その最後の命を、生涯の宿敵と認めたプリキュア、そして因縁の相手であるイースとの…
正々堂々の勝負に賭ける事…
それこそ、ウエスター様の望みであると
それは1時間前
ウエスターは潜伏する滝壺の中で親衛隊に思いを告げた
「俺は最後の戦う相手を…イースと決めた!
もはやメビウスの為に戦う気にはなれん
かと言って今更プリキュアの味方も出来ん
俺は…やつらの大切な者を…桃園あゆみを奪ってしまった男だ」
ウエスターは桃園あゆみの命を奪ってしまった
正しくは彼女を爆発に巻き込んでしまったので、殺意があったわけではないのだが…
「俺のとるべき道は一つしかない!
最も俺の心を沸かせてくれる者と戦って、生きた証を見せる事だ!その相手は…メビウスではない!」
ウエスターの考えに同調するシドとジークフリート
しかし、ヒルダは違った
女王ヒルダだけは…
現在、後方左翼
「それじゃあ…あなたたちはウエスターに最後の望みを叶えさせるために捨て石になろうと…シドも…ジークフリートも…」
愕然とするキュアパイン
そして
「ヒルダ…やめましょう!私達は戦うべきじゃないわ」
「やめる…?」
「そうよ!あなた達のウエスターを想う気持ち…それは私達が仲間を思う気持ちと変わらないわ!
たとえ敵でも…そんな相手を倒す事なんてできないわ!」
ヒルダは表情を一切変えずにただ、聞く
「お願いヒルダ!本当にあなたたちにお互いを想いやる心があるなら…今こそ戦いをやめるべきよ!
私達も出来る限り協力するわ!だから…!」
パインはヒルダに丸腰で近づき、説得する
「……キュアパイン。あなたがそういう人で良かった…」
「ヒルダ…」
自分の想いを理解してくれて、安堵の表情を浮かべるキュアパイン
だが!
ヒルダの想いは違った!
「……私の嫌いな…虫酸の走る良い子ちゃんで良かった…!」
「!!!」
「おかげで躊躇い無く殺せます!!」
ヒルダはクワッと大きく目を開いた
「ニードルサウザンド!!」
ヒルダの全身から無数の閃光の針が放たれた
「ああああっ!」
遥か後方へ吹っ飛ぶキュアパイン
全身の皮膚が焦げ付く
「アハハハハッ!お節介の報いですよ、キュアパイン!
私は最初から『捨て石』になんかなるつもりは無い!
むしろ、ウエスター様を救うつもりでいるのです!」「…!?」
「ウエスター様はこのままでは死ぬ…それは、誰にも止められない
だが、メビウス様なら話は別です!メビウス様の超魔力ならば、ウエスター様を救うことができるかもしれない!
私がすべての敵を倒し、その上でメビウス様に懇願します!
ウエスター様を救ってほしいと!」
「そ…それは…あなただけの…」
バインはひざを突きながら立ち上がろうとする
「そう…独断です
ウエスター様はきっとお怒りになるでしょう。
でも、私にとってはウエスター様のご存命こそが最大の望み…
あの方の命だけは守りたい…
たとえこの命にかえても!!」
「!!」
バインは気付いた
ヒルダの心の奥底にある感情を…
「…私に同情してくれるのなら…一瞬で死んでください
お優しいキュアパインさん…!」
(くる!)
「ニードルサウザンド!!」
カッ!!
再びヒルダの全身が輝いた
襲い来る無数の閃光
たが、キュアパインは間一髪で、柱の陰に逃げ込んだヒルダが笑う
「まるでネズミですね!素早さだけはそれなりのものです
しかしあなた程度にこれ以上時間をかけらません」
そして、ヒルダは…
ドレスの奥に隠していた両腕を表に晒した

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