ショック・・・痛恨の極みである。
俺の積み上げてきた物がこうも簡単に崩れ去ろうとは・・・
この3ヵ月ぐらいの間、俺は暇を見つけてはドラムの練習に勤しんでいた。そしてそれなりの手応えを得ていた。
「スティックが羽のように軽い、これならどんなスピーディーなプレイにも対応できる。」
俺はその日も自信と確信を持ってキットに向かった。
いつもと違うのは、スタジオの中には俺だけでは無く、全ての楽器隊が揃っている。
普段は、する必要の無い4カウントを入れ、曲をスタートさせた。
うぅ・・・体中の血が逆流するような感覚、何て気持ち良いんだ!もう嬉ション垂れ流し。
・・・あれ・・・おかしい・・・何故なんだ?皆、何故演奏を止める?
そこでtakeshiが一言
「暴走すんなよ。」
よく意味がわからない。
そしてkeijiが口を開く
「粗過ぎる」
荒々しいプレイということか。微妙な表現ではあるが「弱々しい」とか言われるよりは百倍ましだ。気を取り直して、プレイを再開する。
・・・おかしい、昨日までは、羽のように軽かったスティックが今は鉛のように重い・・・いかん、意識がもうろうとしてきた・・・くっ、バカな・・・こんな・・・んなはずじゃあ・・・遠退く意識の中で、足だけが異常な高速痙攣を続けている。
ーーーーー糸冬了ーーーーー
俺のメタルドラムデビューはわずか5分足らずで幕を閉じた。
受け入れがたい現実。俺の今までの人生は何だったんだろうか・・・全てを失ってしまったかの様な喪失感。
「ちくしょう・・・・・・ちくしょおおおおおお!!」
セルともアナゴさんともつかない声が辺りに響き渡る。
やはり完全体ではなかったのか、完全体にさえなれば・・・・いや違う、俺はセルでも無ければ、ましてやアナゴさんでも無い。落ち着け俺。
冷静に考えて敗因を導き出すんだ。キムチ鍋をつつきながらゆっくり考えるか、

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