こないだ小林よしのり著「ゴーマニズム宣言第6巻」をゴミ捨て場で拾った。これも何かの縁だな。どうも俺のブログは小林よしのりに傾倒した右翼青年の猿真似のように思われてるフシがあるので、ここらでハッキリ言っておこう。
影響を受けたのは確かだが、盲信してしまう信者では無い。ちゃんと重箱の隅をつつきながら読んでるんだよ。いくつか例をあげよう。
「いわゆるA級戦犯」では東條英機が弁護士に「天皇陛下の命令に背いて開戦したと法廷で嘘の証言をして下さい」と頼まれ、泣いて悔しがるように描かれている。これは映画「プライド」でも同じ描かれ方だったが、東條由布子さんは著書の中で映画の感想を聞かれ、「あの部分は間違っています。」と否定している。まあ、これは録音が有るわけでも無く、解釈の別れる余地はある。しかし見逃せ無い決定的な間違いもある。
「戦争論3」ではパールハーバー(日本時間1941年12月8日太平洋戦争開戦の日)の前に、日米は戦争状態にあった事の象徴として、(開戦前に米軍は)「義勇兵の名目で米空軍精鋭パイロット、フライングタイガースがビルマで日本軍機と戦った。」と描かれている。「いわゆるA級戦犯」の中にも多少表現が違うが、ほぼ同じ記述がある。
まず、当時米空軍は存在せず陸軍航空隊だし、フライングタイガース(アメリカ人パイロット、整備員からなる中国国民党政府側の傭兵部隊)の隊員は、陸軍、海軍、海兵隊の混成だ。それに陸軍はこの部隊に否定的で人員の提供を渋っている。そのためパイロット110名の内、戦闘機部隊経験者はわずか17名、残りは爆撃機パイロットと実戦経験の無い訓練終了者だった。少なくとも精鋭では無い。それが証拠に現地に届いた戦闘機99機(100機提供したが、1機は輸送中に海に落下)の内20機とパイロット3名を訓練中の事故で失っている。一番の問題はフライングタイガースの初めての戦闘は1941年12月20日なのだ。とっくに日米は開戦している。確かに同年8月3日に訓練飛行が始まっているから戦争準備があったのは間違い無い。しかし日本軍を刺激するのを恐れ、あくまで訓練のみで作戦行動は厳禁とされていた。では、開戦前から戦っていた精鋭パイロットと言う間違いはどこから来てるのか?これは、ジョン ウェイン主演の映画「フライング タイ
ガース」からだと思って良い。この中で、まさにイメージ通りの描かれ方をされてるのだが、1942年戦争真っ只中で制作されたのと、実際の映像が使われてる事もあり、日米問わず大きな誤解の原因になっている。小林氏がこれを見たかは知らないがマンガに出てくるのはこのイメージだ。しかし、これでは“パールハーバー以前より日米は戦争状態”の論拠が失われかねない。
俺が知ってる事だけでも、これだけあるんだ。もっと微妙な歴史解釈の相違など山ほどあるはずだ。他にも、戦場写真の解釈とか疑問な所はけっこう有るが、きりが無いからやめとく。だいたい、「どうだ!俺の方が詳しい!偉いだろ!」と言いたい訳じゃ無い。重箱の隅はつつくが、揚げ足はとらない。ただ、ここは肯定、ここは否定、ここは疑問だから保留。と言う読み方をしてるだけだ。俺はどんな物もそうやって読む。何にしても、そういう読み方が出来ないヤツが多いってのは問題だ。日本人は無条件で活字とテレビを信じてしまうからな。テレビ、新書、週刊誌、マンガ、ネット、を聖書にして「書いてあったから、テレビで言ってたから」なんて言って盲信してるヤツは情報の読み方が劣っているとしか思え無い。
重箱の隅をつつく、別に悪い事じゃない。これは安易な聖書を作ら無い為の有効な手段なんだ。

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