裏(?)トランスフォーマー

SKIP BATTIN / SKIP BATTIN '72 SIGNPOST
「これは“裏トランスフォーマー”ですよ」
そんな言葉を聴いてほうっておくほど俺はマヌケじゃない。
バイトを早めに切り抜け、一目散にあの店へ。で、数曲 試聴しただけで即ゲット・イット・オン! それからというもののこいつは俺の愛聴盤となっている。
何の話か。いや、スキップ・バッティンのソロ・アルバムの話である。スキップ・バッティンは元バーズのメンバー。みての通りの髭面で、まさかこんな今にもワイルドサイドを歩きだしそうなナンバーをやってるとは・・・。
しかも、本作の発売は72年夏、ルー・リードの『TRANSFORMER』よりも数ヶ月早いじゃねぇかい。なんだこのシンクロニシティーは。おそらく両者が好きであろうボブ・ディランの影響が時代の空気とともにこんな形であらわれたのではなかろうか。両者は声までそっくりである。まぁ、グリッターレコードというにはあまりにもフォーキーなアルバムではあるが、『CAPTAIN VIDEO』なんて、ルー・リードの未発表と言われて聴かされても信じちゃいそうである。
ところで“裏トランスフォーマー”と言われて思い出されるレコードがもう一枚ある。それこそが、かのキム・フォーリーの『INTERNATIONAL HEROES』である。これはキムに一瞬訪れたグラム期の傑作なのだ。
そう思うと、このスキップ・バッティンのアルバムはキムのソレにも雰囲気が似ている。いや、実はそれも当然で。なんと本作のクレジットにはこう書かれている・・・
All songs written by Kim Fowley and Skip Battin
えぇえええええええ! なるほど。しかも調べてみると、逆に『INTERNATIONAL HEROES』にはスキップ・バッティンが参加しているではありませんか!
ルーがトランスフォーマーする影にはデヴィッド・ボウイあり。そして、スキップ・バッティンの影には、裏ボウイであり裏ルー・リードであり、早すぎたマルコム・マクラレーンでもある男、キム・フォーリーがいたのね。
そもそもスキップ・バッティンはキムの63年のシングル、68年のアルバムにも参加しているばかりか、83年に出したアルバムにまでも参加しているので、両者はかなり密な関係であったのであろう。
まぁ、密な関係とは言ってもいわゆるホモ・セクシャルなソレはなさげである。そこが『TRANSFORMER』との違いかしら。
ともあれ、これかなりの名盤ですぜ。裏というよりむしろ表かも。退廃感もなけりゃあドラッグやホモセクシャルな要素もないし。しかし、そういった裏が表にもなりえた時代だったってのがまた面白いですね。

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