瑠璃光橋の上流は、桜並木のメインルートである。名古屋城から始まったこの堀川探索の散歩も辻栄橋−新堀橋−夫婦橋で終点である。
辻栄橋では毎年「黒川に清流を 名古屋友禅流し」というイベントが行われている。昨年のプログラムは、
日 時 平成17年3月26日午前10時から(雨天の場合27日に順延)
場 所 黒川辻栄橋付近
内 容 友禅流し、琴・尺八・和太鼓演奏など
主 催 北区民まちづくり推進協議会、ふるさと北文化に親しむ会、黒川ドリーム会、北・北いもの会
一昨年の催しでは、私の友人のソプラノ歌手河合しのぶさんが指導する「モーツァルト200合唱団」も参加し、黒川の川底で歌を披露している。
名古屋友禅の歴史は、尾張藩7代藩主宗春の頃(1730年代)に京都から友禅師が往来し、手描き友禅の手法が伝わった。宗春が8代将軍吉宗との確執から謹慎を命ぜられて以降、模様も派手な京風から渋い名古屋風へと変化し、この時期に名古屋の技術が確立した。明治になり、御用水の水を工場に引き込み、名古屋友禅の見事な染物が行われるようになった。その後用水の汚濁化とともに友禅流しは廃れたが、最近の堀川の浄化によって再び伝統技術として注目されるようになった。
辻栄橋から西へ行き、辻本通りを横切り2筋目を右折したところに浄土真宗の有隣寺がある。この寺の住職(平成8年に亡くなられた)であった祖父江省念氏は、「節談(ふしだん)説教」で全国に名を知られた。祖父江省念氏の業績には「親鸞聖人御一代記」「口伝の釈尊」「口伝の親鸞」「口伝の蓮如」などがあり、出版されている。その「節談説教」の一部を次のサイトで試聴できる。
http://www.hdever.com/ukenembutsureiaudiomp3.html
また継承者として活動している中村区の浄信寺の住職羽塚孝和氏の「節談説教」もサイト上で公開されている。
http://jiin.cocona.jp/houonkou05.htm
有隣寺から北西に向かうと、「羊神社」がある。このあたりの町名は辻町であるが、羊(ひつじ)→火辻→辻と変化したようだ。「羊神社」の祭神は、天照大神と火之迦具土神(ホノカグツチノカミ)である。「羊神社」は、延喜式神名帳に「尾張国山田郡羊神社」と記され、本国帳に「従三位羊天神」とある古社である。神社に保存されている棟札によれば、本殿は慶長18年(1612)に再建されたとある。その後、天保9年(1838)尾張第11代藩主徳川斉温公の時代に改築され、今日に至っている。「羊」という特殊な社名の由来を考える上で参考となる一つの史料が残されている。群馬県多野郡に「多胡碑」という奈良時代の石碑があり、この中に「羊太夫」という人物が登場するのだ。この件については次稿で取り上げようと思う。

辻栄橋から瑠璃光橋方向。

辻栄橋から夫婦橋方向。

桜の頃の辻栄橋。

黒川友禅流し。

「羊神社」

「羊神社」本殿。狛犬ならぬ狛未。

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