2020/5/20

追悼!ラッキー・ピーターソン 1964-2020  ブルース

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Lucky Peterson初来日公演(1995)のチラシ

まさに青天の霹靂。5月17日、ラッキー・ピーターソンが亡くなりました。彼のfacebookページによると、ダラスの自宅で具合が悪くなった彼は危篤状態で病院に搬送されたものの、回復することなく米国中部標準時(CST)5月17日午後2:25に帰らぬ人となったとのことです。

https://www.facebook.com/LuckyPetersonMusic/photos/a.154262927954185/2953262278054222/?type=3&theater

死因については触れられていませんが、急なことだったようです。昨年(2019年)は新作「Just Warming Up!」をリリースしていますし、先月4月27日はオンラインで自宅からの演奏も配信しています。特に具合が悪そうではありません。

大好きなアーティストが亡くなってしまうことは少なからずありますが、ラッキーが亡くなるとは思いもよりませんでした。だってまだ55歳ですよ。近年もバリバリ活躍していましたし、ビックリしすぎて言葉を失いました。

1964年12月13日、ニューヨーク州バッファロー生まれ。ブルースマンのジェイムズ・ピーターソンを父親に持つ彼は幼い頃から音楽活動を始め、わずか5歳のとき(1971年)ウィリー・ディクソンのプロデュースの下、デビュー・アルバム「Our Future」をリリースしています。初めて日本にやってきたのは1983年4月。リトル・ミルトンのバンドのキーボード奏者としてでした。この時点でもまだ10代です。

その後1995年、2000年とソロ・アーティストとしても来日しています。僕はどちらも見に行きましたが、やり過ぎなくらい全力で疾走するステージは圧巻でした。

ギターを弾きまくり、オルガンも弾きまくり、客席に乱入し、ギターを弾きながら会場から出て行ってしまう。そんな爆走ステージが終わり、客席の照明が点くと、もう後ろのカウンターに座っていたのを覚えています。しかも汗だくでゼーゼーいいながら。(笑)彼には、「ひと仕事終えて楽屋で休む」という概念はなかったのでしょうね。

リーダー作は、アリゲーター、ジタン、JSPなどのレーベルから数多く出ています。プリンスやスティングをカヴァーしてみたり、ジャズにも触手を伸ばしたりと、音楽性は幅広かったですが、根底にはいつもブルースがあったのではと思います。

勢い命という感じで、味で聴かせるタイプではありませんでしたが、セッションマンとしては、相手の持ち味を理解した好演が多く、そこはさすがベテランです。メイヴィス・ステイプルズと組んだCD「Spirituals & Gospel」(1996年)などはバンドもなくシンプルな作品ですが、メイヴィスの歌を引き立てる渋いプレイが光っていました。最近では、クリスタル・トーマスの新譜「Don't Worry About The Blues」(2019年)でも元気な演奏を聴かせていたのが思い出されます。

まだまだこれからの活躍に期待していたのに、本当に残念。暴れ足りない分はぜひ天国でお願いします。

2020/05/22追記
ラッキー・ピーターソンの死因については公式な発表はないものの、彼の長年の友人で彼のバンドのギタリストでもあったショーン・ケラーマンによると、脳卒中だったとのことです。やはり本当に急なことだったようです。
https://www.wbgo.org/post/lucky-peterson-bluesman-prodigious-gift-both-organ-and-guitar-has-died-55
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2020/5/15

Percy Mayfieldを聴こう!  ブルース

パーシー・メイフィールドというブルース・シンガーが僕は本当に好きです。

ブルースっていうとギターがゴリゴリだったり、泥臭いやつも大好きなんですが、パーシーはそういうサウンドとは対極にあります。メローで、どこかすっとぼけた雰囲気もあり、バラード中心で、パンチが効いているわけでもない。でも、でも、沁みるんですよね。いろいろなものを聴いて最終的に帰ってくるべき心のふるさとというか、そんなおもむきがあります。

彼はシンガーとしても素晴らしいですが、それ以上にソングライターとしての才能がブルースの世界の中でもずば抜けています。一ひねりあるウィットの効いた歌詞が多く、ブルースの詩人などと称されています。

生まれはルイジアナ州ながら長年ロサンゼルスで活躍し、1984年に亡くなったパーシー。絶頂期の50年代に交通事故で瀕死の状態となり、以後ステージに立つ機会はめっきり減ったようです。

特に後年はあまりピリッとしなかったという話もありますが、それでもいいので一度生で見てみたかった人です。僕がブルースにはまり出したのが1982年ごろ、ロサンゼルスでブルースのライヴに行くようになったのが1985年くらい。何だか惜しいニアミス(と勝手に思っています)。

そんな彼、名曲が多い中で一番有名なのが"Please Send Me Someone To Love"(1950年)という曲です。ブルースとしては珍しく世界平和という壮大なテーマを語っているのが印象的なのですが、この曲の面白いところは、「If it’s not asking too much」と、ついでに付け足す感じで神様に「私は恋人がほしい」とお願いするところなんですよね。次元の違いすぎることをついでに混ぜてくる(そして実はそっちが本題!)ところが妙に親近感が沸くというか、ブルースだなぁと思ってしまいます。シンプルながら本当に奥深い歌詞です。

世界が政治やら人種・民族問題やらなにかと対立を深める今こそ、説得力があるなぁと思ってしまうんです。和みます。くだらない対立なんてやめようよ、本当にそういう気持ちになる曲です。

とても多くの人がカバーしていて、名演は多いですが、僕はなんだかんだで、このオリジナル・バージョンが一番好きです。ぜひ今一度パーシー・メイフィールドの魅力をご堪能ください。
歌詞の和訳を付けてみました。↓↓↓



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Please Send Me Someone to Love (1950)
和訳:陶守正寛

天の神様
全ての人類に思いやりと心の平和をもたらしてください
そして、もし大変でなければ
私に愛する人をいただけませんか

世界の人々に仲よくする術をお教え下さい
憎しみがなくなれば、やがて平和が訪れるでしょう
そして、もし大変でなければ
私に愛する人をいただけませんか

眠れない夜、私は世界のもめ事に思いを馳せます
そして、いつも同じ結論に達するのです
人類がこの忌まわしい罪を終わらせなければ
憎しみが世界を炎で包むことになるでしょう
残念なことです

私が惨めな気持ちになったとしても
同情を請うたりしません
でも、もし大変でなければ
私に愛する人をいただけませんか

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Please Send Me Someone to Love (1950)
Words and music written by Percy Mayfield
©Sony/ATV Music Publishing LLC

Heaven please send to all mankind
Understanding and peace in mind
But if it's not asking too much
Please send me someone to love
Someone to love

Show all the world how to get along
Peace will enter when hate is gone
But if it's not asking too much
Please send me someone to love
Someone to love

I lay awake nights and ponder world troubles
And my answer is always the same
That unless men put an end to this damnable sin
Hate will put the world in a flame, what a shame

Just because I'm in misery
I don’t beg for no sympathy
But if it's not asking too much
Please send me someone to love
Please send me someone to love
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2020/4/30

BLUES & SOUL RECORDS 153号発売  ブルース

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ブルース&ソウル・レコーズ誌の最新号、153号が発売になりました。今回からロゴを一新しイメージを変えています。旧ロゴは2007年6月発売の76号から使っていたものでしたので、かなり久しぶりのイメチェンですね。それと同時に、本誌のウェブページのURLも変更になっています。

今回の特集はサム・クックです。これはサムが1957年から1960年にかけて残したKEENレーベルのボックスが出たのを機にした特集です。サムの特集は68号以来となります。この号と次号の2回に渡る大特集です。KEENレーベルを完全な形でカバーしたCDは過去にも出たことがありますが、今回のものはそれより格段に音がいいそうです。買わねば、、、と思ったらこれ限定版なんですね。既にオンラインではアマゾンやタワーなどでは在庫がないようです。うー。

まー、それはさておき、この特集、サムの歩みを振り返るサム・クック・ストーリーからアルバムやシングルをカラー写真入りで取り上げたガイドなどかなり力の入った特集です。

この他、巻末にはいつものライヴ・イベントのリストが掲載されていますが、これは4月6日時点での情報。コロナ自粛の中、その後多くのイベントがキャンセルになっています。淋しい限りですが、早い再開を期待したいと思います。

この号では、僕はヘンリー・グレイの追悼記事と海外ニュースを書きました。よかったら読んでみてください。

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BLUES & SOUL RECORDS NO. 153
2020年4月25日発売
定価: 1,600円+税
https://bsrmag.com/magazine/bsr153/

★ しなやかに、果敢に跨いだ越えるべき境界線 サム・クック・ストーリー Part 1
★ 今こそとらえ直すべき“キーンのサム”
★ サム・クックのアルバム [キーン編]
★ サム・クックのシングル [スペシャルティ/キーン編]
★ CDセット『The Complete Keen Years: 1957-1960』
★ 教会をひっくり返した若き継承者 ソウル・スターラーズ時代のサム・クック
★ ソウル・スターラーズのアルバム[スペシャルティ期]
★ サム・クックの良き理解者 J.W.アレグザンダー
★ サムをポップ・フィールドへと導いた男 バンプス・ブラックウェル
★ キーンと関連レーベルのシングル
★ フェイマス/アンデックス・アルバム・ガイド
★ サムを助けたギタリスト/アレンジャー ルネ・ホール

【付録CD】You Send Me: The Legacy of Sam Cooke
サム・クックの人気曲のカヴァーや、サムの遺産を受け継いだシンガーたちを収録。

1. JESSE BELVIN: You Send Me
2. JESSE BELVIN: Summertime
3. L.C. COOKE: Do You Wanna Dance
4. L.C. COOKE: I'll Wait For You
5. Z.Z. HILL: Have Mercy Someone (aka Somebody Have Mercy)
6. Z.Z. HILL: Nothing Can Change This Love (I Have For You)
7. CLAY HAMMOND: Do Right Woman
8. CLAY HAMMOND: I'll Make It Up To You
9. THE SIMS TWINS: I've Got To Win Your Love (For Me)
10. THE SIMS TWINS: Bring It On Home Where You Belong
11. WILLIE ROGERS: Tennessee Waltz
12. WILLIE ROGERS: That's When I'll Stop Loving You

【その他の主な記事】
● ジョン・リー・フッカー発掘音源出る
● 世界初CD化多数! T.K.レコーズ再発シリーズ9タイトル
● 注目作をじっくり鑑賞する「語りたい逸品」コーナー
 *書籍 日暮泰文 著 『ブルース百歌一望』
 *CD 『STUFF / ROLLING COCONUT REVUE JAPAN CONCERT 1977』
 *LP 『JMMY SWEENEY / WITHOUT YOU』
 *CD 『NAT KING COLE / HITTIN’ THE RAMP: THE EARLY YEARS』
● [追悼]ヘンリー・グレイ
●[新作アルバム・リヴュー]ロバート・クレイ/サニー・ランドレス/J.P.ロビンソン/トンプソンズ 他

【連載】
☆ 永井ホトケ隆 新連載「Fool’s Paradise」スタート!
☆ なんてったってインディ・ソウル 蔦木浩一×齋藤雅彦
☆ フード・フォー・リアル・ライフ 〜歌詞から見るブルース&ソウルの世界/中河伸俊
☆ 小出 斉の勝手にライナーノーツ「SAM MYERS / Down Home In Mississippi」
☆ リアル・ブルース方丈記/日暮泰文
☆ 鈴木啓志のなるほど! ザ・レーベル VOL.82 「Fuller / Tigertown」
☆ ゴスペル・トレイン「ブラザー・セシル・ショウ」/佐々木秀俊+高橋 誠
☆ BLUES IS MY BUSINESS no.229/吾妻光良
☆ いづみやの曲追い酩酊談/佐々木健一
☆ 原田和典の魂ブチ抜き音楽
☆ 文聞堂書房〜古書掘りコラム/出田 圭
☆ ICHIのチタリン・サーキット最前線
☆ International Music Stroll〜世界の音楽にぷらりと出会おう/ワダマコト
☆ ニッポンの。国内アーティスト新譜紹介/妹尾みえ
☆ ブルース&ソウルが流れる店/轟美津子
☆ Ain’t That Good News 国内ライヴ/イヴェント/来日公演情報ほか
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2020/4/27

ボビー・ラッシュ、新型コロナ(?)から復帰宣言  ブルース

ボビー・ラッシュが新型コロナウイルス感染症らしき症状で自宅療養中であることをfacebook上で公表していましたが、4月22日付の書き込みで、自ら復帰宣言をしました。心身ともに状態はよく、医者からも問題なしとお墨付きを得たそうです。

4月9日の書き込みでは「検査結果は出ていないものの、熱、身体の痛み、食欲不振、咳、体力の減少などCOVID-19に一致する症状が出ている」としていました。

4月17日付けのThe New Tri-State Defender紙の記事では、4月20日まで強制隔離措置が続くとしており、その間彼の自宅にはミシシッピ州から毎日2食の配達があるとのことでした。

結局、復帰宣言でも新型コロナが陽性だったのかについては明言していないのですが、隔離されていたことからすれば陽性だったということなのでしょう。

ボビーもかなりのご高齢(諸説ありますが、80歳代なかばくらいと思われます)なのでとても心配でした。なにはともあれ無事回復してよかったです。三月末まではオンラインで動画を配信するなど、音楽活動を続けていたボビー。今の状況からすると暫くはツアーを行うのは難しいと思いますが、今後の活動にも期待したいです。
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2020/3/29

ブルース百歌一望  ブルース

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日暮泰文さんの新著「ブルース百歌一望」が届きました。日暮さんと言えば、ブルースインターアクションズ/Pヴァインレーベルを創立した日本のブルースシーンの草分け的存在。もう、P ヴァインから身を引かれて久しいですが、Pヴァイン下の雑誌/ブランドele-kingからのリリースです。

ブルースの曲を100曲(実際は101曲あります)取り上げ、その曲にまつわることを日暮さんが語ります。400ページ近い分厚めの本ですが、1曲あたり2〜4ページ程度で完結しているので、時間を見つけてちょこちょこ読めます。読む順番も自由でよさそう。

データ重視のディスクガイド的なものではなく、日暮さんはエッセー調にその演奏者のことを始め、歌詞の内容や曲がリリースされた当時の時代背景などについて、自分の切り口で綴っています。取り上げられているのは有名曲もありますが、必ずしもそういうものばかりではなく、日暮さんが個人的に好きなものやネタにできそうなものをランダムに選んでいるようです。時代的には戦前ものから1960年代くらいまでの作品が殆どでしょうかね。

日暮さんといえば、Pヴァインを立ち上げた際の起業家視点で書かれた「のめりこみ音楽起業 〜孤高のインディペンデント起業、Pヴァイン創業者のメモワール」も興味深かったですが、それとは全く異なるブルース好きの視点で書かれています。

肩凝ることなく、のんびり楽しめそうな一冊です。

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著名:ブルース百歌一望
著者:日暮泰文
本体 2,500円+税
2020/3/25発売
単行本:380ページ
ISBN:978-4-909483-51-5
発行:株式会社Pヴァイン (ele-king books)
発売:日販アイ・ピー・エス株式会社
http://www.ele-king.net/books/007480/

取り上げた楽曲のリスト
http://bluesginza.web.fc2.com/Blues100_songs.pdf

発行元キャッチコピー
「こんな不条理な時代は、
人生の不条理から生まれた素晴らしい音楽を聴け!
ブルース研究の草分けが書き下ろす
極上のブルース・プレイリスト100曲100話の物語」

[4/1/2020追記]
「時代的には戦前ものから1960年代くらいまでの作品が殆ど」と書きましたが、2015年リリースのシャーウッド・フレミングの曲も取り上げており、1997年のT-モデル・フォードなど1970年代以降の曲もいくつか取り上げてはいます。
巻末に曲名の索引はあるのですが、そこには年代は記載されていません。個々のエッセーの冒頭にリリース年が記されています。
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