2020/5/15

Percy Mayfieldを聴こう!  ブルース

パーシー・メイフィールドというブルース・シンガーが僕は本当に好きです。

ブルースっていうとギターがゴリゴリだったり、泥臭いやつも大好きなんですが、パーシーはそういうサウンドとは対極にあります。メローで、どこかすっとぼけた雰囲気もあり、バラード中心で、パンチが効いているわけでもない。でも、でも、沁みるんですよね。いろいろなものを聴いて最終的に帰ってくるべき心のふるさとというか、そんなおもむきがあります。

彼はシンガーとしても素晴らしいですが、それ以上にソングライターとしての才能がブルースの世界の中でもずば抜けています。一ひねりあるウィットの効いた歌詞が多く、ブルースの詩人などと称されています。

生まれはルイジアナ州ながら長年ロサンゼルスで活躍し、1984年に亡くなったパーシー。絶頂期の50年代に交通事故で瀕死の状態となり、以後ステージに立つ機会はめっきり減ったようです。

特に後年はあまりピリッとしなかったという話もありますが、それでもいいので一度生で見てみたかった人です。僕がブルースにはまり出したのが1982年ごろ、ロサンゼルスでブルースのライヴに行くようになったのが1985年くらい。何だか惜しいニアミス(と勝手に思っています)。

そんな彼、名曲が多い中で一番有名なのが"Please Send Me Someone To Love"(1950年)という曲です。ブルースとしては珍しく世界平和という壮大なテーマを語っているのが印象的なのですが、この曲の面白いところは、「If it’s not asking too much」と、ついでに付け足す感じで神様に「私は恋人がほしい」とお願いするところなんですよね。次元の違いすぎることをついでに混ぜてくる(そして実はそっちが本題!)ところが妙に親近感が沸くというか、ブルースだなぁと思ってしまいます。シンプルながら本当に奥深い歌詞です。

世界が政治やら人種・民族問題やらなにかと対立を深める今こそ、説得力があるなぁと思ってしまうんです。和みます。くだらない対立なんてやめようよ、本当にそういう気持ちになる曲です。

とても多くの人がカバーしていて、名演は多いですが、僕はなんだかんだで、このオリジナル・バージョンが一番好きです。ぜひ今一度パーシー・メイフィールドの魅力をご堪能ください。
歌詞の和訳を付けてみました。↓↓↓



----

Please Send Me Someone to Love (1950)
和訳:陶守正寛

天の神様
全ての人類に思いやりと心の平和をもたらしてください
そして、もし大変でなければ
私に愛する人をいただけませんか

世界の人々に仲よくする術をお教え下さい
憎しみがなくなれば、やがて平和が訪れるでしょう
そして、もし大変でなければ
私に愛する人をいただけませんか

眠れない夜、私は世界のもめ事に思いを馳せます
そして、いつも同じ結論に達するのです
人類がこの忌まわしい罪を終わらせなければ
憎しみが世界を炎で包むことになるでしょう
残念なことです

私が惨めな気持ちになったとしても
同情を請うたりしません
でも、もし大変でなければ
私に愛する人をいただけませんか

----

Please Send Me Someone to Love (1950)
Words and music written by Percy Mayfield
©Sony/ATV Music Publishing LLC

Heaven please send to all mankind
Understanding and peace in mind
But if it's not asking too much
Please send me someone to love
Someone to love

Show all the world how to get along
Peace will enter when hate is gone
But if it's not asking too much
Please send me someone to love
Someone to love

I lay awake nights and ponder world troubles
And my answer is always the same
That unless men put an end to this damnable sin
Hate will put the world in a flame, what a shame

Just because I'm in misery
I don’t beg for no sympathy
But if it's not asking too much
Please send me someone to love
Please send me someone to love
3

2020/5/13

追悼リトル・リチャード 1932-2020  ロック

クリックすると元のサイズで表示します
Little Richard at Long Beach Blues Festival
Sept. 2, 1996, CSULB, Long Beach, CA
(c)Masahiro Sumori. All rights reserved.

リトル・リチャード(本名Richard Wayne Penniman)の訃報は5月9日、週末の夜に突然入ってきました。Twitterのタイムラインは瞬く間にその話題で溢れていました。彼は同日、テネシー州タラホーマの親族の家で亡くなりました。骨ガンで闘病中だったとのことです。87歳でした。

でも、正直僕にはあまり驚きも衝撃もありませんでした。2013年に引退宣言をしてからどうしているのか伝わってきていませんでしたし、相当高齢だったので、「あぁ、そうか」と比較的冷静に受け止められました

新作に至っては1992年の高中正義との共演盤を最後に30年近く何も出していなかったので、引退する前から現役感はあまりなかったですし。でもやはり寂しいですね。

彼を初めて聴いたのがいつ、何だったのか、全く覚えていません。多分、”Lucille"か"Tutti Frutti”あたり?、あるいはビートルズがやった”Kansas City”のカヴァーの方が先だったか、どっちだろう?普通好きなアーティストを初めて聴いたときのことは覚えているんですが、彼のようにあまりにも有名でどこにでも流れていると、そうもいかない。気が付いたら耳にして踊っていた、そんな感じですかね。中学生の頃だと思います。

一度だけ彼を見る機会がありました。1996年、毎年行っていたカリフォルニア州のロング・ビーチ・ブルース・フェスティバルで彼がヘッドライナーを務めたのでした。演奏はダラダラでそんなによいと言えるものではなかったですが、その存在感たるや強烈でした。ピアノも歌も、振る舞いもまさにリトル・リチャード。こんな人は他にいないです。

□■当時書いたライヴ・レポート■□

彼が登場したときの異様な熱気は忘れられません。ブルース・フェスの出演者って普通、B.B.キングだろうとボビー・ブランドだろうと、どんな大物が出てきても、ブルースマンなんて知らない人は知らないじゃないですか。でも、アメリカでリトル・リチャードを知らない人はまずいない。あの熱気はそれを如実に示していました。”We love you Richard!”とあちこちから熱烈なリチャード・コールが起こる中、ふざけながら”Shut up!”と客に吐き捨てさらに盛り上がる、そんな感じ。

この日のセットは、彼が50年代に一緒にやっていたグレイディ・ゲインズと彼のバンド、テキサス・アップセッターズだったこともあり、リチャードはすごくノリノリだったのも印象に残っています。リチャードの前でグランドピアノに乗ってサックスをブロウしている有名な映像(1956年の映画「Don't Knock The Rock」)がありますが、その男がグレイディ・ゲインズです。このときも、同じ勢いでブロウしまくっていました。

グレイディも暴れる「Don't Knock The Rock」より


確か90年代の始めくらいだったと思いますが、リチャードの来日が決定したことがありました。新聞に広告が出たときは「おお!」と思いましたが、結局中止になりました。チケットが1万円くらいとあまりに高く、会場も日本武道館と大きかったので、そもそもの設定が無理があったのかも知れません。あまり宣伝もしていなかったようなので、多分売れなかったのでしょう。これ以降来日の話が出ることはなかったと思います。

彼のカバーをしたアーティストは数えきれないほどいますが、ひとつ印象に残っているのはフェントン・ロビンソンがやった”Directly from My Heart to You”です。これは本当に名演ですが、僕はオリジナルよりもこちらを先に知りました。



リチャードはジョージア州出身ですが、彼の黄金期、1950年代のスペシャルティ録音の多くはニューオーリンズのJ&Mスタジオで収録されています。参加したミュージシャンもリー・アレン(sax)やアール・パーマー(ds.)ら地元ミュージシャンなので、ニューオーリンズ感いっぱい。ピアノの相当部分はリチャード本人ではなくヒューイ・スミスあるいはエドワード・フランクが弾いていたと言われていますが、なぜリチャードを差し置いて彼らが呼ばれたんでしょうね。リチャードにはシャウトの方に専念してほしかったから?本人のプレイは気まぐれすぎたから?色々想像すると面白いです。

リチャードが亡くなり、50年代のロックンロール黄金期を彩ったスターで存命なのはジェリー・リー・ルイスとロイド・プライスくらいになってしまいました。50’sもそれだけ昔の話になってしまったんですね。
6

2020/4/30

BLUES & SOUL RECORDS 153号発売  ブルース

クリックすると元のサイズで表示します

ブルース&ソウル・レコーズ誌の最新号、153号が発売になりました。今回からロゴを一新しイメージを変えています。旧ロゴは2007年6月発売の76号から使っていたものでしたので、かなり久しぶりのイメチェンですね。それと同時に、本誌のウェブページのURLも変更になっています。

今回の特集はサム・クックです。これはサムが1957年から1960年にかけて残したKEENレーベルのボックスが出たのを機にした特集です。サムの特集は68号以来となります。この号と次号の2回に渡る大特集です。KEENレーベルを完全な形でカバーしたCDは過去にも出たことがありますが、今回のものはそれより格段に音がいいそうです。買わねば、、、と思ったらこれ限定版なんですね。既にオンラインではアマゾンやタワーなどでは在庫がないようです。うー。

まー、それはさておき、この特集、サムの歩みを振り返るサム・クック・ストーリーからアルバムやシングルをカラー写真入りで取り上げたガイドなどかなり力の入った特集です。

この他、巻末にはいつものライヴ・イベントのリストが掲載されていますが、これは4月6日時点での情報。コロナ自粛の中、その後多くのイベントがキャンセルになっています。淋しい限りですが、早い再開を期待したいと思います。

この号では、僕はヘンリー・グレイの追悼記事と海外ニュースを書きました。よかったら読んでみてください。

-----

BLUES & SOUL RECORDS NO. 153
2020年4月25日発売
定価: 1,600円+税
https://bsrmag.com/magazine/bsr153/

★ しなやかに、果敢に跨いだ越えるべき境界線 サム・クック・ストーリー Part 1
★ 今こそとらえ直すべき“キーンのサム”
★ サム・クックのアルバム [キーン編]
★ サム・クックのシングル [スペシャルティ/キーン編]
★ CDセット『The Complete Keen Years: 1957-1960』
★ 教会をひっくり返した若き継承者 ソウル・スターラーズ時代のサム・クック
★ ソウル・スターラーズのアルバム[スペシャルティ期]
★ サム・クックの良き理解者 J.W.アレグザンダー
★ サムをポップ・フィールドへと導いた男 バンプス・ブラックウェル
★ キーンと関連レーベルのシングル
★ フェイマス/アンデックス・アルバム・ガイド
★ サムを助けたギタリスト/アレンジャー ルネ・ホール

【付録CD】You Send Me: The Legacy of Sam Cooke
サム・クックの人気曲のカヴァーや、サムの遺産を受け継いだシンガーたちを収録。

1. JESSE BELVIN: You Send Me
2. JESSE BELVIN: Summertime
3. L.C. COOKE: Do You Wanna Dance
4. L.C. COOKE: I'll Wait For You
5. Z.Z. HILL: Have Mercy Someone (aka Somebody Have Mercy)
6. Z.Z. HILL: Nothing Can Change This Love (I Have For You)
7. CLAY HAMMOND: Do Right Woman
8. CLAY HAMMOND: I'll Make It Up To You
9. THE SIMS TWINS: I've Got To Win Your Love (For Me)
10. THE SIMS TWINS: Bring It On Home Where You Belong
11. WILLIE ROGERS: Tennessee Waltz
12. WILLIE ROGERS: That's When I'll Stop Loving You

【その他の主な記事】
● ジョン・リー・フッカー発掘音源出る
● 世界初CD化多数! T.K.レコーズ再発シリーズ9タイトル
● 注目作をじっくり鑑賞する「語りたい逸品」コーナー
 *書籍 日暮泰文 著 『ブルース百歌一望』
 *CD 『STUFF / ROLLING COCONUT REVUE JAPAN CONCERT 1977』
 *LP 『JMMY SWEENEY / WITHOUT YOU』
 *CD 『NAT KING COLE / HITTIN’ THE RAMP: THE EARLY YEARS』
● [追悼]ヘンリー・グレイ
●[新作アルバム・リヴュー]ロバート・クレイ/サニー・ランドレス/J.P.ロビンソン/トンプソンズ 他

【連載】
☆ 永井ホトケ隆 新連載「Fool’s Paradise」スタート!
☆ なんてったってインディ・ソウル 蔦木浩一×齋藤雅彦
☆ フード・フォー・リアル・ライフ 〜歌詞から見るブルース&ソウルの世界/中河伸俊
☆ 小出 斉の勝手にライナーノーツ「SAM MYERS / Down Home In Mississippi」
☆ リアル・ブルース方丈記/日暮泰文
☆ 鈴木啓志のなるほど! ザ・レーベル VOL.82 「Fuller / Tigertown」
☆ ゴスペル・トレイン「ブラザー・セシル・ショウ」/佐々木秀俊+高橋 誠
☆ BLUES IS MY BUSINESS no.229/吾妻光良
☆ いづみやの曲追い酩酊談/佐々木健一
☆ 原田和典の魂ブチ抜き音楽
☆ 文聞堂書房〜古書掘りコラム/出田 圭
☆ ICHIのチタリン・サーキット最前線
☆ International Music Stroll〜世界の音楽にぷらりと出会おう/ワダマコト
☆ ニッポンの。国内アーティスト新譜紹介/妹尾みえ
☆ ブルース&ソウルが流れる店/轟美津子
☆ Ain’t That Good News 国内ライヴ/イヴェント/来日公演情報ほか
0

2020/4/27

ボビー・ラッシュ、新型コロナ(?)から復帰宣言  ブルース

ボビー・ラッシュが新型コロナウイルス感染症らしき症状で自宅療養中であることをfacebook上で公表していましたが、4月22日付の書き込みで、自ら復帰宣言をしました。心身ともに状態はよく、医者からも問題なしとお墨付きを得たそうです。

4月9日の書き込みでは「検査結果は出ていないものの、熱、身体の痛み、食欲不振、咳、体力の減少などCOVID-19に一致する症状が出ている」としていました。

4月17日付けのThe New Tri-State Defender紙の記事では、4月20日まで強制隔離措置が続くとしており、その間彼の自宅にはミシシッピ州から毎日2食の配達があるとのことでした。

結局、復帰宣言でも新型コロナが陽性だったのかについては明言していないのですが、隔離されていたことからすれば陽性だったということなのでしょう。

ボビーもかなりのご高齢(諸説ありますが、80歳代なかばくらいと思われます)なのでとても心配でした。なにはともあれ無事回復してよかったです。三月末まではオンラインで動画を配信するなど、音楽活動を続けていたボビー。今の状況からすると暫くはツアーを行うのは難しいと思いますが、今後の活動にも期待したいです。
3

2020/4/22

【緊急!】Help Offbeat Magazine  ニューオーリンズ

ニューオーリンズの音楽雑誌、オフビートが新型コロナウイルス感染症の流行で存亡の危機に瀕しています。3月11日にルイジアナ州に非常事態宣言が出された直後、同誌は印刷版の発行を見合わせる決定をしましたが、ライヴハウスの閉鎖に加え、ジャズフェスなどの大きなイベントのキャンセルが相次ぎ、収入の大部分を占めていた広告収入が途絶えてしまいました。

過去30年以上に渡りニューオーリンズの音楽シーンの情報を発信し、盛り立ててきた功績はとても大きく、この雑誌がなくなってしまうと大げさではなくニューオーリンズの音楽が潰れてしまうほどのインパクトがあると思います。

ジャン・ラムジー編集長は昨日ビデオメッセージを公開し、緊急の寄付を呼び掛けています。音楽ファンの皆さん、ぜひ少額でもいいので、寄付をお願いしたいと思います。



ハリケーン・カトリーナの直後にも同誌は資金的に危機に陥りましたが、今回はそれを超える状況のように思えます。

昨年僕がジャンさんを訪ねて話を聞いたとき、彼女は「この仕事は自分の音楽愛に動かされてやっている。そろそろ歳を取ったので志を持った人に譲って引退したいところだけど、儲けは全くなくきつい仕事なので、そう簡単にはいかない」と言っていました。少ないスタッフで頑張ってきたのに、こんな状況で終わらせてしまってはもったいないです。

寄付はオンラインで簡単にできますので、ぜひぜひよろしくお願いします。

1



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ