2015/11/13

BRINT ANDERSONの新譜「Covered In Earl」  ニューオーリンズ

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ジョージ・ポーターJr.のラニング・パードナーズでの活躍で知られるニューオーリンズのギタリスト、ブリント・アンダーソン。ソロ・アーティストとしても複数のアルバムをリリースしていますが、この新譜は心に響きました。

「Covered In Earl」というタイトルは、アール・キングのカバー集であることを意味しています。ジャケに写っているブリントは、持っているギターも服装もアールっぽく決めています。

奇をてらったことはせず、ストレートにアールの曲の数々に向き合っており、そういう意味では面白いとは言えないかも知れません。でも、なんだか染みるんですよ。この人のキャラ自体はアールとは全く違うんですが、このアルバムを聴いていると、元気な頃のアールが戻ってきたような錯覚さえ覚えます。やっぱり彼はアールが大好きなんでしょうね。それがじわーと伝わってくるんです。

選曲としては、一番有名曲が多い初期(スペシャルティ、エイス)の曲が殆どなく(エイス時代の"I'll Take You Back Home”1曲のみ)、1970年代の「Street Parade」以降の曲が中心というのもひとつの拘りでしょうか。でもそれが結果的にはファンキー目なサウンドに仕上がる結果となりいい感じです。ジョージ・ポーターのソロ作用にアールが提供した楽曲”Rough Spots”もやっています。

バックのミュージシャンには、ジョー・サンプルのクレオール・ジョー・バンドやジェリー・ダグラスとも活動していたダグ・ベローテ(ds.)、ダーティダズン・ブラスバンドなどで活躍したジェイク・エカートらが参加しています。特にブラックトップの曲などはオリジナルのアールのレコーディングの雰囲気そのまんまな感じで演奏していて、初めて聴く作品なのに、すっと馴染めました。

こんな心温まる作品に、天国のアールもきっと喜んでいるに違いありません。
自主制作盤だけど、ぜひ聴いてみてくださいね。CD BabyやLouisiana Music Factoryの通販で買うことができますよ。

BRINT ANDERSON / COVERED IN EARL
(BRINTTUNES Recording, no number, 2015)
https://www.cdbaby.com/cd/brintanderson

1. No City Like New Orleans (1993, Hard River To Cross)
2. Rough Spots (1990, George Porter Jr. - Runnin' Partner)
3. I'll Take You Back Home (1955, Ace single)
4. Hard River to Cross (1993, Hard River To Cross)
5. Street Parade (1987, Street Parade)
6. Come On, Let the Good Times Roll (1960, Imperial single)
7. Medieval Days (1987, Street Parade)
8. The Real McCoy (1987, Street Parade)
9. You're More to Me Than Gold (1961, Imperial single)
10. Make a Better World (1974, Dr. John - Desitively Bonnaroo)
11. The Things I Used to Do (1960, Imperial single)
12. Big Chief(1964, Professor Longhair single)
13. Trick Bag (1961, Imperial single)
14. Handy Wrap (1993, Hard River To Cross)
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2015/11/12

訃報:Allen Toussaint 1938-2015  ニューオーリンズ

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WWOZピアノ・ナイトでプレイする
アラン・トゥーサン(2004年)

(c)Photo by Masahiro Sumori.

ニューオーリンズの音楽が終わった。そんな悲観的な思いが脳裏をよぎってしまいましたが、それもあながち大げさとも言えないでしょう。アラン・トゥーサンの突如の訃報。一報を目にした瞬間、あまりの衝撃に頭の中が真っ白になってしまいました。ニューオーリンズR&Bの大黒柱的存在であり、彼がいなかったら今日のニューオーリンズの音楽は全く違うものになっていたに違いありません。

ニューオーリンズの音楽シーンにとっては、2003年にアール・キングが亡くなって以来の大きな損失だと思いますが、アールの場合は、晩年はかなり体調が悪かったのは誰の目にも明らかでした。一方、トゥーサンはいつも元気で若々しく、とても亡くなるとは想像が付かなかったというのが率直なところ。今年に入っても、 1月の来日公演レポートで、僕が「相変わらず元気でした」とコメントした通り、77歳とは思えない健在ぶりを示してくれていました。残念というよりは、正直言ってまだ信じられないという思いが強いです。

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プロモ・イベントでピーター・バラカンの
インタビューを受けるトゥーサンとコステロ
(2006.5.31、品川教会グローリア・チャペル)

(c)Photo by Masahiro Sumori.

nola.comの報道によると、ヨーロッパをツアー中だった彼は11月9日、マドリードのララ劇場での公演を終えた後、心臓発作で倒れたのことで、救急隊が翌10日未明にホテルに駆けつけ蘇生を試みたものの、病院へ向かう救急車の中で息を引き取ったそうです。

ニューオーリンズの音楽がこの上なく大好きな僕ですが、実は当初アラン・トゥーサンについては、さほど興味がなかったんです。というのも、ニューオーリンズに興味を持ったのがブルースを聴く流れの中でのことだったので、トゥーサンは当時の僕の感覚にはポップすぎると感じていました。1986年にアール・キングとジョニー・アダムズが初来日した際は飛びつくように見に行ったのに、2年後のトゥーサンの来日公演は経験していないのもそんな理由があったように思います。

しかし、ニューオーリンズの音楽の深みにはまればはまるほど彼の存在の大きさを実感し、いつしか彼の演奏はとりあえず何でも聴きたいと思うほど大好きなアーティストとなっていました。

ソロ作が素晴らしいのはもちろんですが、彼はソングライターとして、プロデューサーとして多くの楽曲、アーティストを世に送り出しました。アーマ・トーマスも、リー・ドーシーも、アーニー・ケイドーも彼なくしては語れません。

トゥーサンを知らなくてもアーマの”It’s Raining”、ハープ・アルパートの”Whipped Cream”、アーニー・ケイドーの”Mother-In-Law”や”Certain Girl”、ベニー・スペルマンの”Fortune Teller”など、彼の書いた曲を聴いたことがある人は多いのではと思います。スリー・ドッグ・ナイトで”Brickyard Blues”を知ったり、リトル・フィートで”On Your Way Down”に出会った人も多いでしょう。彼の書いた曲は、彼自身の知名度以上に広く知れ渡っています。

2006年の来日時、トゥーサンが2005年に発生したハリケーン・カトリーナを「偉大なブッキングエージェントだ」と言っていたのが非常に印象に残っています。自身も被災して大変な目に遭っているにも関わらず、悲観するのではなく「カトリーナのおかげで世界からミュージシャンが集まって来て、新たなコラボレーションが生まれている」と逆境をチャンスと捉える前向きな姿勢を見せたのです。

その言葉通り、彼はこの頃から活動を加速させ、エルヴィス・コステロとの共演作も含めアルバムをリリースするようになりましたし、繰り返し来日もするようになりました。来日公演はいずれもビルボードライブという限られた場ではありましたが、日本のファンが今年の1月まで彼の生演奏に接する機会が度々与えられたのは幸運なことだったと言えるのではないでしょうか。

ライヴ会場などで周囲に接する彼の姿はまさに絵に描いたような紳士でした。ステージでの茶目っ気たっぷりな振る舞いも印象に残っています。2006年にニューオーリンズで見たエルヴィス・コステロとの共演について、朝日新聞でライヴ・レポートを書いたこと、2012年の来日公演の際にオープニングのDJをやらせてもらったことなど、色々と思い出されます。一家でニューオーリンズに行った際、地元のレコード屋さんにふらっと来店したトゥーサンを発見し、「一緒に写真を撮っていいですか?」と声をかけたら笑顔で「もちろん!」と返してくれたのもいい思い出です。彼はいつもそんな感じなんですよね。


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ジャズフェスのトゥーサン&コステロのライヴレポート
を取り上げた新聞記事
(2006年5月26日; 朝日新聞夕刊)


このブログでも、来日公演レポートなど度々取り上げてきました。改めてリンクを貼っておきます。

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【過去のアラン・トゥーサン絡みの記事】
ビルボードライブ東京, 2015年1月21日
http://black.ap.teacup.com/sumori/1596.html

ビルボードライブ東京, 2013年10月23日(親子公演)
http://black.ap.teacup.com/sumori/1461.html

ビルボードライブ東京, 2012年10月15日 (初日)
http://black.ap.teacup.com/sumori/1232.html

ビルボードライブ東京, 2012年10月16日(2日目)
http://black.ap.teacup.com/sumori/1230.html

ビルボードライブ東京, 2009年5月30日
http://black.ap.teacup.com/sumori/237.html

ビルボードライブ東京, 2007年10月22日
http://black.ap.teacup.com/sumori/84.html

原宿Blue Jay Way, 2006年6月1日(ピアノ・ソロ公演)
http://black.ap.teacup.com/sumori/17.html

コステロ&トゥーサン・プロモ・イベント@品川教会グローリア・チャペル (May 31, 2006)
http://black.ap.teacup.com/sumori/16.html

――
アラン・トゥーサンの生誕75年を祝うチャリティ・ライブ (2013/5/10)
http://black.ap.teacup.com/sumori/1415.html

2008年ニューオーリンズ・ジャズフェス
http://black.ap.teacup.com/sumori/107.html
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