「なまづま」
堀井拓馬
第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品です。
醜悪で激臭を放つ生き物ヌメリヒトモドキが当たり前のように闊歩する世界。妻を亡くしたヌメリヒトモドキの研究者である主人公は、ヌメリヒトモドキが人間の記憶や感情を吸収する性質を知り、妻を取り戻すために禁断の所業へと手を染めるが…。
と言う感じのグロテスクなラブストーリーです。妻を失ったことにより、主体性の無かった主人公は拠り所を得るために狂気に走り、人間とヒトモドキの境界すら曖昧になっていく様が、ちょっぴり読みづらい文章で執拗に描き出されていきます。一人称で描かれる物語は、主人公の懊悩と淡々とした行動が傍観者的に語られていき、ヌメリヒトモドキよりも主人公の方が人外の存在なのではないかと感じさせつつ、現代人の虚無を映し出します。
色々主人公の独白とかがホジスンの「ナイトランド」を思い出させたりしましたが、ハッピーエンドにはならないホラーなオチが幻想文学じゃないんだ、と思わせる一冊でした。
まあ、大賞じゃないのは何となく分かる気がする,、'` ( ´∀`) ,、'`

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