「空の境界(中)」
奈須きのこ
そして、中巻でござる。
時系列的には、記憶喪失から目覚めた直後の“式”が混乱するエピソードと物語の仕掛けとしてはクライマックスの「矛盾螺旋」を収録した中巻は、本編の影の主人公とも言える魔術師の壮大な計画が表に現れることによって、世界の本質に接触していく。
と、そんなわけで、大枠の物語としては別にここで終わってもいいじゃん、てな感じですが、つーかサンダー先生ならここがクライマックスだろう、ってまあ下巻を読まなくてもイイ最終回だったね!で満足できなくもないそんな一冊。まあ、根本的な謎は残されているわけですが、登場人物の感情的な側面を除けば終わっている話です。もっとも、ここで終わるためには“式”とか黒桐たちの動きが少なすぎて、何じゃそりゃって感じなので、やっぱり下巻が蛇足気味でも必要なんだろう、って構成に問題が…(´Д`;)
それはともかく、ケイオスな魔術的戦闘や、いったいどこのドクター・メフィストだって言うあの人とか、“式”に恋する青年とか、周りの人すべてで主人公を喰ってるところや、積み重ねが無いけど急に出てきて場を攫ってしまうみたいな、この読者の置いてけぼり感が物語のクライマックスにしては主役たちに距離感を感じさせたりしてます。そもそも非能動的な主人公だけども。
まあ、この物語の本質が世界の成り立ちとシンクロしない“式”と黒桐の関係性の確立にあるってのがハッキリした、アイディアが勿体無いような、話を遠回りするんだね、って感じのエピソードでした。

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