SILENCE SPEAKS

「フルメタル・パニック! 燃えるワン・マン・フォース」
賀東 招二

　人気の学園SFミリタリーアクションの最新作ですよ。もう学園じゃないけど。

　拉致された、かなめの行方を求めて東南アジアへと辿り着いた宗介。そこで行われていたアームスレイブの賭け格闘に参加することになるが…。

　アナーキーな場所で独りになると宗介は何だかファントム戦士みたいな適応性を発揮するわけですが、学園生活での宗介が如何に高ストレス下にいたかよく分かるってもんです。生温くなった宗介にガウルンが失望するのも止む無し。ちなみに最近のハードな展開で脳内では挿絵は生頼か末弥に変換済み。もうこれまでの生活が戻ってこないことは誰もが理解してしまったわけですが、それでも失われたものを取り戻そうと闘い続ける宗介の悲壮感は物語の悲惨な結末を予感させていきます。これをひっくり返すには世界改変の大技が必要だろうなあ、と思わないでもないですが、とりあえず

サベージは最高よ！（´∀｀　）

次回はアルが復活の予定です。

「ふりむかない男―グイン・サーガ外伝 20」
栗本薫

　若さ、若さって何だ〜振り向かないことさ〜
　と、宇宙刑事ギャバンの主題歌が読者の心に木魂する、今更振り向いてはいけない世界最長シリーズの外伝最新刊です。今回は拷問後のアルド・ナリスが寝たきり探偵になって、カラム水絡みの謎の事件に挑むという趣向で、これでもかと長ゼリフが満載になってます。まあ、ミステリーだが、それでも他の描写が少なすぎるんとちゃうんか！と突っ込み所は満載です。ファンタジーよりもミステリーの方が最近はまだマシって言うほど栗本ミステリーは読んでないですが、本格派とかそういう感じでもないし、多分まともなんだろう、それなりに。クトゥルーが世間話をしてきたり、黒魔道師や宇宙船とか、そりゃもう超次元の代物がワンサカでてくる世界観でミステリーもクソもねえだろ！とか思うところは沢山ですが、謎に満ちた飲み物“カラム水”が何なのかはやっぱりよくわかりませんでした。とりあえず脳内ではコーヒーに変換しておきます。


「事実、なかなかわがままで自分勝手で、
　でもまあ結局のところごく普通にわがままで身勝手な、
　ごくごく普通の平凡なお金持ちの我儘娘だったのだと思いますけれどね」

　このセリフがメタミステリーだな。でもセリフにクライマックスって入れるのはどうかと思う。

「レンタルマギカ 魔法使いの宿命!」 三田 誠

　すっかりお馴染み、三田（みたではない）先生の最新刊だ！
　人気シリーズの短編集となった本作では、夏の海とダブルツンデレヒロインの昔話、さらに猫屋敷とみかんの因縁話の三篇が収録されています。ああっ！そういえば、挿絵がカットされてるのにアディの水着の描写が無いよ！先生何とかしてよ！！短編だけに軽めの話が多…くはないですが、日常風景の話が中心とは言いつつも、血は水よりも濃い、じゃなかった魔の力は血に宿る、という望む者には福音となり望まない者には呪いと化す、向こう側の世界に飛び込んでしまった人々の悲哀と宿命が色濃く描き出されるものになっていて、努力では超えられない壁に立ち向かう才能ある普通人と、そういう風に生まれついてしまった天才、さらに血の因縁からは逸脱しているものの強力な能力を手にしているイレギュラーな主人公との立場が一層際立つものになっている、ような。

　突然、シリーズ最終局面予想をしたくなったので書きますが、魔術による世界変革を実行に移した“協会”との全面抗争の末、何故か“新協会”の代表になってしまった主人公。ああっ！両手にダブルヒロインが！？


　そんなことはさておき、穂波がヒロインポジションにも関わらず、何だあの表情は。って言うか穂波の普通に笑ってる挿絵とかほぼゼロだよな（´∀｀　）

「十の恐怖」
「十回目には」常盤朱美
「あと十分」森真沙子
「十針の赤い糸」井上雅彦
「十環子姫の首」五代ゆう
「十人目の切り裂きジャック」篠田真由美
「十年目のウェディングドレス」飯野文彦
「十年目の決断」斉藤肇
「十番星」小林泰三
「十死街」朝松健
「十歩……二十歩……」竹河聖
「十代最後の日」赤川次郎

　“十”という数字にまつわる恐怖話を集めた短編集です。「斬首人の復讐」をググっていたら、これに白凰坊がらみの話が載っているのを発見したので、すぐに買ってみたぜ！もちろん買う前に積読本あたりを探してみたのは言うまでも無い。もしかしたらどこかにあるかもしれないが（ﾟεﾟ）ｷﾆｼﾅｲ!!

　やっぱり詳しく書こうとするとネタバレなので何ですが、女性作家が割と多い短編集で、女性作家は伝統的というか都市伝説みたいな話、男性作家はネタも時代設定も弾け気味な感じがします。まあ、小林泰三はSFホラーだし、朝松健はクトゥルーものだしな！まあ、濃厚な異形コレクション辺りに比べれば、軽く読める一冊でした。タイトルが“十”なら中身も十篇にしておけばよかったのに。

「斬首人の復讐」
マイケル・スレイド

　変態サイコスリラーの旗手？マイケル・スレイドの最新刊です。やっと読み終わったぜ！何だか生き残っている登場人物を挙げるだけでネタバレになりそうで、嫌になってしまいますが、既にカナダ暗黒史と化したサイコミステリーも遂に、あの「ヘッドハンター」事件に決着が付けられます。ゆえに「ヘッドハンター」読了必須。

　先住民居住区で発見される氷漬けの首無し死体。それに呼応するかのように特別捜査チームに送りつけられた干し首。捜査員たちの脳裏に「ヘッドハンター」事件の悪夢がよみがえる中、復権を叫ぶ先住民達との間にきな臭い空気が広がっていく…。

　次々起こる殺人事件と凍てつく大地に繰り広げられる局地的紛争が同時進行で描かれる中、サイコスリラーの枠組みを超えたカナダの歴史の暗部が曝け出される超大作になっています。スレイドの作品を読み続けたら、とてもは住めないような感じの暗黒大陸となっているカナダですが、それまでの悪夢のような殺人事件の因縁が歴史に深く根付いているのが凄まじい。読者は既に真相が分かっている「ヘッドハンター」が解決されたことで、この暗黒史にも一応の区切りが着いたみたいです。やたらとエロエロ親父と化しているディクラークやクレイヴンを尻目にマスコミ対策とかチーム編成とか中間管理職のジンク・チャンドラーは大変だなあと思ったりさせられるお話でした。ディクラークが主人公だけどな！