2004/8/7

怪談2  かたる

(写真は福澤徹三の最新作『壊れるもの』。書き下ろしの長編だ。う〜〜ん、読みたい〜)

さて、怖い話。

初めてアメリカに行ったのはもう25年以上前。
語学留学にくっついてた、てきと〜なツアーだった事は以前書いた。
一ヶ月の滞在期間中、バークレーを拠点にして何度かレンタカーであちこちに出かけたのだが、同じドミトリーで知り合った3人とヨセミテ国立公園に行ったときの事だ。
3人のうち一人は大阪から来ていた、いかにもヒッピー崩れといった感じの長髪男子。
あとの2人は熊本から来たという友達同士で、あの頃にしてはこざっぱりした印象だった。
まあ、なんとなく仲良くなったおいらたち4人はしょぼい地図だけを頼りにおんぼろレンタカーで出発した。
                  
案の定、途中何度か道に迷い、ヨセミテ公園らしいところに到着したのは予定よりかなり遅れて、真夜中になっていた。
参加したツアーがツアーだけに所持金たっぷり、なんてやつはおらず、皆、出来るだけ節約しながら行こうぜ、と、合意しての旅行だったのでその日は車で寝ることになった。

ヨセミテらしい場所は山の中に違いなく、あたりは見事に真っ暗だった。
なかなか寝付けれないこともあって、誰からともなく自分の事など話し出した。
大阪のヒッピー崩れはやっぱ、バンドをやってて、熊本の2人は高校時代からの友人だとか、他愛もない話だったのだが、ふと、熊本の一人が『これってどう思う?』って、テンションを代えて話し始めた。

彼が見た夢の話から。
辺りがはっきりしないぼやけた中で誰かが手を伸ばしている。
彼はその状況をぼーと見ていたんだけど、伸びていくその手が何か白いものに近づいて触れそうになった、そのとき、突然訳も分からず、それに触るな!という意識が渦巻いて、なんとも苦しくなって、哀しくなって、『触るなあ〜〜!!』って泣き叫んだ!

と、そこで、目覚めたのだけど、なんとも気分の悪い夢だったらしい。

その後しばらくして夢のこともあんまり気にしなくなった頃、大変なことが起こる。
彼の高校生だった妹が、亡くなったのだ。
首吊り自殺だったそうだ。

彼のうちは田舎で、それなりの旧家であったこともあり、死因はとりあえず伏せてお葬式を出すことにしたらしい。
当然、首に痕が残っていたので布で巻いて隠した、という。

お葬式は大勢の参列者が来て、最後の別れとなった時だった。
お別れをしている誰かがその首の布に手を近づけた。
たまたまその様子を見つけた彼は、思わず叫んだ!

『触るなあ〜〜〜』



その後、あのときの夢に引き戻され、頭の中が真っ白になったと、彼は、ため息をついた。

そんな話を聞かされたおいらたちはたまったもんじゃない。
彼の友達は以前から知っていたようだが、場所が場所である。
真っ暗闇の山の中。
皆、言葉も出ない。

その時!

車の屋根が『ドンっ』と大きな音を立てたのだ!
誰?だれが叩いた?
えっ?俺じゃない、俺じゃないよお。
やめろよ〜、誰か叩いたろ〜?
やってないってえ〜〜
ホントに?
ホントに誰も叩いてないの?
じゃ、なによお〜〜
ぎゃああああ〜〜〜〜〜〜〜
4人ともシートにへばりついた。



 彼が作り話をしたのか、誰かが屋根を叩いて怖がらせたのか、今はもう、絶対分からないけど、あのときほど怖い思いをしたことは後にも先にも、無い。




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