旧パラを検証する163
第十三号 12
不完全作指摘「お愛嬌ルーム」の1月分と3月分の指摘点累計表が出ていたので、トップ(13点)は全員紹介それ以外は目に付いた方を記載しておきます。
13点 片野鶴声 百富稔
12点 吉野鳴南 川崎弘
11点 伊藤三雄 北原義治 高橋守 脇田博史
9点 渡辺一平
8点 一色健三 相馬夢龍
7点 岩谷良雄 宇佐見正 廬閑子 竪山道助 辰村純治 藁谷憲弘
6点 麻植鉄山 工藤紀良
5点 草柳俊一郎
4点 岩井則幸 岡村芳雄 落合健治 島哲夫 田代達生 山田修司
3点 三好泰造 大久保善人 小西稔 田中至
2点 植田尚宏 大塚敏男 片岡貞夫 高木秀次 平松繁治 村木徳 小西寛
長谷川佳邦
1点 佐藤次衛 篠原昇
川崎弘氏がこの頃から検討好きだったことが解ります。田中至氏も旧パラ読者だったことが解ります。
次に詰将棋学校の作品を紹介します。☆は担当者★は管理人コメント

幼稚園(イ)竪山道助氏作
34馬、22玉、44馬、イ同歩、34桂、33玉、32飛、同玉、42角成9手
イで33銀合は34桂、32玉、42飛、31玉、22桂成、同銀、同馬迄11手駒余りの変長
能条広司「幼としては好作」
児島裕「王様の嫌う馬を只進上と二回。三度目の馬で終り」
★後に珍形作家として有名になる竪山氏の初期の作品。34馬〜44馬の手触りが良い作品です。イの変長は痛いけど、変長を気にしなかった当時の作品としては好作だと思います。

小学校@湯村光造氏作
28金、同香成、27馬、同玉、26飛、同玉、36馬、15玉、25金、16玉、26金迄11手
笠倉弘道、福田昭二「引締った好作です。危く29金とする所でした」
黒川一郎「湯村氏一流の華麗な捨駒の連続」
★28金〜26飛の連続捨駒は他に手が無いとはいえ好手順です。

小学校D爪正紀氏作
33桂、同龍、53桂、同香、51金、31玉、43桂、21玉、13桂、同龍、31桂成、同玉、32金迄13手
担当:谷向奇道
☆使用駒飛2金2桂4香2、盤面駒と持駒との関係にも細い注意が払われている。手順はさして難解ではないが四桂の打ち捨てに手順前後の成立しない構図はよく出来ていて新人乍ら今後の精進を期待します。
飛鳥棋人「恐(香)竜と金鶏(桂)の取組はまるで「美女と野獣」そっくり、甚だよろし」
諸戸富彦「龍と桂の鬼ごっこ。ユーモラスな好局」
森若喜代志「力作!今月のトップとする」
川崎弘「金庫破り!」
★配置趣向だけでも価値があるのに、パズル的な手順で四桂全てが捨駒になる等傑作だと思います。短編名作選に漏れたのが不思議な作品です。爪氏は谷向氏の書き方だと新人だそうですが、この作品しか発表されていないようです。尚、T-BASEでは瓜正紀となっていますが、爪正紀が正しい。

中学校(C)落合健次氏作
37馬、同香成、36金、同玉、48桂、46玉、57銀、同玉、49桂、同と、68金、46玉、47銀、同玉、45飛、同馬、57金打、48玉、58金迄19手
村木徳「此の一局をみて私は落合氏に恋をした。一目ぼれと云う処、ラブレターでも送ろうか知ら、絢爛たる捨駒の妙を尽して余す処なし。純なる私のほれるのも無理ないでしょう」
松永真作「腹のへった時に大福餅を食ったようだ、名作々々」
東城賢吉「先生『本題は逆立しないと詰みません』生徒『ギョッ』一手一手小気味よし」
★15飛を取らせないように中央に誘導するのが配置から読み取れますが、その手順が37馬〜36金〜48桂です。6手目46玉の局面で57銀〜49桂として59とを動かすのが最終手と繋がる伏線手。13手目47銀が局面打開の好手で45飛の決め手の後、最終手58金で詰み上がりますが、この58金で詰め上げる為に9手目の49桂が必要だった訳です。初手37馬から9手目49桂までの5連続捨駒の後も鮮やかの収束で傑作だと思います。

中学校(E)藁谷憲弘氏作
48金、同玉、58飛打、49玉、38銀、同金、59飛、48玉、39銀、同金、58飛引、37玉、39飛、27玉、28飛、同と、36角、同馬、17金迄19手
高梨賢「今月随一の作品、巧手連続の妙作」
大谷方夫「ナカナカ好作デアル。殊ニ最後ノ飛角ヲ投捨テゝ17金ト止ヲ刺スアタリ誠ニ奇麗ナ詰」
高井英二「39金を上下させて玉の退路を制限する手段面白し」
水上弘「トコロテン式作品、初手を掴めば後は押し出される。従って腹にこたえない」
★飛車の上下運動は手が限られているとはいえ楽しい手順です。その後の飛角連捨の収束は鮮やかです。

高等学校(A)能村荘一氏作
83銀、同飛、62飛成、イ72桂、同龍、93玉、85桂、同飛、63龍、ロ73銀、94歩、83玉、72銀生、82玉、74桂、同香、71銀生、同玉、62龍迄19手
イ72角合は同龍、93玉、84角、同飛、94歩以下
ロ73香合でも良い非限定。T-BASEの作意は香合が入力されている。
ロ73金合でも作意と同様に詰むが同龍以下の詰みもある希望限定
担当 大橋虚士
説 明
巧局だと思う、七二桂合の玉方の応手、一旦龍を引寄せて九筋にて打歩とさせているのを、気付けばすぐ六三龍が容易となる。打歩詰を避けるために龍を二筋離す手段はよく用いられるのでそのためどこかでみた様な感じがあるとの評もあり。
神原健「六三龍が盲点、初手がすぐ目につくのが瑕、初手七二銀成の筋に作りたい。七三香の所七三金の方が変化があるがそれは詰方にも同龍の手を生ずるから手を限定する意味で香が本筋であろう」
山形義雄「一応は好作であるがどこかで見たような悪品」
★4手目の捨合が第一のテーマ。72角合だとイの気持ちの良い変化があります。9手目の局面では手が途切れたように見えますが、63龍の合駒請求が局面打開の手です。ロの合駒が非限定なのは気になりますが、合駒を動かしての詰みは見事です。

高等学校(C)茂又彰氏作
84桂、同銀、82金、同玉、81と、同玉、82金、同玉、74桂、92玉、93金、同銀、82金、同銀、同桂成、同玉、74桂、92玉、84桂、同歩、93銀、同玉、71角成、83玉、82馬迄25手
説 明
七一とを捌かないでは豊富な四枚金にても如何共詰がない。本局四枚金の打捨てが誠に面白い。構想は平凡かも知れぬが作物上難しいと思われる。十七手目74桂の時81玉、82銀、92玉、84桂、同歩、93銀成以下詰めし方多数あり。
これは誤りで82銀、92玉、91銀成捨以下の早詰み。
斯からビ細な点に迄注意を強要している。
一色健三「71とをのぞくためとはわかっているが93金の発見がむつかしかった」
西村英二「今月中最高と思う。81との手72玉と逃げられて不詰の如く直観して発見困難だった。」
★71とが邪魔駒な構成は巧いと思います。84桂、同銀として銀を逸らしてから71とを消去し、その後93金、同銀と銀を呼び戻しすのは面白いと思います。最後も84桂で締めくくります。持駒金4桂4の持駒を狭い範囲で上手く打捨て、易しい好作です。

高等学校(D)黒川一郎氏作
18金、同玉、28と、同玉、39龍、17玉、A27と、同玉、38龍、16玉、26と、同玉、37龍、15玉、25と、同玉、36龍、14玉、24と、同玉、35龍、13玉、12と、同歩、14歩、同玉、12飛生、13角、15歩、23玉、32飛成、同香、同銀生、12玉、21銀生、11玉、12香、21玉、32龍迄39手
Aで19龍以下18香合、16と、同玉、18龍、17香、26と、同玉、28香、16玉、27龍、15玉、26龍迄19手早詰み
★結果稿では、早詰み指摘のみで、手順解説や評の紹介はありませんでした。軽い送り趣向は黒川氏らしい手順です。纏め方も収束で飛生が入り良く出来ていましたが、簡単な早詰みでした。浪曼集でも改良作は出ていないようなので、修正図を作ってみました。34手目22玉、24香、12玉、23香成、11玉、21銀成、同玉、A32龍、11玉、12龍迄43手A32桂成、11玉、21成桂以下の迂回手順あり。

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