旧パラを検証する151
第十二号 11
今月から新体制になった詰将棋学校の作品を紹介します。幼稚園ニ眞木一明氏作より。

23金、同角、33銀、同桂、34桂、同角、23角成、同玉、35桂迄9手
33を塞がないと逃げられそうなのですが、どうやって塞ぐのかという問題で、23金として43の角の効きを外して33銀、同桂と塞ぎます。そして34桂、同角と逃げ道の壁にして35桂の吊るし詰。起承転結がキッチリとした手筋物の好作。
次に小学校3田代達生氏作

22銀、同玉、12飛、同香、52飛生、13玉、12飛生、24玉、26香、イ25歩、同香、同玉、36金、24玉、25歩、23玉、22角成まで17手
イで25桂合は同香、同玉、36金、24玉、16桂、23玉、22角成まで17手詰
原図は31香がありません。後年作品集「あさぎり」で31香の配置された修正図で収録されています。31香が無いと、53飛打、イ43歩、45飛、55桂、同角、同と、43飛寄成、22玉、32金、同馬、同龍、同玉、41角、33玉、42銀、24玉、36桂、13玉、14歩、同玉、11桂成、13玉、14香、22玉、12香成まで25手詰の余詰があります。
当時の解説では43合は詰むがイ22玉で詰まないとありますが、15飛、33金合、11飛成、32玉、43金、同金、22龍まで9手で詰みます。
詰み形が見えませんが、22銀〜12飛と攻方の駒から遠ざけるのが意外な正解手順。要は玉を12に誘導出来れば、15飛や52飛の筋で詰ますことが出来るのです。そして打歩詰を見越して52飛生〜12飛生の大きな飛車の動き。飛生自体持駒に歩が無いだけに面白い手順です。この時の小学校は田代氏が担当しており、担当者自ら自作を選んだだけあって、田代氏としても、自信のある作品だったようです。紛れもありダイナミックな好作です。
次は高等学校の古関三雄氏作

17龍、同成桂、21銀、23玉、32銀生、14玉、13金、同玉、22銀生、14玉、23銀生、同玉、13金、32玉、33銀成、同玉、44角、42玉、53銀、43玉、17角、33玉、44角、43玉、55角、53玉、65桂、52玉、63歩成、同玉、73歩成、52玉、53桂成、同玉、64角、同玉、74と寄、53玉、63と迄39手
大井美好「全駒活動の佳作銀及び生角の活用策はすばらしい」
池田達雄「全駒躍動好局就中角行の活躍は非の打ち処なし」
26に駒を打てるように17龍捨てから始まり、銀生の細かい捌きが序です。その後、序で捨てた17龍で逸らした成桂を剥がして55角に振り替えて最後は活躍した角を捨てての収束です。
全体的に気持ちの良い捌き作品で、好作といえるでしょう。
次に高等学校の鳥山忠氏作

42銀打、22玉、31銀生、33玉、32金、同角、42銀引生、22玉、31飛成、12玉、32龍、イ22銀、同龍、同玉、14桂、12玉、24桂、同歩、23銀、同玉、33銀成、同玉、11角、32玉、22角成、41玉、51歩成、同玉、33馬、41玉、42銀成まで31手
イ22角合は24桂、11玉、22龍、同玉、33角、21玉、12角まで19手
原広路「ありふれた手順乍ら巧妙」
金森洋介「14桂打あたり考えさせられた。Aからみれば大分やさしい」
51飛をいかにして世に出すかという問題です。どこかで32金、同角として飛車を世に出すのですが、それが42銀〜31銀生として32金と打つのがその解です。角を奪って更に銀合を食い千切り、14桂と打った時に、12玉とよろけるのが粘りのある応手。ここから24桂〜33銀成という手順は一寸珍しい打開の仕方で、以下は容易な詰みです。細かい捌きの作品ですが、初手42銀と打った銀が、42⇒31⇒42⇒33と活用されて消えるなど押さえるべきところは押さえた好作だと思います。
次も高等学校の大井美好氏作

13歩、同玉、22銀生、同玉、31角生、32玉、44桂、同歩、65馬、43桂合、42金、21玉、43馬、12玉、21馬、同玉、22歩、12玉、13歩、同玉、21歩成、31龍、25桂、12玉、13歩、21玉、31金、同玉、51飛、32玉、41飛成、22玉、A12歩成、同玉、13桂成、同玉、11龍、12合、25桂迄39手
Aで42龍、32香合、12歩成、同玉、32龍、22合、13香迄39手の余詰
西村英二「テーマのよく活きた作。案外スラスラと解けた。玉方の32歩を香にすれば(33手12歩成の処42龍32香合12歩成同玉32龍22香合13香迄の同手数詰にあるため)歩合が効くと思いますが」
手は少ないのですが、31角生は好手です。6手目32玉の局面で44桂〜65馬が打開の妙手順。14手目12玉の局面で手が途切れたように見えますが、21馬〜22歩と打ち換えるのがポイント。一見意味が無さそうですが、21歩成、31龍とさせて、龍を質駒にするのが収束に入る手段です。31金と飛車を入手すれば、以下は手順の詰みで、吊るし桂の詰み上がりとなります。
西村氏の評にあるように、余詰がありますが、32香にすれば良いようです。
捌きの大井の本領発揮の作品で、狭い範囲での粘り強い手順で、簡単な好作で、発表時に余詰があったのは、簡単に修正出来るだけに残念でした。
次は大学から奥薗氏の作品。

63飛、62金合、52金、同玉、41角、同玉、43飛成、42飛合、32金、51玉、42金、61玉、91飛、71歩合、A51金、同玉、B71飛生、61歩合、63桂、同金、C52歩、62玉、61飛成、73玉、63龍引、84玉、73龍、85玉、86歩、イ同玉、D77金、95玉、E96歩、94玉、34龍、44角合、同龍、同銀、F95歩、同玉、84角、85玉、75龍、94玉、95龍、83玉、93龍、74玉、73角成、65玉、66金、54玉、72馬、63歩合、同龍、45玉、G33龍、54歩合、46歩、同馬、54馬、同玉、46桂、45玉、H63角、46玉、36角成、57玉、67金、48玉、44龍、39玉、28銀打、同歩成、同銀、同玉、48龍、38飛合、37馬、17玉、18歩、16玉、46龍、25玉、36龍、24玉、16桂、23玉、24歩、22玉、55馬、21玉、54馬、11玉、44馬、21玉、43馬、11玉、33馬、22金合、同馬、同玉、32金、11玉、23桂迄105手
イ96玉で不詰
Aで73桂、同金、52龍迄17手早詰
Bで63桂、同金、71飛成、61香、同龍、同玉、63龍、62歩、52金、71玉、73龍、81玉、82歩、91玉、93香、92香、71龍迄33手早詰
Cで61飛成、同玉、63龍、62歩、52金、71玉、62金、82玉、72金、92玉、93歩、91玉、61龍迄33手早詰
Dで87歩、同玉、47龍、98玉、99金、同玉、97龍、89玉、98角、99玉、79龍迄41手早詰
Eで45龍、94玉、54龍、74歩、同龍寄、同馬、同龍、93玉、84角、92玉、93歩、81玉、83龍、82歩、92歩成、71玉、82龍、61玉、66香迄51手早詰
Fで67角、76歩、95歩、85玉、76角、96玉、87金、95玉、93龍迄47手早詰
Gで43龍、35玉、26銀、24玉、16桂迄61手早詰
Hで67角、46玉、44龍、57玉、55龍、47玉、58龍、46玉、47歩、35玉、55龍、24玉、44龍、25玉、26銀打迄79手早詰
早詰が限りなくあり、ボロボロの上、変化イにあるように簡単な不詰もある作品。
恐らく裸玉を作ろうとした時期の副産物だと思われます。Bの71飛生の順を発見して作品化したのでしょうが、その辺の中心手と思われる部分も潰れていました。
前後しましたが、この月から担当が土屋健氏になりましたが、選題は前任者の麻植氏でした。完全作は4作中次作の山田氏作1作だけでした。
次はその山田修司氏作。

97龍、89玉、98馬、79玉、88龍、69玉、87馬、59玉、77馬、49玉、67馬、39玉、57馬、29玉、47馬、19玉、79龍、18玉、29龍、17玉、18歩、16玉、38馬、15玉、14と、同玉、13桂成、同玉、35角、12玉、11桂成、同玉、21龍、同玉、23香、31玉、22香成、41玉、32成香、51玉、42金、同銀、61香成、同玉、71角成、同玉、72飛、81玉、73桂、91玉、71飛成、92玉、74馬、同銀、81龍、93玉、94歩、同玉、95歩、同玉、96歩、同玉、86金、97玉、87金、98玉、88金、99玉、89金迄69手
〇渡辺一平氏「玉の周辺巡り」とか「一周還元詰」とか、この点不滅の偉業を成し、看壽に亜ぐもの将来を予想すれば看壽以上になるかも知れません。驚くべき芸術として永久に残るものでしょう。
〇堤浩二氏「今月の大学で唯一の完全局だが、手順が平板で極めて手がないのは惜しい。この作者のものとしては愚作であり、このまま行けば作者は行き詰まってしまうのではないかという疑懼を私は抱いた。長篇詰将棋は唯玉が元の位置に来て詰む様に作ればそれでよい、と云う考え方には危険がある。妙手がほしかつた。
〇選者 詰将棋に対する相反する二つの考え方を端的に証明す可き絶好の課題である。本作品を見た時、可否両論の沸騰するであろう事を予想した。だが事実は堤氏以外の解答者は渡辺氏を代表する如く、総て好局なりと肯定した。此処に時の流れを見、感覚の推移を具現するものと心強く感じた。現在迄の考え方で言う「妙手」は本作品には一個も無い。だが私は九筋一筋と玉を追う手順を夫々一個の妙手と見たい。第二筋に外れる事なく逆もどりする事なく正確に辺縁を一周せしめる事は容易な業ではない。かかる作品に在っては単なる個々の妙手より、周辺を囲らしめる手順の方が先行す可きであるのは論を俟たない。尚現在迄の理念を以てすれば堤氏の言も当然であり、漠然たる追手の連続では意味がない。特に「極め手が無い」との一言は痛烈に本作品の弱点を突き、同感である。この点は頂門の一針として山田君も率直に受入れて頂き度い。兎に角「周辺巡り」の作としては確実に一歩一歩王を運行せしめた手腕は高く評価せねばならぬ。本作者の感覚は卓絶して居り、看壽の塁を摩するかどうかは知らぬが、早晩行き詰るとは考えられぬ。今後秀逸な作品を数多く世に問うであろう事は、信じて疑はない処である。
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何故命名が「鳩」なのかは全く解説されていません。山田氏の作品集「夢の華」10番でも
ありますが、そこでも命名の由来は書かれていません。堤氏の評は完全周辺巡りに気が付い
ていないのでは無いでしょうか?完全周辺巡りが珍しかった時代(本作は2号局)で主題が
簡明に表現された好作だと思います。

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