旧パラを検証する166
第十四号 1

81銀、同銀、82飛、93玉、42飛成、82角、同角成、同銀、75角、84歩、82龍、同玉、64角、81玉、72銀、同玉、73歩成、61玉、62銀、52玉、53銀成、51玉、62と、41玉、42成銀迄25手
解説:鶴田諸兄
説明 本局四二飛成が秘められた謎の手で、飛の成場所はこの一個所である。それは八二角合をせず八四玉と逃げた場合に関係がある。八二合せず八四玉と逃げた場合に、八五銀七五玉五三角成六五玉の時四五龍と引く手が必要なのである。四五龍以下では玉を逃がして了うから、四二の個所は飛成として唯一の場所である。又八二角合も作者狙いの一手でこの際最善。それは六四へ利かして五三角成に六四合とする手を狙った合駒である。この辺の攻防の綾の面白さは、作者の実力をイカンなく発揮して居る。八二龍と切ってからは比較的平易な追詰であるが初手八一銀と逆手をつき、四二飛成八二角合の謎を秘め、形もよく詰手順にも嫌味がなく、中篇ものとして近来の収穫であって、極めて好評でした。
〇解答者総数 五七二通
〇正解者数 二四九通
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柏川氏初期の傑作です。82飛としたいところを81銀〜82飛と凝った入り方をします。そして5手目42飛成が中心の構想手。この42に飛車が成る開き王手をするための、81銀、同銀で、初手82飛〜72飛成では、銀1枚得しますが、45飛成が出来ないので詰まないという構想です。42飛成に対しては、後に64に利かす為角合するのが見事な応酬。以降は割と平易に詰みます。柏川氏は今でも少し珍しい構想作で旧パラの表紙を飾り、柏川氏の出世作とも言える作品だと思います。
次は、第1回看壽賞の紹介です。当時の記事にプラスして、候補作も紹介するのは初めてかと思います。ただし、雑誌や新聞の掲載されたプロの作品の一部は不明です。
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詰将棋看壽賞入選発表
◎看壽賞

作者名 北村研一氏
掲載誌 詰将棋パラダイス昭和二十五年九月号に発表
命 名 「槍衾」
正賞 賞 状 副賞 賞金五千円也
◇長 編 賞
作品右に同じ。
正賞 賞状及本誌一ヶ年分 副賞 賞金三千円也

◇中 篇 賞
作者名 柏川悦夫氏
掲載誌 将棋評論昭和二十五年十月号に発表
二十三手詰
正賞 賞状及本誌一ヶ年分 副賞 賞金三千円也

◇短 編 賞
★該当作なし ☆次選として次の三作に賞金壱千円宛呈上
(1)
作者名 湯村光造氏
掲載誌 近代将棋昭和二十五年十一月号に発表
十三手詰

(2)
作者名 奥薗幸雄氏
掲載誌 将棋評論昭和二十五年五月号に発表
十九手詰

(3)
作者名 草柳俊一郎氏
掲載誌 詰将棋パラダイス昭和二十五年十一月号に発表
十九手詰

◇形 詰 賞
作者名 清水孝妟氏
掲載誌 近代将棋昭和二十五年十一月号に発表
三十五手詰
正賞 賞状及本誌一ヶ年分 副賞 賞金三千円也

◇大 道 棋 賞
★該当作なし
☆次選として次の作品に賞金壱千円宛呈上
作者名 村野南外氏
掲載誌 詰将棋パラダイス昭和二十五年九月号に発表
二十七手詰
◇一般読者推薦賞
◇長編賞推薦当選
〇本誌一ヶ年分(一名)
愛知県東春日井郡 豊岡文吉氏
〇ゴム印一組宛(二名)
新潟県大野町局内 萩野貞安氏 群馬県沼田局区内 通野泰二氏
〇入賞カード一枚宛(一〇名)
吉村泰典 大塚勝一 柴伯夫 下田哲也 北川二郎 大沼甫 石渡忠次 村岡一之
立古寛 北原義治 の十氏
◇中篇賞推薦当選
〇本誌一ヶ年分(一名)
島根県松江局区内 近藤登根氏
〇ゴム印一組宛(二名)
福島河沼郡 渡部正裕氏 山口県玖珂郡 益田秀男氏
〇入賞カード一枚宛 なし
◇短編賞 該当なし
◇形詰賞推薦当選
〇本誌一ヶ年分(一名)
宮崎県高鍋局区内 宇部春美氏
〇ゴム印一組宛(二名)
京都市一條通 石川広氏 その他は推薦者なし
◇大道棋賞 該当なし
☆一般読者の推薦が極めて少なく折角の賞品が夜泣きする結果となったのは遺憾でした。
昭和の看壽 北村研一氏急逝!
本号発表の通、第一回看壽賞は「北村研一氏」の「槍襖」と決定した。然るに、然るに、天寔に無常惨酷。天はこの英才を永久にこの世から奪った。時、昭和二十六年五月二十八日午前三時であった。
北村氏は母堂はなさん令姉静子さんの看病をうけて居られたが、五月二十八日夜十二時喀血、一言も発する能わず三時永眠された。
本会はその悲報に接し直に賞金八千円を贈ったが、遂にこの七月号を見られる事なく幽明境を異になされた事は遺憾であると共に、詰将棋大天才の死を衷心から痛惜する。謹みかしこみて哀悼の情を並べ、同氏の御冥福を祈る。
詮衡経過
衡委員の推薦作品整理した結果次のものが候補になった。尚作者の自薦はなかった。
☆
長編賞候補
@奥薗幸雄氏 近代将棋七月号
A宮越宗太郎氏 将棋世界三月号
B北村研一氏 パラダイス九月号
C二上達也氏 近代将棋十月号
☆
中篇賞候補
@柏川悦夫氏 将棋評論十月号
A北村研一氏 近代将棋九月号
B山田修司氏 近代将棋七月号
C土屋 健氏 パラダイス五月号
D田代達生氏 パラダイス九月号
E小林 豊氏 近代将棋十一月号
F酒井桂史氏 パラダイス十月号
☆
短編賞候補
@金田昭一氏 近代将棋六月号
A草柳俊一郎氏 パラダイス十一月号
B湯村光造氏 近代将棋八月号
C山田修司氏 パラダイス九月号
D山岡棋閑坊氏 パラダイス十月号
E大橋虚士氏 パラダイス八月号
F湯村光造氏 近代将棋十一月号
G奥薗幸雄氏 近代将棋九月号
H大山康晴氏 娯楽倶楽部三四月号
I塚田前名人 西日本新聞25,3,6
J脇田博史氏 パラダイス十一月号
K奥薗幸雄氏 将棋評論五月号
L野口益雄氏 パラダイス七月号
M塚田前名人 週刊朝日25年10月
N成田忠雄氏 将棋とチェス二月号
O北村研一氏 ラヂオテキスト六月
☆
形詰賞候補
@塚田前名人 週刊朝日25,11,9
A清水孝妟氏 近代将棋十一月号
B三好鉄夫氏 パラダイス十月号
C三好氏のイロハ字詰
D丸田 八段 中日ウイークリー25年1月1日号
☆
大道棋賞候補
@村野南外氏 パラダイス九月号
A草柳俊一郎氏 パラダイス十月号
B奥薗幸雄氏 近代将棋十二月号
C佐藤源助氏 パラダイス十月号
D三好泰造氏 パラダイス十月号
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☆長編賞
B北村氏作品へ16票@奥薗氏A宮越氏へ各1票の投票。北村氏の「槍襖」(七十五手詰)が圧倒的好評で代表的の評を左に
△二上達也氏「古今に例を見ない趣向図であり看壽賞に該当す」
△内藤武雄氏「タテの鋸引80点再度鋸引き20点計百点。形よく手数も二十五駒の三倍の七十五手で七五玉が七五にかへつて七十五手でちゃんと詰む。わしや負けました。」
△山形義雄氏「努力のみでは不可能で、このような天才的な作品に接したことを喜ぶ」
△その他各氏共絶賛の一手で、堂々看壽賞作品として推されました。勿論特一級の作品で後世に誇り得る作品でしょう。
☆中篇賞
中篇は接戦で@柏川氏が五票。A山田氏C土屋氏E小林氏F酒井氏が各二票。その他の諸作は一票づつでした。柏川氏の作品は所謂新傾向の作品で詰みそうな紛れ手多く近代的の感覚を持った秀作です。
☆短編賞
短編賞は三票を得たものが一点もなく二票一票と云う大接戦であり決定打がありませんので前記発表三作(二票獲得作品)を次選作品として選定しました。
☆形詰賞
A清水氏が八票を獲得断然一位でした。三好氏の一連の作品も選に上りましたが、その努力は認められるべきも相当の不完全作を含み居り、完成を持って何等かの表彰の対象となるべきものと思われます。
清水氏の作品評。
△板谷四郎氏「他にくらべて良ろしい」
△宮本弓彦氏「清水君は時に不詰や余詰を出して失敗するが七転八起、また快適な作品を創造する。人柄の良い彼を信用して本作を推す」
△谷向奇道氏「形詰においては屡々不動駒を生じ勝であるにも不拘全駒活動し手順又妙々。僅か九枚の駒で延々三十五手は巧妙です」
△秦泉寺晴彦「本局は形詰でなく共仲々の好作です」
☆大道棋賞
該当なしとするもの一〇票。@村野南外氏が五票でした。他にA草柳氏B奥薗氏C佐藤氏各二票。依って村野氏作を次選として採りました。
× × ×
☆賞金賞品等は本誌発行日より二十日以内に発送します。
☆本企画は第一回の事でもあり種々の不満もありましたが、各位の御熱援により茲に発表の運びとなつた事は感謝に堪えません。
☆本年度の各誌作品を授賞対象として第二回看壽賞を明年早々開催の予定であります。各位に於かれては今からその推薦の心組みで各作品を鑑賞あらんことを希望いたします。

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