旧パラを検証する118
第十号 百人一局集 9
第三十六番
京都市下京区高辻通烏丸東入因幡堂町六五五
糸商 二十四才
六級
中塚 仁郎氏作

32飛成、同玉、41銀、22玉、23飛、同玉、15桂、同歩、32角、22玉、23香、13玉、14金、同玉、22香成、13玉、23角成迄17手
★実戦形そのものですが、手順は詰将棋らしい順です。初手31銀や31角があり、取れば詰みますが11玉で詰みません。初手はズバリ32飛成。同玉の後の41銀も同玉なら23角、42玉、52金、同玉、62飛以下という変化もあるので、簡単には進みません。5手目の23飛以下は軽快な手順の連続で奇麗な詰みで、塚田正夫先生の作品と言っても通用しそうな作品です。この図だと、構図の広がりが気になります。84馬・82飛は61と・52飛位の配置でも作意は成立しますが、紛れを考えるとこの図になるのでしょうか?
中塚氏は旧パラ1950年〜1951年に7作、パラ1954年に1作発表作がありますが、本作以外は全て大道棋です。
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第三十七番
新潟市外青山信楽園恩賜二号
無職 二十二才
十級前後
棋田 迷児氏作

A62飛成、同玉、51角成、63玉、73飛成、54玉、44馬、同玉、33馬、54玉、66桂、同銀、44馬、同玉、64龍、54香、56桂迄十七手
A73飛成、同玉、51角成、74玉、75馬、63玉、52飛成7手の早詰あり
☆本図は作品第一号として二十五年四月頃将棋世
界へ投稿したが発表されなかったもの
☆本局原図は攻方五一龍でしたが九二飛に改正しました。
★投稿図は92飛は51龍だったが61龍と合駒を稼ぐ手があるため、鶴田主幹が92飛配置にしたため早詰になったもの。82飛にして玉方81香追加で修正可能。
不完全指摘は「沢田夢考 木村直彦 黒崎精一 川崎弘 望月秋作 石井藤雄 河合宏茲」
勝手に修正して載せるのは、鶴田主幹はよくやっていましたが、作者に対して大変失礼な話ですし、今回のように不完全だと取り返しがつかなくなります。
将棋世界に投稿しても採用されなかったのは、原図で61龍とする手があるからだと思います。
棋田氏の本名は不明です。結核で療養中だったようです。発表作はこの1作のみです。
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第三十八番
愛知県一宮市北園通三の二二
教員 三十才
五級−七級 全くの処女作でお恥ずかしい
野村 幸一氏作

24飛、イ23香、33歩成、同玉、44馬、24玉、25歩、14玉、15銀、同玉、27桂、16玉、17金、25玉、26金、24玉、15金迄17手
イ31玉は22金、41玉、32金、51玉、52銀、同玉、63銀、61玉、21飛成、51歩、72銀成、52玉、41龍迄
イ23桂は33歩成、同玉、44馬、24玉、36桂、14玉、15歩、同玉、26金、14玉、25銀迄
イ23飛は作意と同手順の変同
★24飛に対する受け方がヤマで、イの23桂合の変化にならないように、2筋に効かす香合(飛合も可)が最善です。以下33歩成に同銀なら21馬以下という変化は一寸良い変化です。それ以降は香筋を回避して、駒を打尽くして詰みます。2手目の変化読みだけで終わってしまうので、竜頭蛇尾な感じです。
野村氏は1951年に旧パラ2作、詰棋界に2作の計4作の発表があります。手数は13手〜29手です。
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第三十九番
徳島県那賀郡桑野町字中野
食料配給公団委託配給 二十六才
一級
喜多 貞夫氏作

32歩、同銀、同角引成、同金、21飛、同玉、22銀、同金、同桂成、同玉、21飛、13玉、12角成、同玉、22金、13玉、23金迄17手
★初手32歩に対して同金だと作意と同様に進んで、5手目の21飛が焦点の捨て駒になる所は面白いと思いました。11手目2度目の21飛が決め手ですが、1度目の21飛は玉が31で2度目は玉が22という対比も良いと思います。
初手からの精算手順は2手目の変化もあるので、善悪は微妙ですが、私なら4手カットします。
また、33歩⇒33桂にすれば25銀を省けると思います。
喜多氏はもう1作旧パラに17手詰を発表しておられます。
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第四十番
岡山県吉備郡総社町大字総社三五七地
菓子、種苗商 二十四才 六級
大山後援会特別会員
平田 昇氏作

23馬、同玉、24歩、同玉、A36桂、13玉、31馬、イ22歩、24銀、12玉、23金、同歩、同銀成、同玉、41馬、ロ32合、24歩、34玉、35金迄19手
A16桂でも良い非限定
イで香、銀、金の合駒でも良い、合駒非限定
ロで銀、金、角合し、以下24歩、12玉、23金以下2手変長
★初手43馬寄で詰みそうですが、作意順の31馬として銀を補充する手順が無くなるので、いきなり23馬とするのが正解です。以下31銀・41金を取ってしまうのは意外な手順です。
Aの非限定やイの合駒非限定も痛いが、ロの変長は今なら激痛の欠点ですが、当時は気にしていなかった様です。
平田氏の発表作は本作のみです。

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