旧パラを検証する116
第十号 百人一局集 7
第二十六番
東京都世田ケ区玉川中町二の四一四
会社員 二十七才
一級 既書に「詰将棋の考え方」あり現在「ズバリ詰将棋相談」を執筆中
【曲詰三】
村山 隆治氏作

46金、同玉、36飛、45玉、34銀、同金、56銀、同金、A46飛、54玉、B43飛成、64玉、54金、同歩、53銀迄15手
★初形曲詰で、手順もそこそこだと思いますが、壁駒の不動駒は気になります。ところで、本作は余詰があり当時から指摘されていました。Aで46銀、44玉、35銀、同金、34金、45玉、35金、54玉、56飛、64玉、55金迄19手とBで56飛、55金、同飛、64玉、54金、同歩、同飛、同玉、43銀、53玉、52金、44玉、34銀成、45玉、55金、46玉、36金迄27手の2種類の余詰です。指摘者は玉井定右エ門、石井藤雄、下田哲也、草柳俊一郎。又、下田氏からは次の指摘がありました。
☆尚下田氏より本局は同氏作の第十九番と作意に於て似ているのは偶然の暗合かと疑問符を付していられる。
★下田氏の十九番は百人一局集の第十九番のこと、これを類似作にしたら、きりがないと思う。似ているのは56銀〜46飛とする部分だけで、これは類似作とは言えないでしょう。でもこの取り上げ方は村山氏が盗作したかのような書き方で、良い書き方ではないと思います。同じ百人一局集の作品を盗作するのは無理な話で、偶然の一致としか言いようが無い。
そもそも全然似ていないし、出来は下田氏の作品の方が良いですし、、、。
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第二十七番
兵庫県芦屋市公光町一五
神戸経済大学一年
六級
宇佐見 正氏作

22銀、23玉、15桂、同歩、13銀成、32玉、23成銀、同玉、21飛成、22桂、13金、同玉、14銀打、同桂、24銀、同角、25桂迄17手
★玉方14歩が15歩なら14銀打で簡単に詰むので、それを目指して、22銀〜15桂〜13銀成とします。32玉に対しては23成銀として23に玉を誘致し、21飛成として桂合をさせ、その桂合を跳ねさせて吊るし桂の清涼詰。桂合以降は今やワンセットの詰方ですが、当時は珍しく、纏まった好作だと思います。
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第二十八番
名古屋市南区星崎町繰出六三
会社員 二十三才
棋段級 なし
蟹江 悦蔵氏作

42飛成、13玉、A22龍、同玉、21金、13玉、14金、同玉、26桂、15玉、35飛、24玉、25飛、13玉、15飛、24玉、25角成迄17手
★3手目の局面で何かもう一枚駒があれば14に駒を捨てて詰むので、22龍〜21金として桂を入手して14金と捨てるストーリーです。そうであるのなら、Aで15飛として合駒を稼ぎに行くとどうなるかという考え方も出来ます。実際その手順で早詰なのです。Aで15飛、14歩、同飛、同玉、12龍、同香、25金、13玉、14歩、22玉、21金迄13手駒余り。こちらを作意にしたいような手順です。(ただ14桂合だと同飛以下変同になりますが)当時からこの早詰は解っていて、指摘者は草柳俊一郎、沢田夢考、望月秋作、河合宏茲の諸氏。
蟹江悦蔵は後のパラ同人作家の蟹江義長氏のペンネームかと思うのですが、確信が持てません。蟹江悦蔵氏名義の作品は、1950年〜1956年に詰将棋パラダイスに9作発表があり、手数は3手〜17手となっています。
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第二十九番
愛知県知多郡横須賀町高横須賀
名古屋鉄道株式会社社員 三十九才
初段
伊藤 吉一氏作

41角、33玉、23角成、44玉、55金、35玉、24馬、26玉、37金、16玉、27金、同桂成、11飛成、26玉、15龍、36玉、46馬迄 17手
★追い詰で妙味が無い作品です。この作品を見ると完全作ならどんな作品でも載せたのかな?と思います。
伊藤氏は1938年4月に将棋世界に初入選し、それ以外は1950年〜1951年に旧パラに4作の計5作の発表作があります。手数は7手〜19手で短編作家でした。この作品が最後の発表作ですが、一番出来が悪いと思います。
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第三十番
福島県石城郡赤井村高萩上代
無職 二十才
八級
藁谷 憲弘氏作

23香成、14玉、13成香、同玉、24飛成、12玉、13歩、同桂、22龍、同銀、24桂、21玉、31歩成、同銀、22歩、同銀、32銀成迄17手
★24香の邪魔駒消去の導入は良いと思います。その後も飛車捨ての入る捌きで纏まった軽作だと思います。惜しむらくは紛れが皆無なことでしょう。
藁谷 憲弘(ワラガイ カツヒロ)氏は1949年〜1953年にかけて活躍され、19作の発表作があります。発表誌は旧パラ、将棋世界、将棋評論、近代将棋で、手数は7手〜39手です。

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