旧パラを検証する114
第十号 百人一局集 5
第十六番
青森県北津軽郡嘉瀬村大字毘沙門下熊石七
農業 満十九才 棋段級なし
処女作は昭和二十四年八月号将棋世界に発表
杉山 治氏作

63銀、同飛、42金、同玉、51角、52玉、62角成、同玉、74桂、52玉、53金、同飛、72飛成、51玉、62龍迄15手
☆詰将棋に志してから日が浅いが詰の深遠さ玄妙さに全く魅了され労働に従事してからの憩は詰棋。処女作は昭和二十四年将棋世界八月号に発表されました。
★63からの逃げ道をどう塞ぐかという問題ですが、その退路に63銀と捨てるのが急所で同飛と取る一手でグンと狭まった感じです。次に51角を狙っての42金が二の矢。ところが、同玉、51角、52玉の局面で手が止まることになります。ここでの62角成〜74桂が見え難い手順です。最後も63に移動させた飛の利きを外す53金で締めくくり纏まった好作です。
杉山氏は1949年〜1954年にかけて将棋世界、将棋評論、詰パラに10作発表されておられます。短編〜中編まで発表作がありますが、力の入った中編作品が印象に残ります。
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第十七番
名古屋市瑞穂区白龍町三の六
日本車輛株式会社ボール盤工 二十五才
棋段級なし
友松 進氏作

24飛、31玉、53角成、同香、21飛成、42玉、51銀、同玉、63角成、42玉、41馬、33玉、23龍、44玉、34龍迄15手
★初手24〜29のどこでも良いのは感じが悪いです。3手目53角成が駒取りなので、持駒を飛銀にして、71角を無くすような構図にすれば良いと思うのですが、、、。狙いは打った飛車を21に成捨てるところでしょう。42玉と逃げた時の51銀の決め手は良いのですが、以下龍で追い回しての詰上がりというのは、当時はおおらかという感じだったのでしょうが、今ではダレと受け取られてしまいます。
友松氏はこの作品1作しか発表は無いようです。
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第十八番
東京都中野区昭和通二の二の二八
学生 満十八才
金沢 満氏作

82飛成、同玉、72金、同銀、71銀、同玉、62金、同玉、52金、71玉、62金打、82玉、72金、92玉、81銀迄15手
★いかにも初めて詰将棋を作りました、という手順です。72金〜71銀の捨駒はありますが、他に手が無く、13手目も作意は72金ですが、普通は72銀成としてしまいそうです。実際T−BASEは72銀成と作意順とは違う手順が入力されています。(それはそれで問題ですが)
金沢氏は本作が初入選で、1951年〜1954年にかけて近将1作、詰棋界4作で本作を合わせて6作の発表作(手数は7手〜19手)があります。正直言って本作の出来が一番良くないです。
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第十九番
仙台市本町一六 下田耳鼻科内
新制高校生 十七才
棋段級なし
下田 哲也氏作

59飛、48玉、39銀、同と、49飛、同と、39銀、同と、59金、57玉、68銀、47玉、25角、同龍、46金迄15手
★中々巧妙な作品です。39に逃がさない為に59飛は当然ですが、2手目48玉で既に難しい局面になります。ここで39銀〜49飛の三手一組が主眼で、49飛は同桂成の変化もあり、妙手感が増します。(同桂成は37銀、57玉、68角以下13手で詰)同とに再度39銀、同と。一見何をしたのか良く解りませんが、要するに39を塞いで59金という手順で詰まそうという構想なのです。以下も25角捨が入り、好作だと思います。ただ、配置がもう少しどうにかならないものかとは思います。
下田氏は1951年1月〜1952年1月に旧パラに本作を含めて4作、近将と詰棋界に1作づつの計6作の発表作があります。(手順は7手〜25手)本作が初入選作なのですが、一番出来が良いと私は思います。
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第二十番
北海道帯広市西一條南八丁目 清水建設内
市立三條高校普通科生 十六才
棋段級なし
米津 正晴氏作

26桂、イ同銀、24飛、15玉、27桂、同銀成、26銀、同成銀、14飛、同玉、15飛、同玉、33角成、14玉、24馬迄15手
イ同歩は25銀、同玉、35飛、14玉、15飛、同玉、24銀、25玉、35飛、14玉、15飛迄
これは今の作品と言っても通用しそうな作品です。こじんまりとした配置で26桂、同銀としたその26銀を成銀にして収束に持ち込むという作品で、それを実に簡易に表現しています。飛車を2枚とも捨てる構成も良いですし、完成品です。
米津氏は1950年〜1952年にかけて多数作品を発表されました。発表先は将棋世界・近代将棋・旧パラ・将棋評論・王将(旧)で手数は7手〜81手ですが、短編〜中編の作家です。
この時期の中心的な作家の一人と言っても良いでしょう。内容も今見ても面白い作品も多く、見直されて良い作家の一人だと思います。発表数は40作弱、最終発表は近代将棋1967年2月号となっています。

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