旧パラを検証する106
第十号12
各誌各紙詰もの紹介欄・・・プロ棋士の新聞や雑誌載っていた詰将棋の紹介。
その中からE河北新報第35回渡邊八段(渡辺東一)作を紹介します。

34桂、13玉、A35馬、24飛、33飛成、同桂、31角、12玉、23桂成、同飛、13馬、同飛、22角成迄13手
Aで35角、24歩、同角、同玉、25歩、同銀、21飛成、34玉、25龍、33玉、23龍、42玉、54桂、52玉、62馬、41玉、32銀迄19手の余詰あり
結構面白い作品ですが、余詰があります。ところで、何故余詰作品を取り上げたかというと、近代将棋一九五三年新年特大号第二付録「詰将棋短編傑作集」第7番北原義治氏作の次の作品があるからです。

46角、24飛、33龍、同桂、31角、12玉、23桂成、同飛、13馬、同飛、22角成迄11手
「詰将棋短編傑作集」は当時の50人の作家が新作の11手迄の作品で1位を競う企画で、この作品が1位になりました。この類似については、私がこの図をネットで紹介した時にEOG氏から指摘されました。問題は旧パラに出ていたことから、渡辺作を北原氏も知っていたのではないかという疑問がわきます。私が思うに、元々この素材は北原氏も持っていて、短編傑作選に合わせて丁度良い手数の作品を引っ張ってきただけの様な気がします。渡辺作も知っていたと思いますが、渡辺作が不完全だったことと、手順自体は自分で考え出したことから発表したのではないかと推測しています。ただ、この作品面白いことに、後に作品集「独楽のうた」第二番で収録された際には初手が35角と記載されています。初手の非限定は35角が捨駒になるだけに痛いと思います。持駒の角を26角と配置すれば初手35角を限定出来ますが、それでは不満だったのでしょうか?
懸賞募集 創作型大道棋予選発表 第四回(完)
新しい形の大道棋を創作するという企画の第四回、今回は第二十一番から第三十番迄の発表です。4回に分けて発表した作品によるコンクールということで、その概要を引用します。
コンクール投票 三〇局の作品を通覧し大道棋としてあらゆる観点から最優秀と思われるもの一局を選定して投票して下さい。
☆投票賞 投票者の中、入選作品五位迄の作品の作品価値順位に最も近き投票をされた方を一位とし以下の如く呈賞する(同順位は抽選により決定)
一位 黄楊彫駒(正山作磨上特別品)一組
二位 黄楊彫駒 一組
三位 同 一組
☆入選作品賞
第一位 榧製将棋盤 一面
第二位 黄楊上等駒 一組
第三位 黄楊駒 一組
第四位 駒台 一組
第五位 将棋駒 一組
第六位以下入選作全部 粗品
ところで、旧パラを検証する72にあるように、7月号での投票形式は、各作品を一〇〇点満点で全作品を評価することになっていたのですが、今月の規定では最優秀作品1局を選定とあり、訳がわかりません。ただ本号でも「作品価値順位に最も近き投票をされた方を一位」と書いてあることから、書いてないけど点数は付けるということなのでしょう。つまり、「最優秀と思われるもの一局を選定して投票」は誤りなのだと思います。実際5月号の結果発表では点数順に順位が付いています。この矛盾については誌上で全く触れられていないようです。
今回掲載作品から入選作を紹介してみよう。

第二十一番の藤倉満氏作
82銀、92玉、95香、94角、同香、83玉、A61角、72歩、93香成、84玉、73角成、同歩、94角成迄13手
34点で7位(5位までが順位がついていて、この作品は入選扱いで順位は付いていない)
大道棋というよりは普通作品ですが、時代を考えれば好作だと思います。4手目94角の移動中合はこの当時は珍しい手で、今でもいい感じです。唯一の紛れがAで93香成とする手で、以下72玉、73角成、61玉、43角、52飛合で逃れます。(以下71銀成、同玉、82成香、同飛)61角が好手で、72歩合も限定合で香合なら73角成、94玉、72角成以下早く詰むのです。そして73角成と角を捨てての収束で、実際詰将棋として見るとこの作品が一番良いと思います。藤倉氏初期の好作として作品集「四万十」の第十一番にも選ばれています。

第二十二番の谷向奇道氏作
21香成、同玉、22飛、11玉、23飛生、33馬、12歩、同玉、13飛成、21玉、31香成、同玉、33龍、21玉、12角、11玉、31龍、12玉、13金、同玉、14金、同玉、34龍、24歩、23銀、13玉、25桂、同銀、14歩、同銀、同銀成、同玉、25銀、13玉、24銀、12玉、23銀成、A11玉、12歩、21玉、32龍迄41手
26点で11位
作者「型はやや重いが飛角の捌きを中心に駒の捌ける処を狙って作図しました。」
作者の狙いにあるように、大道棋として作られた作品では無いので、このコンクールの応募する姿勢はどうなのかと思います。しかもAで31龍や14龍で駒が余る余詰がある。作品の収束が纏まらなかった普通作品を大道棋なら収束乱れてもOKなので応募したような作品だと思います。しかも、紛れが殆どありません。完全に失敗作だと思います。

第二十三番の飛角妙桂氏作
52歩、41玉、31香成、同玉、34香、33飛、42金、同玉、33香成、52玉、53飛、62玉、83飛成、44飛、53角、52玉、42成香、同飛、同角成、同玉、46飛、32玉、43龍、22玉、26飛、31玉、33龍、32角、23桂、41玉、46飛、イ43角打、同飛成、同角、同龍、42金、52角、51玉、42龍、同玉、43金、51玉、42角、62玉、53角成、73玉、63馬、84玉、74馬、95玉、85馬迄51手
28点で10位
イ43歩合で同飛成、同角、同龍、42金合以下不詰
実戦には不向きとしか思えない初型で、手順は一本道。唯一考えるのは、21手目46飛と限定打を放つところ位でしょうか?しかもどうやらイ43歩合で詰まないようです。

第二十五番の佐藤源助氏作
59香、62玉、53飛成、72玉、92飛成、82金、83龍寄、61玉、A91龍、81桂、52香成、同玉、82龍引、62歩、43金、41玉、81龍、51桂、同龍、同玉、53龍、61玉、52金、72玉、84桂、82玉、94桂、81玉、83龍、91玉、92龍迄31手
A52香成、同玉、82龍寄、62歩、51金、同玉、53龍、41玉、71龍、32玉、62龍引、21玉、23龍、31玉、32龍迄23手早詰
67点で1位
「作者曰
@駒数盤面四枚持駒一枚計五枚で三十一手詰
A二枚飛車の威力ですぐゆきそうで且つ八五歩を拂う方向に攻め易い。
B合駒四回、変型合駒一回
C一連の好手筋(中合強要の俗手一度打った香の成捨から軽妙な金打ち、龍切りがそれ。)Dユーモラスな味を狙った。」
一位の作品です。初手92飛成や3手目92飛成等の紛れもありますが、作意順にはスンナリ入ると思う。問題はAの早詰順で、作意順より指してしまう手順。作者は51金を見落としたのだと思います。

第二十六番の熊沢国男氏作
12銀、同玉、52飛成、42角、22金、同飛、同銀成、同玉、42龍、23玉、45角、24玉、22龍、15玉、A25飛、16玉、17歩、同玉、27飛、18玉、28飛、17玉、26龍、同と、18飛迄25手
Aで16歩、同玉、34角、17玉、16飛迄19手早詰
30点で8位
これも、紛れはありませんが、詰将棋としては面白い。42角の移動合から、45角の限定打をしてエレベータっぽい詰将棋で飛車捨てが入る纏めが巧かったのですが、Aの早詰の見落としは酷いですね。ということは、45角とせずに56角より遠い以遠打でも詰むということで、全然成立していないのでした。

第二十七番の栗原吉尹氏作
33飛成、17玉、18歩、同玉、19金、17玉、37龍、27桂成、35角、26角、同角、同飛、39角、28角、A同角、同桂成、同金、16玉、43角、15玉、26龍、同成桂、16飛、24玉、26飛、35玉、47桂、44玉、46飛、45歩、36桂、43玉、45飛、32玉、33歩、同桂、同銀成、同玉、25桂、22玉、42飛成、32歩、33桂成、21玉、32龍迄45手歩余り
Aで同金、同桂成、同角、16玉、43角、15玉、26龍、同成桂、27桂、14玉、15飛、24玉、46角迄27手の早詰
28点で9位
これも、紛れは無く、玉方の妙防が面白い普通作品。
Aの早詰手順がありましたが、こちらは駒が余らないので、こっちを作意としたい感じです。普通作品としてその手順なら良いと思うのですが、、、、。

第二十九番の谷向奇道氏作
94飛打、83玉、88香、同銀成、イ86香、84桂、A同飛左、92玉、ロ94飛、93桂、82香成、同香、93飛成、同玉、94銀、92玉、84桂、91玉、83桂、同香、92桂成、同玉、72飛成、91玉、61龍、82玉、62龍、72飛、74桂、81玉、82歩、91玉、93香、92桂、81歩成、同玉、92香成、同飛、同龍、同玉、72飛、81玉、82飛成迄43手
A同飛右、73玉、82飛成、同香、64銀迄11手早詰
36点で6位
第二十八番〜第三十番は谷向氏の姉妹作で、イで84飛左、92玉、94香、93角合と進む作品(第三十番)。
ロで82飛成、同香、同香成と進む作品(第二十八番)に分岐します。ただ本作品はお粗末で、Aの早詰の見落としは酷いです。
結局この企画、新しい大道棋として発展性のあるものは殆どありませんでした。唯一の例外は第3番・4番の一色健三氏の作品で、私や加藤徹氏が改作しました。
(旧パラを検証する72参照)

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