旧パラを検証する86
第九号3
前回に引き続き、つれづれ草のコーナー(読者サロン)から。
詰将棋の検討 麻生 鉄山・・・他紙のアマの作品(将棋世界掲載)に対する余詰め指摘。
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駒余りと最長手順 野村幸一
詰将棋の憲法は一日も早く作られなければならぬが、仲々の難事であろう。囲碁の憲法はどうやら出来たらしいが、詰将棋の方の憲法草案はどんなものが出来るか楽しみにしている。何れにしても「妙手」というようなアイマイな観念を憲法に持ち込むことは難しいから、手順の長さと最後に駒が余るかどうかということが決め手になるように思う。どうやら現在の常識では駒を余さぬ詰め方の中で最長手順のものを正解とし、之が二つ以上ある時は何れも採るということらしい。
然し之だけでは不十分で、種々な議論の余地があるが、その中で最近気が付いた二つばかりの例をあげて、憲法作成の参考に供したいと思う。

例(1)は本誌九月号お愛嬌ルーム欄に載っていた塚田前名人作のものである。作意は三五桂、三二玉、四三金、三一玉、二三桂、二二玉、三三金、同玉、一一角、二二合、三四金、三二玉、四三飛成迄十三手詰とある。之がお愛嬌になるかどうか知らないが、二二合の所之では後三手で詰がみえているから玉方とすれば二三玉又は三二玉と逃げるが当然と思われる。然しそれでは以下二二金、三三玉、二一金、二三玉、二二角成となつて手数は長くても桂が余ると言われそうだが、それなら二一金で一二金の順で十五手詰が正解かと言われると、之も私には疑問で幸い何れでも直ぐ詰むからいいようなものゝ、若し先にまだ続くとすれば、詰方としてはおなじなら当然有利な桂を取る順が正しいと思われ、わざわざ取れるものを取らずにおいて、之で駒が余らぬから正解というのも変なものだと思う。(「将棋世界」十月号の渡邊謙司氏作のものも之と同じ問題を含んでいる)それは兎も角又前に戻って、二二合の所極端な場合を考えて若し二二合では頭金で詰むとしたら、それでも玉方は合駒をせずに逃げては詰方が駒を余して可哀そうだからと甘んじて頭金を受けるのが正しいだろうか、そんな例も作れると思うが、一手でも三手でも事は同じではないか。

例(2)は同じく本誌九月号研究科の栗原吉尹氏作のもの。この解は九六香、九五角合、九三銀成、同玉、九五香、八三玉、九四角、九三玉、七三飛成、同香、六一角成、八二玉、八三銀、八一玉、七二馬迄十五手詰で一歩余りだと思うが、この一歩余りは大道将棋限り許されるらしい。憲法という以上こういう大道将棋にも論及して貰いたいが、ここで問題とするのは八二玉の所で九四に合をすることの如何である。勿論何を合駒しても同馬、八二玉、八三銀、八一玉、七二銀不成、八二玉、八三馬迄で詰むが、普通二手延びるだけの合駒は無駄手とされていても、この場合は四手も延びるし、九四同香ならば八四玉として詰まぬから合駒をする意味は十分あると思う。但し之によると十九手詰で歩と合駒の二つが余ることになる。持駒余りをどの程度まで認めるか、この九四合は正しいかどうか。
本稿は問題を提出したばかりで何一つ結論めいたものを出してないが、まだまだこの様な疑問はいくらでもあると思う。こんなのは詰将棋として不完全だ等と逃げないで、どんな不完全でもいやしくも詰む以上は、こういうのが正解だとはっきりしてくれる詰将棋憲法の成立を希望したいものである。
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野村氏の考察は時代を考えると鋭いです。例1では変長・変別、例2では合駒絡みの変長という問題提起で、今でも完全に解決しているとは言えないところが何とも、、、。やはり減価事項という扱いしかないのかもしれません。
次は「私の好きな詰将棋 ―金八段作品 梅歩桂香(堺)」これは、金八段の作品の紹介で、力作が多いので不完全作も含めて全作紹介してみましょう。(原文には不完全指摘は当然ありません。)原文は作品紹介のみですが、解説を付けてみました。

74飛、同玉、85角、83玉、94角、74玉、84飛、同香、66桂、63玉、52銀不成、53玉、62銀不成、同玉、61角成、53玉、43銀成、同香、52金、63玉、62馬迄21手
7手目84飛が焦点の捨て駒で鮮やかです同香だと作意順、同角だと86桂以下作意順に戻る変同もこな場合味があるような気がします。その後も2回の銀生が入り先ず先ずの纏まりと思う。

55金、同銀、54銀、同桂、44金、同玉、62角、同金、24飛成、53玉、54龍、42玉、
A34桂、31玉、B23桂、同馬、51龍、41馬、42桂成迄19手
手の付け方が難しいところですが、55金で退路が塞げます。残る53からの遁走を防ぐ手段が54銀〜44金〜62角の3連捨。これだけ見れれば十分で以下も無難な纏めでしたが、Aで34桂打、31玉、22と、同銀、同桂成、同玉、24龍、23金、34桂、21玉、22銀、12玉、13銀成以下やBで22と以下Aと同様にして詰む余詰がありました。惜しいです。

27金、同馬、47馬、26玉、38桂、同馬、36馬、15玉、27桂、同馬、16銀、同馬、27桂、24玉、35馬、14玉、25銀、同馬、13馬、同玉、12飛、24玉、34銀成、同馬、
15飛成迄25手
今回一番の好作で、時代を考えれば、中篇名作選に選ばれても良い作品だと思います。初手27金の好手から入り、桂で馬を翻弄しながら引き寄せ、34銀をさりげなく捨てておく伏線は34銀成とする為。馬が38⇒27⇒38⇒27⇒16⇒25⇒34と一歩づつ6回も動く。そして意味ありげな43〜25の銀のラインが消え、途中まで攻方の主役だった馬迄消えての収束。文句なしの好作だと思います。この作品が知られていないのは可笑しなことです。
附記:元ネタは玉図五十一番らしいが、馬の動きや銀の邪魔駒消去なども入り、別な仕上がりだと思う。

37成香、同玉、47金、26玉、37金、同玉、27金、同銀不成、47馬、26玉、38桂、同銀不成、36馬、15玉、27桂、同銀不成、16銀、同銀不成、27桂、24玉、46馬、14玉、47馬、24玉、57馬、14玉、58馬、24玉、68馬、14玉、69馬、同成香、15歩、24玉、36桂、34玉、43飛成、25玉、45龍、26玉、37金、同玉、47龍、26玉、62馬、同飛、37金、25玉、45龍迄49手
この作品は名作ですね。玉方銀生+57金消去(馬鋸の邪魔をさせない為の伏線)+馬鋸とは良く出来ています。
金八段の作品紹介に戻ります。

84銀、同飛、64馬、同飛、85桂、82玉、93銀、83玉、65角、同飛、84金迄11手
駒数は多すぎますが、手順は悪くない。でもやっぱり駒が多すぎる。

65飛、同銀上、74金、同歩、82角、同金、55銀、75玉、86金迄9手
これも手順は先ず先ずですが、駒が多すぎます。

33角成、同玉、34金、同銀、23龍、同銀、同角成、43玉、33馬、同玉、34銀、44玉、45金、53玉、63歩成迄15手
まあ、ほぼ絶連に近いのですが、大駒が全部捌けて良い感じだと思います。

これは疑問局です。パラに紹介されている図だと持駒が金2銀桂歩です。つまり、金が5枚もあります。そして手順は、
93歩成、同香、92金、同玉、84桂打、82玉、73銀、同玉、74歩、同玉、65金、同玉、55馬、同玉、56金、44玉、34と迄17手です。65金と捨てなくても75金と取れば簡単です。どなたか、正図を推理出来ないでしょうか?

75飛、同玉、76銀、同と、85金、同銀、63歩不成、74玉、62歩不成、イ41金左、64角成、83玉、84歩、72玉、54馬、71玉、61歩成、同金、同香成、同玉、72金迄21手イ52香合だと64角成、83玉、84歩、72玉、63馬、71玉、61歩成、同金、62馬、同金、同香成、同玉、52角成、72玉、62金迄25手になる。
これは酷いパクリです。元図は将棋無双49番

85金、同銀、63歩不成、74玉、62歩不成、41龍、64角成、83玉、84歩、72玉、54馬、71玉、61歩成、同龍、72歩、同飛、同馬、同龍、82銀成、同玉、92飛、71玉、72飛成、同玉、52飛、71玉、62飛成迄27手
序は加わりましたが、明らかに改悪ですねえ。

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