2009/2/20

長安黙示録 第1話  ニョロ現代

-第1話- 「鼠」



時代は20XX年
長安の街は政府の暴政によって
高額な税をかけられていた。


人々は別の街へと移住してしまい
華の都と言われた長安も
今や閑散としていた。


人々で賑わっていた頃に比べると
ゴーストタウンと言える様相であった。
官僚は巻き上げた税金を湯水の如く使い
贅沢三昧をしていたのである。


しかし、ゴーストタウンと言えども
今も長安の街で、以前と変わらずに
ひっそりと暮らしている人間も
少なからずいた。


街に捨てられているアルミ缶を収集し
それを集めて生計を立てている青年がいた。
人は彼を「小七」と呼ぶ。


小七がまだ幼い頃に
両親は彼を残して別の街へ移住してしまった。
自分たちの生活だけで限界だったのだろう。


しばらく孤児院で生活していた小七は
裕福な老夫婦へ養子として引き取られた。
細身であったが風格のある老夫は
小七を普通の学校ではなく軍事施設に入れた。


幼い小七には理解できなかったが
そこは兵士育成機関であり学校ではなかった。
老夫が軍の高官だったのだ。


軍事施設での訓練は想像を絶するものだった。
格闘術、爆発物の知識、武器の取扱・・・
洗脳に近い教育によって
次第に小七は笑顔を忘れていった。




それから月日は流れ
立派な青年となった小七は長安の街にいた。



識別番号:11029
コードネーム:鼠




アルミ缶を収集しながら生活し
人々が小七と呼んでいる青年の
本当の名前を知るものは
もうこの街にはいない。


冬の寒さと春の暖かさが混じる季節
この長安に冷たい雨が降ってきた。


-第1話- 完


「ニョロ現代」2月19日号掲載
著者:谷野伯爵
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