〜オペラ『椿姫』で哀しくも美しい愛の世界へ〜
2010年7月13日(火) 無事終了
名古屋国際会議場センチュリーホール
主催
学校法人名古屋学院 名古屋高等学校
企画・制作 音楽工房
協力
学校法人・専門学校 名古屋モード学園
指揮・編曲:
中村貴志
管弦楽:
愛知室内オーケストラ
ヴィオレッタ:
内藤里美
アルフレード:島袋羊太
ジェルモン:
伊藤正
アンニーナ:丹羽幸子
医者:澤朋宏
(CBCアナウンサー)
ナビゲーター:澤朋宏
(CBCアナウンサー)、古川枝里子
(CBCアナウンサー)
G.ヴェルディ 歌劇『椿姫』(抜粋・原語上演)
打ち合わせ、編曲、稽古を重ねてきたG.ヴェルディの歌劇『椿姫』の本番の日を迎えました。
本番会場は3,000人が収容できる名古屋国際会議場のセンチュリーホール。名古屋国際会議場は、1989年(平成元年)に名古屋市制100周年を記念して開催された世界デザイン博覧会のテーマ館として利用された白鳥センチュリープラザをベースに整備し、1990年(平成2年)4月28日に国際コンベンション都市名古屋の中核施設として設置されました(1992年(平成4年)第2期整備工事建設に着工し、現在に至る)。1989年(平成元年)といえば、僕は中学2年生。デザイン博には学校の見学で訪れました。ですから、国際会議場は僕にとって懐かしい場所なのです。
入り口前には巨大な像があります。あのミケランジェロが作り上げようとしたスフォルツァ騎士像を手稿やデッサンを元に作り上げたもの。
午前8時会場入り。そこからすべての準備をして、11時開演という大変厳しいスケジュールでした。いくら抜粋で舞台は簡素とはいえ、オペラを準備するには時間が短過ぎる。出演者、スタッフともに大きな負担がかかります。しかし、それを乗り越えなければなりません。
合唱やオーケストラに参加してくれる生徒たちも8時入り。合唱の有志生徒は今回衣装を付けて、メイクもしました。
一方で、スタッフたちはステージの設営を急ぎました。なにせ9時からサウンド・チェック、9時15分からゲネプロ開始でしたから。
もちろんと言いましょうか、ステージの準備はすべて整わないまま、ゲネプロがスタート。いや、すべてが揃っていないから、音楽リハーサルと言うべきか。音楽のリハーサルと並行して、照明などのステージ設営が進められました。音楽のほうも時間の都合上全部を通すことができません。しかも、ナビゲーターのお二人は本番にしかいらっしゃれない。本当に本当に厳しい! しかし、指揮者は焦ってはダメ。最終的には指揮者が音楽のすべてを掌握し、演奏者を良い方向に導いていかなければなりませんから。今回はオーケストラがまとまっていましたし(コンサートマスターの平光真彌さんの素晴らしい仕事のお陰)、キャストも能力ある方たちばかり、生徒たちもしっかりやってくれていたんで、音楽面は「いける!」と思っていました。
11時。いよいよ開演! 澤さん、古川さんの軽快で面白いMCで大変良い流れができました。聴衆の高校生たちの乗せ方が上手い。また、名古屋高校の生徒たちの反応も良い。インタビューも上手く受け答えしていました。生徒合唱と生徒オーケストラの指導に伺った時にも感じたことですが、名古屋高校の生徒たちは反応が良く、良い意味で軽い。決して礼儀がないというのではなく、明るいんですね。すごく良い学校だと思いました。
前半の最後に「オペラ体験コーナー」がありました。生徒一人と先生一人が『椿姫』の「乾杯の歌」の歌に挑戦! 生徒はヴィオレッタ役の内藤さんを目の前にして緊張しています。心臓がバクバクしているんだろうなぁ(笑)。2箇所歌詞が飛んじゃいましたが、なかなかの美声。しかし、本人は不満足な様子(前日のオケ合わせではバッチリだったもんね)。
次は先生の番。実はこの先生、これをやることを前日に告げられたのです。本当に一夜漬け。でも先生、頑張りました! 大きな失敗もなく、なかなか様になってましたよ。先生のパフォーマンスを目の当たりにした生徒がリベンジ。2回目は上手くいきました。
「オペラ体験コーナー」のトリの生徒。声楽を習っていて、W.A.モーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』から有名なフィガロのアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶」を歌いました。オーケストラをバックに、大会場でたくさんの聴衆を前にして、それはそれは立派なものでした。これからもっともっと良くなりますよ。是非これからも声楽を続けてほしいと思います。
『椿姫』の演奏はといいますと、これがすごく良かった! 今回は稽古の量が決して多かったわけではありませんが、能力ある音楽家が揃うと、質の高いパフォーマンスが出来上がるのです。
ヴィオレッタ役の内藤里美さんは容姿端麗、美声、素晴らしい音楽性。ヴィオレッタにピッタリでした。この役を歌うのは今回が初めてでしたが、そうとは感じさせない素晴らしいパフォーマンスでした。至難の第1幕最後のアリアもバッチリでした。
アルフレード役の島袋羊太さんも好演。声が作られていないのが良い。純情青年アルフレードにはもってこいだと思います。
ジェルモン役の伊藤正さんは圧倒的な存在感を示されました。このお仕事を頂いた時にジェルモンは伊藤さんにお願いしようとすぐに思い立ちました。成功でした。ヴェテランとしての経験で舞台をグッと引き締めて下さいましたし、多くのアドヴァイスを頂きました。
アンニーナ役の丹羽幸子さんはキャストの中で唯一の地元勢。わが大学の先輩で、同門です。最後だけの出演で、しかも合わせたのが前日のオケ合わせと当日だけ。しかし、バッチリ暗譜され、関西勢3人に引けを取らない演技を発揮して下さいました。
有志で参加してくれた生徒たちも素晴らしいパフォーマンスを披露してくれました。合唱は最初の練習の時からノリノリで、本当に楽しんで歌っていました。オーケストラのほうは最初「大丈夫か…」と思いましたが(笑)、前日のオケ合わせでは「同じ生徒なの?」と思わせるほど良くなっていました。本番では「前奏曲」と「乾杯の歌」、『フィガロの結婚』のアリアを弾いてくれました。合唱もオーケストラも楽しんで演奏していました。その姿を見て僕はうれしく思いましたし、音楽の素晴らしさを感じました。また、合唱の中に僕の高校の先輩とバリトン歌手の先生も交じって歌って下さいました。久しぶりの再会、そしてご一緒できて、うれしかったです。
管弦楽を担当してくれた愛知室内オーケストラも素晴らしかった。
昨年5月17日の本番で初めてご一緒させて頂きましたが、その時の仕事ぶりが良くて、今回もお願いした次第です。期待通りでした。このオーケストラは前向きで、まとまりがあります。厳しい条件でしたが、それを全く感じさせない演奏で、キャストをサポートしてくれました。
ナビゲーターとして素晴らしいMCで進行して下さった澤朋宏さんは、医者役として『椿姫』の最後に出演して下さいました。澤さんはクラシック音楽の素養があって、しかもヴァイオリンを習われていたと伺い、「澤さんに医者役をやって頂こう」と僕が言ったのが出演のきっかけでした。とんでもないことをお願いしてしまいましたが、挑戦して下さり、最後に堂々とヴィオレッタの死の宣告を歌い上げました。
「名古屋高校芸術観賞会2010」に携わることができて大変幸せです。素晴らしいパフォーマンスを指揮できて大変幸せです。第3幕ではやはりジ〜ンときて、涙が出そうになりました。僕の心の中に残る本番のひとつとなりました。生徒たちにとっても心に残るものとなってくれたらうれしいです。
ヴィオレッタを囲んで記念撮影。左からアンニーナ役の丹羽さん、アルフレード役の島袋さん、ヴィオレッタ役の内藤さん、僕、ナビゲーター&医者役の澤さん。
圧倒的な存在感を示したジェルモン伊藤さんと。発するオーラが違う。今回も、音楽だけでなく、色々とお世話になりました。ありがとうございました。