2020年12月28日(月) 無事終了
ザ・シンフォニーホール
主催
公益社団法人 大阪交響楽団
共催
公益財団法人 堺市文化振興財団
特別協賛
大和ハウス工業株式会社
後援
堺市
特別協力
ザ・シンフォニーホール
関西元気文化圏参加事業
指揮:石川星太郎
管弦楽:
大阪交響楽団
ピアノ:安達萌
ソプラノ:四方典子
アルト:糀谷栄里子
テノール:小餅谷哲男
バリトン:萩原寛明
合唱:はばたけ堺!合唱団、大阪交響楽団感動の第九特別合唱団2020
合唱指揮:
中村貴志
合唱ピアノ:北口裕子
C.サン=サーンス ピアノ協奏曲第5番ヘ長調 作品103「エジプト風」
L.v.ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱付」
アンコール 蛍の光
新型コロナ・ウィルスが大きく影を落とした一年となった2020年。その新規陽性者が増加傾向にある中、大阪交響楽団の特別演奏会「感動の第九」が無事開催され、僕は今年の仕事納めとなりました。
2月末からいくつもの本番が中止か延期になり、全く先行きが見えない状況にあった春先、大阪交響楽団から頂いた3つの合唱指揮の本番、9月の「テアトロ トリニタリオ2020」、10月の「名曲コンサート」、そしてこの「感動の第九」は中止になるだろうと思っていましたが、いずれも開催されました。この状況下での合唱が関わる公演は大きなリスク、不安を伴いますが、クラシック音楽界(合唱界)が一歩を踏み出すきっかけとして敢行された大阪交響楽団に敬意を表します。また、合唱にご参加くださった方々、当日ご来場くださった方々に心から御礼申し上げます。
今年の「感動の第九」の指揮者は石川星太郎さん。東京藝術大学を卒業後、ドイツのデュッセルドルフを拠点に研鑽を積まれた気鋭の指揮者。今回初めてご一緒させていただきましたが、6年前に石川さんが読売日本交響楽団を指揮されたフォーレの『レクイエム』の番組をたまたま観て、記憶に残っていました。
電話で打ち合わせした時から石川さんの『第九』に対するしっかりとした思いとコンセプトに関心し、そして共感し、彼の素晴らしさを感じていました。25日に初めて合唱を指導していただきましたが、ドイツ語の特性を生かした合唱作りが素晴らしかった。翌日はオーケストラと合唱の合わせ。限られた時間、しかも音響も悪条件の中で石川さんらしい『第九』が作られていきました。テンポは早め(というより、ベートーヴェンが記したメトロノーム記号通り。これが彼の一つのコンセプトですが、これは僕も共感するところで、メトロノーム記号は数値に過ぎないかもしれませんが、その数字にベートーヴェンの意図したもの、あるいは音楽の整合性があるように思います)ですが、ニュアンスに富んでいて、歌心もあり、全く窮屈に感じませんでした。
リハーサル、ゲネプロと進化を遂げて、本番はオーケストラも合唱も大いに弾けた熱演で、僕の心身に熱いものが込み上げました。人類は今苦境に立たされていますが、「苦悩から歓喜へ」という『第九』の精神のごとく、「この新型コロナ・ウィルス禍を乗り越えて、再び大いなる喜びを感じられる時が必ず来る」という希望を感じた演奏でした。
大々的な発表はありませんでしたが、来年度は「感動の第九」は開催されません。新型コロナ・ウィルスの現状を考慮してということではありません。日本では『第九』が年末の恒例で、数多の「第九演奏会」が開催されます。その中で、大阪交響楽団としてさらに魅力ある『第九』を届けるためにはどうしたらいいか、見直す時期が来ました。復活するかどうかはわかりません。
僕は「感動の第九」の合唱指揮を14年務めさせていただきました。第一線で活躍している若手からベテランまで14名の指揮者の下で至高の作品である『第九』の合唱指揮をさせていただけたことは、僕のキャリアにおいて非常に大きなものでした。大阪交響楽団の皆様、これまで合唱にご参加くださった皆様に心から御礼申し上げます。
大阪交響楽団はオーディションで選ばれた精鋭による大阪響コーラスを組織し、僕が合唱指揮を担い、2017年以来大きな成果を上げています。来年も合唱のやり甲斐のある曲目で大きな舞台が控えています。事務局は大阪響コーラスをさらに発展させたいと意気込んでおられます。是非今後もご注目ください。
終演後の記念写真。左からバリトンの萩原さん、アルトの糀谷さん、指揮の石川さん、ソプラノの四方さん、テノールの小餅谷さん、僕。声楽のソリストも素晴らしかった。