伝統と創造シリーズW
邦舞公演―日本舞踊―
平成25年度(第68回)文化庁芸術祭参加公演
2013年10月12日(土) 無事終了
滋賀県立文化産業交流会館イベントホール内特設舞台「長栄座」
主催
滋賀県、
公益財団法人滋賀県文化振興事業団
企画制作
公益財団法人滋賀県文化振興事業団
助成
文化庁、
公益財団法人西川文化財団
協賛
公益財団法人平和堂財団
後援
滋賀県教育委員会、
大津市、
彦根市、
長浜市、
米原市、
大津市教育委員会、
彦根市教育委員会、
長浜市教育委員会、
米原市教育委員会、
株式会社しがぎん経済文化センター
協力
公益財団法人滋賀県産業支援プラザ
お問い合わせ
滋賀県立文化産業交流会館0749−52−5111
監修:浦田健次郎、杵屋勝芳寿
照明:重松希代子
音響:大村崇
狂言方・舞台監督:瀬尾健児
構成・演出・プロデューサー:柴田英杞
新作 常盤津「近江八景」
作曲:
人間国宝 常盤津一巴太夫
作詞:近衛信尹、上野孝司
振付:林千永
立方:花柳春風、西川みゆき
浄瑠璃:
人間国宝 常盤津一巴太夫、常盤津巴瑠幸太夫、常盤津若音太夫
三味線:常盤津小欣矢
上調子:常盤津小東矢
常盤津「竹生島」
作曲:二世岸澤式佐
作詞:宝田寿来
振付:藤間蘭黄
立方:藤間蘭黄、藤間豊宏、藤間貴雅
浄瑠璃:
人間国宝 常盤津一巴太夫、常盤津巴瑠幸太夫、常盤津若音太夫
三味線:常盤津小欣矢
上調子:常盤津小東矢
現代邦楽 箏と女声合唱と語りによる「伊勢物語抄」
作曲:藤井凡大
振付:林千永
立方:林千永、花柳禄春奈、若柳美香康、千泉
指揮:
中村貴志
箏演奏:野村祐子
箏・語り・合唱:
滋賀県邦楽・邦舞専門集団「しゅはり」
滋賀県邦楽・邦舞専門実演家養成所[邦楽部門]研究生
「長栄座」合唱団
合唱指導:林育子
司会:葛西聖司
邦楽の伝統を魅力を後世に語り継ぎ、新たな魅力を追求するべく、滋賀県は総力を挙げて色々取り組んでいます。この公演はその最も重要なもの。米原駅前から本番会場である
滋賀県立文化産業交流会館に至る道にはのぼり旗が立てられ、力の入れ具合がわかります。
この公演のために、滋賀県立文化産業交流会館のイベントホールに邦楽専用の小屋、長栄座を設営します。
入口にはメモリアルコーナーが設けられ、今までの関連する品々が展示されていました。
長栄座の正面。
正面には歌舞伎座などでよく目にする出演者の名前が書かれた札が掲げられていました。招き看板で、僕の名前のものも掲げられていました。「村」の字が独特ですね。
正面の両脇にある入口から客席に入ります。
中に入ると、前に升席があったり、花道もあったりして、まさに芝居小屋という様相です。
本格的な邦楽公演に関わるのが初めての僕には何もかもが新鮮。滋賀県が邦楽にどれだけ力を入れているか、またこの公演にどれだけ賭けているかがよくわかります。文化庁芸術祭参加公演に認定されたこのような大事業に関わらせて頂けたことを大変光栄に思っています。
僕が指揮をさせて頂いたのは藤井凡大さんの箏と女声合唱と語りによる『伊勢物語抄』という作品。日本的な音楽でありながら、西洋音楽の五線で書かれていて、僕にもその音が容易にわかり、日本人であるがゆえに僕の心身にすっと染み入りました。
今回は日本舞踊が加わり、この作品の世界を舞いで表現しようという試み。実演の舞いと実演の音楽で上演されるのは今回が初めてとのこと。非常に緊張しましたが、一方で創造的なこの試みに興奮し、結果的に上手く合わせることができました。立方(踊り手)の舞いが素晴らしく、いわゆる静と動のメリハリが利いていて、指揮しながら引き込まれました。振付をされた林千永先生の、観る者にできるだけわかりやすい舞いという配慮もあって、表現されていることがよく伝わってきましたし、それでいて日舞の艶やかさ、優美さが出ていました。今回の試みは大成功と言えるのではないでしょうか。
僕が大学生時代と大学を卒業した直後に共演させて頂きました野村祐子さんを中心に、滋賀県邦楽・邦舞専門集団「しゅはり」と滋賀県邦楽・邦舞専門実演家養成所[邦楽部門]研究生で結成された箏の合奏団は時には繊細に、時には力強く演奏し、箏の魅力を存分に発揮されました。
一般公募で結成された「長栄座」合唱団は各々の力を結集し、見事に『伊勢物語抄』を盛り上げて下さいました。稽古中は全然だめで喝を入れましたが、本番では「別の合唱団か」と思うほどでしたよ(笑)。
語りを担当されたのは「しゅはり」の花形、金乃梨子さん。音楽作品における語りは非常に難しい。声色だけでなく、タイミングにも気を使わなくてはいけません。金さんの語りは稽古の度毎にめきめきと上達し、本番では堂々たる語り口を披露し、声で立派に演技をし、絶妙な間で音楽をつないで下さいました。
スタッフの能力が高くなければ、これだけ大きな規模の公演を作り上げ、運営し、成功裏に導くことはできないでしょう。滋賀県立文化産業交流会館のスタッフの方々は、出演者が集中し、気持ち良く舞台を務めることができるよう、献身的に支えて下さいました。舞台の構成やプロデュースだけでなく、裏方にまで気を配られたプロデューサーの柴田英杞さんの手腕によるところも大きいでしょう。
一丸となって作り上げた舞台、真の共同作業、日本の伝統を継承しつつ、未来に向けて新たに創造してゆくという素晴らしい機会に立ち会えましたことを心から幸せに思います。僕の音楽人生の中で非常に重要な本番になりました。決して忘れることはありません。
今回僕をご推薦下さいました
セントラル愛知交響楽団と野村祐子さん、素晴らしい舞台を作り上げて下さいました関係者の皆様に心から御礼申し上げます。
邦楽を支援している滋賀県の姿勢に敬意を表しますとともに、ますますのご発展を心からお祈り申し上げます。
終演後の一枚。野村祐子さん、語りの金乃梨子さん、箏の合奏の皆さんと。
「長栄座」錦秋公演開催中は地元高校生たちによって抹茶が振る舞われました。地域と一体となって日本文化を盛り立てるという意識が感じられます。