2012年もあと3日で終わり、新たな年を迎えます。皆さんにとって今年はどんな年でしたか?
僕はここ数年、このブログに近々転機を迎えるだろうと度々書いてきましたが、まさに今大きく変化していく過程のさなかにいます。今年は公私ともに色々ありました。人生には波がありますが、今年は昨年の頂点から下降をたどり、また上昇に転じようとしている状態です。これは音楽家、中村貴志なかむらたかしのブログですので、公である仕事の面だけ今年を振り返ってみます。
昨年までと今年とで僕の活動に大きな変化があったのをお気付きの方はいらっしゃるでしょうか? しっかりと宣言しませんでしたが、今年から歌手活動を止めました。それには2つの理由があります。
ひとつは作曲と編曲を本格的にするようになって、また、指揮や合唱指揮の仕事が増えたことによって、歌の練習をする時間が格段に減ったこと。練習ができないということは向上どころか現状維持さえできません。そんな状態でお客様の前で歌うほど失礼なことはありません。
もうひとつは歌うことへの情熱がなくなったこと。あれほど好きだったシューベルトの歌曲を歌いたいと思わなくなったことがいちばん大きな要因と言えるかもしれません。それよりも、指揮、合唱指揮、作編曲活動に力を注ぎたい、その腕を磨きたいという思いのほうが強くなったのです。
そういったことから、歌うことから身を引きました。
今年は大きな壁にぶち当たった年でもありました。
演奏家としては「日本人に西洋音楽ができるのか?」という壁。もしかしたら、西洋音楽を追求する者にとって一度はぶち当たる壁かもしれません。特に合唱をやっていると、言葉の壁が非常に大きい。本物を追求するということはどういうことか、考えさせられました。音楽の感動とは一体何なのか? その答えはまだ完全に見つけられていませんが、その方向性は見出せたように思います。来年以降も答えを追い求めていきます。
作曲家としては僕はまだ処女作ミュージカル『本能寺が燃える』だけと言えるでしょう。それでも、
ラジオ版、
名古屋での舞台版初演に続いて、
大阪公演と
瑞浪公演のために大幅な改訂作曲という大きな仕事がありました。しかし、その過程でスランプに陥りました。アイデアが浮かばない。1小節も書けない。相当苦しみました。ただ、その後復活しましたが。特に
瑞浪公演は会心の出来と自負しています。
今年は仕事が詰まっている時とそうでない時の差が大きかった。詰まっている時は非常に追い込まれました。体はひとつしかありません。無理をすることで人は成長できることは確か。しかし、不要な無理をするのは良くない。また、僕はあれもこれもできるほど器用ではありません。自分が何をやっていきたいのか、何をしなければならないのかをじっくり考えました。来年以降の予定も考えると、やはり仕事を整理しなければなりません。奈良県大和高田市の「ときめきの第九」の合唱指揮を辞めたのは苦渋の決断でした。また、このブログでは初めて報告となりますが、
混声合唱団Vox MEAのトレーナーの任を解いてもらいました。2月の
「第5回演奏会」以降、僕がこの団での役割を見いだせず、中途半端な関係が続いていましたが、スケジュールの面から来年以降お互いが満足できる結果を出せる活動ができないと判断し、このような結論に至りました。しかし、
「ときめきの第九」の記事にも記しましたが、これは両者にとって新たな出発。歩む道は違っても、素晴らしい音楽を追求するという志は互いに持っています。それぞれの道を究めていきましょう。
今年ほど多くの「第九コンサート」に関わり、1年中『第九』に関わることができた年はありませんでした。『第九』によって音楽の道に誘われた僕にとって非常に幸せなことでした。また、いつか全楽章を指揮するであろう僕にとって大変勉強になりました。
『第九』の深層にさらに踏み込むことができたと思っています。昨年とは思うこと、感じることが全然違います。しかし、これだけやってもまだまだやり切ったという境地に至れない。ベートーヴェンはすごい! 来年は時間を見つけて、スコアの研究をじっくりしようと思っています。
今年は本当に色々なことがありました。良いことも、悪いことも。しかし、どれもが得難い貴重な経験。それがあったからこそ、次がある。ありがたいことに、僕は次が準備されています。来年は本番こそ少ないけれど、新たな挑戦がいっぱいあります。それらをものにして、よりいっそう素晴らしい音楽を繰り広げていきます。
皆さん、良いお年を!