つい先日、夏が終わったばかりなのに、初雪を観測した所があるとか。早過ぎやしないか?
そんな今日この頃、6月の終わりから稽古が始まった
関西二期会公演『フィガロの結婚』のゲネプロが、5日と6日の2日間に渡って行われました。会場は
尼崎市総合文化センターアルカイックホール。
昨年11月の関西二期会公演『ドン・ジョヴァンニ』で本格的なオペラ公演に復帰してから1年。その間関西二期会のオペラ公演には音楽スタッフとしてすべて関わらせて頂きました。今回は副指揮者として関わらせて頂きました。とは言っても、依頼を頂いた時にかなりスケジュールが埋まっていたので、マエストロ広上淳一さんの音楽稽古に1コマ、音楽稽古に1コマ、立ち稽古に6コマしか立ち会えませんでしたが。
ゲネプロにはダメ書きとして参加しました。ダメ書きとはマエストロがゲネプロの最中に感じた問題点を書き取ること。ゲネプロ中、僕はマエストロのすぐ後ろにいて、マエストロが発する言葉に耳をそばだてます。ですから、舞台への目線も聞こえる音も僕はマエストロとほとんど同じものを体感しました。そして、マエストロ広上さんの指揮ぶりをつぶさに観察することができました。広上さんは歌手やオーケストラをよく誉めます。演奏中でも身振りや手振り、時には声まで発します。広上さんはキャストから、そしてオーケストラから素晴らしい音楽を引き出します。オーケストラは
京都市交響楽団ですが、久しぶりに聴いた京響はすごく良くなってました。
それゆえ、というわけではないでしょうが、広上さんはほとんどダメを出されませんでした。それでも、ダメな箇所はありまして、そこは僕が自主的に書かせて頂きました(笑)。
ゲネプロが稽古として1ヶ月ぶりの参加となりましたが、キャストの進歩が著しかった。特に主役級の方々はすごい。モーツァルトを歌うのは難しい。音楽だけでなく、膨大なテキストを覚えて、演技もしなければなりませんから。感服します。
中村敬一さんの演出も相変わらず素晴らしい。『フィガロの結婚』の真の魅力を引き出しています。また、舞台も美しい。簡素だけれども、美しい。世相を反映して、オペラの予算も厳しく、舞台にお金をかけられないというのが現状。しかし、そこから観客を引きつける舞台を作るのがプロというもの。中村敬一さんは真のプロです。
今日の学校公演を経て、本公演は8日(土)と9日(日)と続き、
京都会館に場所を移して京都公演で千秋楽を迎えます。お時間がございます方、是非お越し下さい。『フィガロの結婚』らしい『フィガロの結婚』が観られるチャンスです。
ゲネプロ終了後、マエストロが飲みに連れて行って下さいました。初日は演出の中村敬一さんとともに。お二人は本当に熱い。お二人が力説されたのは正攻法の大切さとその難しさ。音楽でも舞台でもその作品の本当の魅力を引き出すには、楽譜あるいはリブレットを丹念に読み込み、それを表出すること。そして、真実を与えること。中村敬一さんの稽古を思い出します。キャスト一人一人に演技のリアリティを強く求められました。なぜその演技をするのか? 言葉とその演技が合っているのか? リブレットを読み込み、人間の心理を深く追求するからこそ、感動する舞台を作ることができるのです。
マエストロ広上淳一さんからは指揮者の心得を教わりました。すべての演奏者の能力を引き出す。しかし、中には出来の悪い者もいます。その者を引き上げ、調和をはかり、演奏者が音楽をしやすい環境を作り上げるかが指揮者の重要な仕事。今回のプロダクションにはほんの少ししか関わることができませんでしたが、広上さんの指揮者としての仕事ぶりを拝見し、大きな影響を受けました。2日目はクラシック音楽業界話でも大いに盛り上がりましたが(笑)。
素晴らしい芸術家と現場をともにする、芸術を作る時間を共有する。これほど素晴らしいことはありません。これを糧にして、僕も大きな音楽家になりたい。