5月29日に定期演奏会を終えたアンサンブル コスモリバティ。その思い出は僕の心の中に今でもはっきり残っていますし、日に日にその感動が増しています。
そんな中、次の定演に向けて練習が始まりました。曲目はJ.S.バッハの『ブランデンブルク協奏曲第3番』、G.ホルストの『セイント・ポール組曲』、芥川也寸志の『弦楽のための三楽章(トリプティーク)』、G.B.ペルゴレージの『スターバト・マーテル』。今回はすべて弦楽器のみの編成です。基礎であるバロックをおさえつつ、そこから発展した比較的新しい時代の音楽、われわれの音楽である邦人作品に取り組むというのが選曲のコンセプト。また、僕が声楽の勉強をしたことから声楽作品にも取り組み、呼吸で音楽を作るということ、歌うということを学んでいきたい。
第22回定期演奏会に向けていちばん最初に練習したのは『トリプティーク』。今回取り上げる作品の中でいちばん思い入れが強いかもしれません。僕はオーケストラ(プロ、アマチュア問わず)に対してひとつの大きな不満を持っています。それは邦人の作品(あるいは現代の作品)をあまり取り上げないことです。現代に生きる日本人として邦人作品を積極的に取り上げるべきですし、それが上手くできるのは日本に生まれ、生きているわれわれなのです。今回芥川作品を指揮することができるのを非常にうれしく思いますし、大きな使命だと思っています。
今日は『トリプティーク』の第1楽章の半分ほどをゆっくりと細かく練習しました。一見複雑なように思われますが、旋律があり、和声があり、形式があるので、整理して練習していけば、確固たる音楽が出来上がります。今日練習してみて、予想以上に面白かった! それに、予想以上にてこずらなさそう(笑)。いかに野趣あふれる音を引き出せるかが鍵。
続いてはバッハの『ブランデンブルク協奏曲』を練習。僕の大好きなドイツが生んだ作品で、これも前世がドイツ人だった僕にとって身近です(笑)。バッハというとカンタータや受難曲などのプロテスタント教会音楽とオルガン曲が中心に据えられますが、『ブランデンブルク協奏曲』などの管弦楽曲も素晴らしい。こちらのほうが遊び心があって面白い。
こちらでは美しい音で、しかも躍動感あふれる音楽を作っていきたい。また、今回はバロック音楽の語法をより深く追求していきたい。まずは拍をしっかり確立すること。第1楽章は4分の4拍子ではなく、2分の2拍子です(つまり、1小節に強拍はひとつしかないということ)。
芥川の『トリプティーク』とバッハの『ブランデンブルク協奏曲』は正反対に位置すると言ってもいいでしょう。同じフォルテ(強い音)でも求められる音質が違います。バッハでやってはいけないことを芥川ではやっていいし、逆もしかり。こういう作品をひとつのプログラムに並べて演奏するのは難しい。今回は、アンサンブルすることとともに、音をコントロールすることも大きな課題かもしれません。
しかし、これは現代の日本に生きるわれわれにしかできないこと。時代を越えて、国を越えて、色々な音楽を楽しむことができます。それぞれの作品を味わい、それぞれの作品の素晴らしさが聴く者に伝わる演奏を目指します。
次回の定期演奏会は来年6月10日。まだ1年先ですが、今からもう楽しみです!