今日は結構ハードな一日。
朝の10時30分から12時30分まで、"
名古屋大学グリーンハーモニー"の全体のヴォイス・トレーニング。発声は、以前と比べると、かなり良くなりました。発声テクニックの実践編としてF.メンデルスゾーンの作品59の合唱曲集から『早春"Frühzeitiger Frühling"』(ドイツ語)を取り上げました。典型的な3部形式で、提示部と再現部が8分の3拍子の、春の明るい風景と感動を歌った作品。次回の"グリーンハーモニー"の定期演奏会で取り上げる予定なのですが、彼らの演奏を聴いてみると…つまらない…。典型的な日本人のダメな3拍子の歌い方。また、メンデルスゾーンの作品は演奏する側が、かなり神経を遣って、丁寧に細かく音楽を作らないと、全くつまらないものになってしまいます。事前にこの曲の演奏が上手くいかないと言っていた"グリーンハーモニー"ですが、ドイツ語の意味もわかっていないし、ドイツの春、またドイツ人にとっての春がどんなものなのか知らないから、上手くいくはずありません。ドイツの冬は、日照時間が短く、どんよりとし、雪が降り、草木は枯れている。まさにF.シューベルトの歌曲集『冬の旅』の世界。灰色の世界。しかし、春になると、途端に世界が変わります。日照時間が長くなり、暖かくなり、空は晴れて澄み渡り、色とりどりの花々が咲き誇り、草木が生い茂る。それは激変と言ってもいいでしょう。ドイツ人に限らず、ヨーロッパの人々は、早春の頃になると、ワクワク、ソワソワしてくるものです。そんな感動をこの曲に込めないと!まずはテンポ感を大幅修正。指揮者は8分の3拍子を1小節3つで振っていたけど、それだと、ノッペリしてしまいます。この曲の8分の3拍子は典型的な輪舞のリズム。踊れるまでテンポを上げ、1小節1つ振りにしました。そして、言葉の発音を明瞭に、また語感をしっかり出すようにしました。そして、強弱の幅を大きく。そうしたら、どうでしょう!ビックリするくらい変わりました。音楽する面白さって、楽譜の裏側を追求していくこと。それが音楽的な想像であり、創造です。もっともっと追求してほしいな。
"グリーンハーモニー"のヴォイトレ後は一路岩倉市へ。14時15分からいよいよ明後日本番を迎える
メニコンスーパーコンサート2008「魔笛」のオケ合わせに駆けつけました。オーケストラは
先月お世話になったばかりの
中部フィルハーモニー交響楽団。またご一緒できて、うれしいです。オーケストラの練習が押しているということで、しばらく待機。関西の歌手を多く起用したのです
(残念ながら、名古屋の歌手だけでこれだけのレベルの歌手を揃えるのは無理でしょう)が、待ち時間はまさに漫談ショー。特にパパゲーノ役の晴雅彦さんの独壇場。今朝大阪で本番があって、愛知県の岩倉市まで駆けつけて下さって、これからおそらく一番多く歌うであろうパパゲーノのオケ合わせをするとは思えない(笑)。お土産まで頂いてしまい、周りの人たちを喜ばせよう、楽しませようというサービス精神旺盛な方なのです。
オケ合わせのほうは、実力派の歌手を揃えただけあって、かなり良い感じです。
タミーノ役の竹田昌弘さんは貴重なワーグナー歌い、ヘルデンテノーア(Heldentenor)のおひとりですが、声は重くもなく、明るいので、モーツァルトにもピッタリ。
白石優子さん、渡邊早貴子さん、伊藤絵美さんによる3人の侍女は息がピッタリあって、素晴らしい出来をみせました。
晴さんは有数のパパゲーノ歌い。パパゲーノは勢いだけで歌おうと思ったら歌えますが、晴さんはひとつひとつ丁寧に音楽を作られます。ドイツ語の発音も美しい。観客を楽しませてくれること間違いなし。
夜の女王役の高嶋優羽さんも素晴らしい。若くて、体もそんなに大きいほうではないのに、女王としての風格と存在感を醸し出しています。夜の女王は超高音が出せて、コロラトゥーラ(装飾的な細かい音の動き)ができればOKみたいなところがあって、ドイツ語の発音が全くなっていない人が多いのですが、高嶋さんの発音はすごくきれい。
パミーナ役の
山中敦子さんは今回数少ない東海地方の出演者。関西パワーに押されるかと思っていましたが、そんなことは全くありませんでした。持ち前の明るさを発揮。音楽においては哀愁漂う、揺れ動くパミーナの心をしっかりと表現しました。
松下雅人さんは貴重なバス・バリトンであられます。そして、舞台映えする体格をお持ちです。ザラストロを当たり役とされています。さすがです。
パパゲーナ役の
福永修子さんは関西を代表するソプラノのおひとり。そんな方がパパゲーナをやって下さるなんて、なんて贅沢なんでしょう!さすがプリマ・ドンナ、素晴らしい音楽性。かわいく、美しいパパゲーナ。パパゲーノよ、こんなにかわいいお嫁さんをもらえて、良かったね!
さて、わが
SCN(混声合唱団スコラ カントールム ナゴヤ)はと言いますと…男声合唱は撃沈…全体での合唱は、まぁ、練習で作り上げてきたものが出せているかな。男声合唱はゲネプロでリベンジ。あとは本番会場の愛知県芸術劇場大ホールでどこまで強弱の差が表現できるか、調整が必要でしょう。
ただ、オーケストラが舞台の上手少し奥にあるので、指揮者が見づらいのが難点。舞台設営上オーケストラを動かせないとしても、何らかの改善策を講じないといけませんね。舞台に出ていない時は僕がペンライトでフォローするか。
今日はこれで終わりではありません。オケ合わせの後、キャストは名古屋駅すぐの
名古屋モード学園に移動して、『魔笛』の衣装合わせにメイク・ヘアメイクの打ち合わせ。今年の3月に完成したばかりの新校舎、スパイラルタワーの30階で行われました。名古屋駅で一際目に付くらせん状の建物です。実はタミーノ役の竹田さんは某大手ゼネコンの設計士さんでして、このビルの建築に携わられました。らせん状にビルを建てるのに苦労したそうです。
メイクとヘアメイクは名古屋モード学園の学生が担当します。皆若い。それに生き生きしています。「これをやりたい!」という強い思いがあるからかな。大きな舞台のメイクやヘアメイクをするなんて滅多にあることじゃないから、貴重な経験となるでしょう。すごいメイクです。どんなかは本番をお楽しみに!
名古屋モード学園内。滅多に入れる所ではないので、記念に撮影。
スパイラルタワー31階からの眺め。夜景がきれい。
