8月10日の「
ドイツ演奏記念ホームコンサート」で熱い演奏を繰り広げた
"混声合唱団スコラカントールムナゴヤ"(略称SCN)。今日はその後初めての練習でした。今日から次へ向けてスタートです。SCNの次の大きな目標は、何と言っても、来年秋に開催予定の「第6回定期演奏会」です。1作品だけはすでに練習済みですが、ほとんどの作品が今日から練習開始。
お陰様でSCNは昨年創立10周年を迎え、
その記念コンサートを開催することができました。今年から次の10年間に入ったのですが、11年から20年までは、人間で言えば、子供が大きく成長し、思春期を迎え、そして成人を迎えます。非常に大事な時期と言えるでしょう。つまりSCNも大事な時期に入るということです。「第6回定期演奏会」は次の10年間の最初の定期演奏会になります。前の10年で培ってきた「SCNらしさ」も出しつつ、聴く者にこれから成長するであろうと思わせるものも出していきたいと思っています。基礎を大切にしつつ、挑戦していきたいと思っています。その曲目について述べましょう。
SCNはオーソドックスな作品を正確に美しく歌うことを目指し、
ヨーロッパの作品と
日本の作品を二本柱にして、活動してきました。これは崩しません。
SCNが今までに取り上げてきたヨーロッパの作品を振り返ってみますと、ドイツ語圏の作曲家の作品が多いことに気が付きます。ヨーロッパの中でもドイツ語圏の国では合唱が重要な位置を占めており、素晴らしい作品がたくさんあり、ヨーロッパの合唱の基礎と言えるでしょう。SCNはその基礎を大事にしてきました。これからは、もちろんドイツ語圏の作品も取り上げますが、違う国の合唱曲も取り上げたいと思っています。今回はイギリス。イギリスは、ドイツ語圏と並んで、合唱が盛んな国です。
イギリスは何と言っても「民謡の宝庫」。(イングランド、アイルランド、スコットランドをひっくるめて)イギリス民謡はいまだに全世界で歌われています。日本でもしかり。SCNの重要なレパートリー『ふるさとの四季』の編曲者、源田俊一郎氏の編曲作品に『ホームソングメドレー《イギリス編》』があります。構成曲は『アニーローリー』『グリーンスリーブズ』『ロンドンデリーの歌』。誰もが口ずさめる曲ではないでしょうか。そして、民謡はその国の原点。イギリスの作品を取り上げるのに適切な作品でしょう。
イギリスはルネサンス時代、音楽が非常に発展し、西洋音楽史にもその足跡を残しました。その中の代表的な作曲家はW.バードです。彼のア・カペラ作品『Ave verum corpus』と『Cibavit eos』を取り上げます。ルネサンスは合唱の原点でしょう。しかし、SCNはルネサンスの作品を取り上げたのは今までで1回だけ。やはり今後のSCNのためにはルネサンスを避けて通ってはいけないでしょう。線と線が綾なすルネサンス特有の音楽を味わえるようになりたい。
来年はバッハと並ぶバロック音楽の大家、G.F.ヘンデルの没後250年記念の年です。今回前半でイギリスをテーマにしたのはヘンデルの没後250年だからというのが最大の理由です。こういう記念の年は滅多に来るものではありません。SCNも便乗してしまおうというわけです。ヘンデルはバッハと同じドイツ出身ですが、バッハと違って、ヘンデルは国際的に活躍しました。そして、生涯の半分以上をイギリスで過ごし、イギリスの市民権を得て、没しました。言うなれば、ヘンデルは「イギリス人」なのです。彼はイギリス音楽に大きく貢献しました。彼の最大の功績は宗教曲の形式であったオラトリオを劇場に引っ張り出し、オペラさながらに劇的要素を盛り込んで、「劇的オラトリオ」を完成させたことでしょう。その中から特に最も有名な2曲、『メサイア』の『ハレルヤ』と『マカベアのユダ』の『見よ、勇者は帰る』を取り上げます。また、彼が頂点を築いたイギリス国教会音楽の分野、アンセムから、『鹿が谷川を慕いあえぐがごとく』を取り上げます。
民謡に始まり、ルネサンスを経て、バロックの大家ヘンデルへとつながってくる。「ヘンデル・イヤー」を彩るのにふさわしい選曲であると自負しています。
SCN二本柱のもうひとつ、日本の作品においても「SCNらしさ」と新たな挑戦を打ち出しました。
僕は日本の合唱界にひとつの不満を持っています。それは、新しい日本の作品しかやらないこと、また山田耕筰や瀧廉太郎など先人の作品であっても名歌曲を編曲したものばかりで、彼らのオリジナルの作品をやらないことです。それこそヨーロッパでは何百年と続く音楽の歴史が脈々とあって、それら全ての時代の作品が抜け落ちることことなく取り上げられています。日本の作品においてもそうであるべきではないか、僕はそう強く思います。SCNは唱歌の編曲作品、童謡の編曲作品、あるいは山田耕筰の名歌曲の編曲作品を数多く取り上げてきました。今後は編曲作品だけでなく、明治から大正、第二次世界大戦終戦前までに作曲されたオリジナルの合唱作品も積極的に取り上げていきます。題してシリーズ「日本の合唱の源」(仮)。その第1弾は日本で最初の本格的な作曲家であり、若くしてこの世を去った瀧廉太郎の組歌『四季』。第1曲目の『花』はよく知られていますが、これが組歌であって、その他はほとんど知られていないのが実情です。この作品には「自分が日本の音楽界を変えるのだ」という瀧の非常に強い意志が表れていますし、斬新で、現在もその新鮮さは失われていません。SCNはこういう作品を紹介していく使命を担っていきたいと思っています。
この演奏会の最後は高田三郎作曲の組曲『心の四季』。偶然にも日本の歌のステージは四季で統一されました。高田三郎は愛知県出身で、日本の合唱界に大きく貢献し、素晴らしい作品を多く残しました。『心の四季』は、組曲『水のいのち』と並んで、彼の代表作であり、日本の合唱曲の代表格です。SCNは「第3回定期演奏会」で『水のいのち』を取り上げました。次の10年間の最初の定期演奏会でその双璧である『心の四季』に取り組みます。日本の美しい四季の折々に人の心情を織り込んだ、味わい深い詩の世界。そして、シンプルながら、強い芯のある音楽。高田三郎の世界を繰り広げます。
SCNは歌う仲間を募集中です。ちょうど今日から「第6回定期演奏会」に向けて動き出したばかりです。年齢、性別、国籍、経験などは問いません。問うのはやる気だけです。やりたいと思われた方は
SCNのホームページを参照の上、是非一度練習にお越し下さい。