宗近藤生・所感雑感
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フリージャーナリストとして、「図書新聞」などに執筆。現在、年来の小説に着手中。著書に『リレーエッセイ医学の道』(共著)がある。
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2021/1/30
「『定住外国人活躍政策の提案』」
「図書新聞」書評
松下啓一+神奈川県政策形成実践研究会 著
『定住外国人活躍政策の提案
――地域活性化へのアクションプラン』
(萌書房刊・20.7.10・四六判・168頁・本体1800円)
東京に長年住んでいると、外国人とすれ違ってもなにも異和感がないまま、往来していることに気づくことが多くなった。何十年も前だったら、考えられないことだ。もうひとつ、よく道を聞かれたりしたものだったが、いまは、そういうことは、ほとんどないといっていい。本書では、在留外国人といわれてきたことを、あえて定住外国人としている。
「入管法には「在留」という言葉がありますが、あえて「定住」としたのは、そこに定着し、暮らしを営むという意味があるからです。外国人も同じ地域社会に暮らす一員なのだから、同じまちの仲間として、まちのために、その力を大いに発揮してほしいという素朴な思いから、このテーマを設定しました。」(松下啓一「はじめに」)
「このテーマ」というのは、「2017年度に神奈川県市町村研修センターが実施した政策形成」実践研究会の「定住外国人活躍政策」のことを意味する。そして本書は、研究会の成果を提案書としてまとめたものである。
研究会は、座間市役所、茅ケ崎市役所、平塚市役所、鎌倉市役所、小田原市役所、大井町役場、湯河原町役場に勤務する職員たちによって運営され、松下の提案によって、研修の成果として本書を刊行したことになる。
全体を序章も含めた全十章で構成して、提言していく。まず、序章の「共生と活躍」という項目は本書の中軸となるべきことになる。「共生」を「一人ひとりの個性や多様性が尊重され、自分らしく生きられること」と定義づけていく。もとより、「共生」は、定住外国人だけの問題ではなく、わたしたち、共同体の成員、全員にとっても、重大なことだといっていい。
「定住外国人が、本来持っている力を発揮できるようにするため、定住外国人と地域・市民との連携・支援を行い、保険、医療、福祉、教育、就労その他の制度の枠を見直し、各制度間の連携を図りながら、定住外国人が活躍できるように、推進体制の構築や具体的施策を実施していくのが「定住外国人活躍政策」である。」
現在の在留外国人の国別構成はどうなっているのだろうか。一九八六年は韓国・朝鮮が七八・一七%、次が中国・台湾で九・七三%、米国が三・五四%という順であった。二〇一八年は中国・台湾が一位で三〇・三四%、韓国・朝鮮が一八・三一%、以下、ベトナム、フィリピンが一〇%代で続く。「多国籍化がさらに進むことが予想される。宗教・文化、習慣、価値観などが違う人々が日本で暮らしていくことになるので、定住外国人も日本人も相互に努力しながら、共存の道を探っていくことが求められる」と述べていく。日本人と定住外国人との共生の難しさもあるが、日本人同士、定住外国人同士の共生も幾つもの障壁があるといっていい。いずれにしても違いを異和として見做すのではなく、違いを尊重し合いながら、共同性をかたちづくっていくべきだと思う。
「地方自治法の「住民」には外国人も含まれ」るという。また、「定住外国人が利用できる社会保障制度」もある。そのことは日本人、定住外国人にかかわらず、あまり認知されていないように思われる。そのことをどういうかたちで認識を広げていくかは、今後の課題なのではないかという気がする。
本書の、「自治体に暮らす外国人の意識」という項目の中で「横浜での生活で、困っていることや心配なこと」(二〇一三年度)のアンケート調査結果が掲載されている。一位が「日本語の不自由さ」二四・七%、二位が「仕事さがし」一六・七%、以下「病院に外国語のできる人がいない」、「税金」、「外国語の通じる病院の探し方」、さらに幾つか下に「病院受信時の通訳が見つからない」もある。病院関係の三項目を加算すれば断然の一位となる。わたし自身は、英語も単語を僅かに記憶しているだけの小学生並(あるいはそれ以下か)のレベルだが、行政や病院といったところは、最低限、英会話の普及は必然のような気がしてならない。
「基本的方向性」という項目のなかで、「定住外国人が増加していく中で、今後の自治体運営には、これまでの「共生」施策から一歩進んだ「活躍」施策へのシフトが求められている」と述べていく。
「「定住外国人は地域社会の貴重な地域資源である」ことを踏まえ、定住外国人が地域で活躍するためには、「協働」「主体性」「創造」という3つの要素が重要である。」
これらのことも、定住外国人だけの問題ではなく、やはり地域住民とともに共同で進めていくことでなければならないと思う。
このように本書は意欲的な提言が集約されているといっていいと思う。
(「図書新聞」21.2.6号)
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投稿者: munechika
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