昭和63年、大学に入学すると当時師範をつとめられていた榎義治先生にも師事しました。
当時の先生は皇宮警察所属の現役警察大会チャンピオン。
国士舘大学時代に晩年の牛島辰熊先生の教えを受け、その伝手で母校に師範としていらしていましたが、大学での練習、そして皇宮警察への出稽古では大変苦しい思いをさせていただきました。
さて、そんな先生の試合映像が出てまいりました。
平成元年の全日本柔道選手権東京予選、相手は吉田秀彦選手です。
実は榎先生、前年の同大会では高校生だった吉田選手に判定負けを喫しており、リベンジに向けて大変気合が入っているご様子でした。

開始早々に榎先生が払い腰で大きく吉田選手を崩した後は、ほぼ終始寝技の展開が続いた試合でした。
先生得意の腹固め。

正対した吉田選手の三角を凌ぎます。

今見ても、いや今見てこそ圧巻なのがこの攻防。
普通はただ凌ぐだけの片足絡みから、チャンスを掴み榎先生がリバース!
逆に上から脚を抜きにかかります。
吉田選手も耐え、惜しくも「待て」がかかったのでした。

終盤、吉田選手も絞めで勝負に出ます。
これを榎先生が脇固めに切り返したところで時間となりました。

終始優勢だった榎先生が旗判定で勝利!
常に印象的だった美しい礼法は、まさに真の柔道家たらんという姿勢のあらわれかと感じます。
稲沢先生からは主に技術・哲学を教えていただきましたが、榎先生からは技術はもちろん柔道の心・強い精神を授けていただきました。
これらの教えによって今の自分があるかと思うと、本当に恵まれた学生時代であったと感謝しています。
山下泰裕先生と同年、斉藤仁先生入学時の国士舘大学キャプテンという榎先生、現在は母校の指導からは離れてしまいましたが、会場なのでお会いするとまだまだお若く、ご健勝でいらっしゃいます。
これからも、そして今だからこそ真の柔道家・日本の柔道を支える指導者として大いに活躍していただきたいと願っています。

2