1969年製ギブソンEB-3、今回はサーキット関連とハードウェアの検証です。
複雑なサーキットです
EB-3のサーキットは一言で表すなら「理解に苦しむ」です(苦笑)
個性が全く違う2つのピックアップで拾った音を一体どうしようと思ってこんなサーキットにしたのか、正直良く判りません。
変なサーキットだとしても、結果的に出てきた音が使いやすかったのかと言えばそんな事は全く無くて「どの音が使えると思ったのか開発者を問い詰めたい」と思う位です。
4ポジションのロータリースイッチがサーキットの切り替えをするのですが、結構ややこしいです。
1ポジション=フロントPUのハイカット
2ポジション=リアPU
3ポジション=フロントPUのローカットとリアPUのミックス
4ポジション=フロントPUのローカット
つまりフロントPUの素の音が出ないんですね、このサーキットでは(汗)
何でこんなサーキットにしたのか?
私の推理は「EB-3がフロントの素の音を出せるとEB-0の立場が無くなる」と言う事で、フロントPUのみのEB-0と同じサーキットにはならないようにしたのでは?と。
(実際はEB-0のフロントPUにはハイカットコンデンサが噛まされているので、EB-0も素の音が出ている楽器とは言えない。変な話ですが・・・)
四角い箱はチョークコイルで、そのケースがリアトーンのポットにハンダ付けされています。
64年製と思われる個体のサーキット
拾い物です、わざわざ(?)レアカラーのペルハムブルーの画像を選びました(笑)
「TF-90-1C」とスタンプされたチョークコイルは69年に比べやや大きめなのか、配置の位置関係も違います。
65年頃までの各ツマミが離れたレイアウトになっているのは、このチョークコイルを配置する隙間を確保する為だった訳ですね。
さて、私が入手した個体はネックリセット〜リフィニッシュの際にシリアルナンバーが消えてしまっています。
生産年の特定に役立つリアルナンバーが有りませんが、もう一つ生産年の特定に役立つ物が有るのです。
それは「ポットデイト」です。
ヴォリュームやトーンのポット(可変抵抗器)のケースに刻印された番号で生産年を特定する事が出来るのです。
リアトーンはチョークコイルのケースがハンダ付けされていてポットデイトは読めません、しかし残りの3つははっきり読み取れます。
2つのヴォリュームポットがいずれも1376852、フロントトーンが1346907です。
これが何を表すか?
まず先頭の3ケタがポットのメーカーで、その次の2ケタが生産年の西暦下2桁、その次の2ケタが生産週を表します。
つまり2つのヴォリュームポットは、137(CTS製)68(年)52(週)となり、CTSで1969年の12月最終週に生産された物だと判ります。
フロントトーンは、134(セントラボ製)69(年)07(週)となり、セントラボで1969年の2月に生産された物だと判ります。
無論交換されていたら判らないですが、見た限りではハンダ付けをし直したような形跡は無いのでポットデイトで生産年を確定して良いと思います。
ヒップショット・スーパートーンブリッジ
ギブソンのベース用ブリッジの弱点を解消するリプレイスメントパーツです。
同社の3点止め用ブリッジをオーヴィルのサンダーバードに取り付けて大正解だった事もあり、交換にはまったく迷いは有りませんでした。
各弦の高さ調整と弦間調整、オクターブ調整が可能になり、弦のボールエンド手前の巻き返し部が駒に乗る事もありません。
ただ生産か出荷か、ヒップショット製品の供給は非常に不安定で注文してから手元に来るまで2ヶ月ほど掛かりました。
オリジナル状態
ツマミは全てソンブレロノブです。
このツマミの配置ならツマミ部分の細いソンブレロノブの方が扱いやすいかも知れませんね。
ブリッジはナイロンサドルのコンビネーションブリッジですが、前出の理由で交換しております。
ワンタッチミュートは弦に当たるフェルト部が残っている良い状態でした(これが欠品しているケースが多いのです)
ブリッジカバーは欠品です、まあ有っても付けませんが(笑)
撤去済み
ブリッジユニットとミュート装置を取り外しました、このまま無加工でスーパートーンブリッジに交換出来ます。
測ってみました
スーパートーンブリッジはスタッドボルトを含めて190gです。
ブリッジユニットとミュート装置
237gあります、結構ズッシリ感がありました。
ブリッジユニットのみ
164gです、つまりミュート装置は73gですね。
経験則からすると、ブリッジの質量は軽い方が木材の鳴りが生き、重いほど弦の鳴りが大きくなると言う印象があります。
しかしこの交換だと重さ以上に駒の材質やブリッジとボディとの接触面積(オリジナルはスタッドボルトを介して浮いているが、換えたブリッジユニットは下面全体がボディに接触している)が出音に効いて来るはずだと思います。
もっとも、交換したのがおよそ半年前なので記憶に残っていません(苦笑)
むしろフラットワウンド弦にした事の方が音色の違いに効いている気がします。
次回は当記事の最初に触れたサーキットの謎に迫ってみたいと思います。
つづく